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HappyHunting♡  作者: 六郎
第3章 領都ヴィヴィエント (ヴィヴィエント:カーズ、マイキー)
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③-12-57

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「荷物は?」

「無事に」

「そうか」

「はっ」

「惜しい」

「左様ですな」

「分を弁え、金を持っても驕らず今後の為装備に投資する。昨今の冒険者とは思えんな」

「しかも新たな商品の開発にも」

「そうだ。着眼点が良い。冒険者だけじゃなく他の職業にも影響が有る。しかも冒険者が使いながら街から街へ移動するため宣伝にもなる。見ただけで何の用途か分かる単純さ。そう、その単純さが良い。それだけに模倣もし易いが」

「そこは当家の腕の見せ所ですな」

「うむ。しかしマクロンか」

「ヴィヴィエント高ランク冒険者の一角、マクロングループのリーダーです」

「こういう大きな街では幾つかのグループがしのぎを削っている中でも、最も(たち)の悪いグループだったな」

「えぇ。表の顔は冒険者、裏のそれはマフィアとか」

「全く。何に冒険しているのやら」

「当家にも影響が有りましょうや?」

「連中が我々に手を出すことは無かろう。カーズの口振りだとマイタケの狩り方はバレてはいないみたいだったしな」

「4人は行方不明とか・・・」

「うむ。流石・・・と言うかやはりと言うか。あの護衛程度なら4人など造作もないのだろう」

「若いとはいえ末恐ろしいですな。いや若いからこそ、か」

「ほう。あれほど嫌っていたお前が」

「えぇ、ある時までは。あの者たちはこちらが無礼に接すれば無礼で返し、礼を持って接すれば礼を持って返す。やられたらやり返すという良くも悪くも鏡のような人間ですな」

「なるほどな。鏡か。やられたらやり返す、正に冒険者だな」

「えぇ。ですから去り際の言葉が気になります」

「病気が流行る・・・か」

「病の予兆を感じ取っての逃亡とも・・・もしくは彼らが起こすのか」

「う~む、ただ、今まで通りで大丈夫とも言っていたし」

「鵜呑みにするのもどうかと」

「うむ。しかし彼らの今までの言動を鑑みるに・・・」

「言葉通りだと?」

「そう思えてくる」

「分かりませんな」

「うむ。分からん」




俺は冒険者ギルド本館へ足早に歩いている。

入れば朝一番のラッシュもひと先ずは落ち着いたみたいだ。

ドラゴンも心なしか寂しそうだな。


落ち着いた中の片隅に殺気を放つ集団が屯している。

あいつらがマクロングループか。

なるほど、悪そう。

取り巻きもジャンの言った通りの風体だな。

掲示板を見るフリして少し近づいて様子を見よう。


おうおうバッチバチ睨んできよる。

ふふふ、なんでお前が此処にいるんだって顔だな。

昨日風呂入ってねーんじゃねーの?こっからでも臭うぜ、って昨日だけじゃねーか。

部下が心配だったからって、せめて体拭くぐらいしよーぜ。受付嬢もいるんだし。

その服も。ちゃんと洗いたまえよ、全く。

毛糸洗いに自信が持てそうな名前のくせに。

マクロンと幹部と、あとその取り巻きもグループの一員だな。睨んでるし。

よしよし。おっ、あれは魔物図鑑か。次の街への道中の魔物でも調べておこう。


はぁ~、くそ。

領都では受付嬢とのイベントは無かったな。

少し心残りだ。

この装備なら以前よりも薄いし柔らかいからより・・・

やめろ。邪念を捨てるんだ。

よし、念には念を入れ集中するか。


これくらいでいいだろ。

じゃあこのギルドともお別れだな。

またね!受付のお姉さん!


出口に向かうとグループから席を立つ者がいる。

そのまま本館を出て倉庫区の人気のない方へ歩いていく。

俺を追ってくるのは・・・3人か。

20人程の構成員の内4人は現在行方不明。

リオンヌさんの宿に数名張ってるだろう。その数名は見逃しか、仕方ないな。

残りはギルドに居た奴等で全員だろう。

周りに人がいない角をスッと曲がり《罠》《隠蔽》発動。

ロープは《罠》により一方の端が壁に引っ付いて、もう一方は俺が持っている。

《隠蔽》によりロープは見え辛い。

俺自身にも《隠蔽》の効果あるのかな?一応掛けておくか。

曲がり角の死角に潜み3人を待つ。


「あれっ!?くそ、どこ行った?」

「走って逃げたか!追うぞ!」


走り出した時ロープを張る。


ズダダァ


見事に3人引っ掛かって転んだ。

最後の奴は前の奴にぶつかってこけてたな。

3人に近寄りナイフで脹脛ふくらはぎを順番に刺していく。


「「「ぎゃあっ!」」」

「てっ、てめぇ!何しやがる!」

「ブッ殺すぞ!」

「どういうつもりだ!」

「どういうつもりも何も。仕掛けてきたのはお前らだろ」

「なっ!何を言ってやがる!」

「そっ、そーだ!」

「ブッ殺すぞ!」

「さっき、追うぞって言ってたろ」

「あっ、あれは・・・猫!猫だ!」

「そっ、そうだ。猫探してたんだよ!」

「ブッ殺すぞ!」

「そうか猫か。因みに何匹探してたんだ?」

「あ?あー、2匹だ」

「そう!2匹だ」

「ブッ殺すぞ!」

「次は3匹か、次は何匹だったか」

「次は4匹だろ」

「んで5ひ・・・き」

「ブッころ・・・すぞ」

「6匹・・・なな」

「は・・・ち」

「きゅ・・・う」

「ぶっこ・・・」

「「「ぐぅぅぅ」」」


俺は3人の装備を外し真っ裸にして金目の物を漁り、そのまま横たえておいた。

シケてやがる。

ネムリマイタケの毒は良く効くな。




そのまま宿まで行ったが既にチェックアウトしていた後だった。

乗合馬車だろうか。

時間が来たら乗るように言ったからな。そこで待ってるのかも知れん。

出発までそんなに時間はないだろう。

乗合馬車に急いだ。




「先輩!」

「!?」

「お待ちしてましたよカーズさん」


菊池君は冒険者に囲まれていた。


「いつぞやの隊長さんですか、どうしてここへ?」

「旦那様に言われましてね。護衛の為に来たのですよ」


リオンヌさんの護衛依頼の時に一緒だった隊長さんだった。

他にも2人いる。

一応菊池君はコートにフードを被って顔は見えないようにしていた。


「最後までありがとうと、リオンヌさんにはお伝えください」

「分かりました。どうかご無事で」

「ありがとう。隊長さんも、皆さんも。商会の今後の繁栄を祈っています」

「ありがとう。では」

「では」


馬車が出発すると案内がある。

2人で馬車に乗り込んだ。

客は冒険者は僕達だけみたいだ。

満員・・・とまでいかない。

領都に来れど、出ていくのは少ないのかね。


ラドニウスがいななく。

馬車が最初激しく揺れだすが徐々に治まり一定になっていく。

北西門に近づいていく。

そう言えば領都に入ったのもこの門からだったな。あの日以来か。

男女像が武器を交差している。

門に着いて門衛にカードを見せ街から出た。

朝なのに辺りは驚いたことに街に入ろうとする人がいる。

野宿でもしていたのか。


街道は北に行けばコンテに、北西に行けば当初の目的地の街へ繋がっている。


「もう!隊長さん達と一緒に来なかったから心配だったんですよ!」


街を出て安心したからか菊池君が怒ってきた。


「野暮用でね」

「どんな?」

「やり残した仕事で大したもんじゃないよ」

「ふ~ん」

「王都にも行ってみたかったな」

「そうですね。王都でも良かったんじゃないですか?」

「まぁ、念のために国外への方が良いと思って」

「まぁ、そうですね」

「この分だと雨になるかもな」

「幌が有るから大丈夫ですよ」

「魔術師ギルドのお姉さんにもまた会いたかったな」

「くぉらぁ!」


曇天の下、苦手な馬車に揺られ2人は新たな旅路に何かしら思う。

1人は腹を抑えながら。




P.S.約2週間後。


リオンヌは窓から街を見ていた。シモンが後ろに控える。


「やはり彼らなのでしょうか」

「だろうな」

「マクロン含め14人が病死・・・恐ろしいですな。我々は大丈夫でしょうか」

「あぁ、恐らくな。あいつが去り際に言ってただろ」

「信じるので?」

「他あるまい」

「ですな。病死した者の他に4人が行方不明とか」

「あいつらが去った日から行方不明・・・恐らくマクロンから命令を受けてあいつらを尾けたんだろう。そして消された。尋問して誰の命令か聞きだして報復した。あいつも言ってたしな、領都には永遠に帰って来ない、と」

「しかし病死というのは・・・直接の戦闘力も然る者ながら・・・」

「スキルなんだろうな」

「病気を発生させる?」

「分からん・・・病死ということは・・・毒か!?」

「毒!?」

「14人はあいつらが去って2週間ほどで死んだ。突然死ではなく病気になって徐々に死んだから病死の可能性はあるが勿論毒の可能性もある。冒険者だから余所から病気を貰ってくることもあるだろう、しかし毒は検出されなかった。死因は毒かもと疑わせておいて毒ではないが、実は毒だった」

「なんとも・・・複雑ですな」

「毒だとしたら・・・あの時私はあいつの淹れた茶を飲ん・・・だ?」

「だっ、旦那様!?」

「・・・いや大丈夫だろう。恐らく警告だ」

「警告?」

「あぁ、我々を殺すならあんなことを言って去る必要はなかった」

「た、確かに。口を封じておいたほうがあいつらにとっては安全でしょうから」

「いつでも殺せるという警告なのだろう、あの茶は。それに違うのなら今頃私も死んでるだろうしな」

「・・・」

「いや考えすぎか。ただ単純に礼だったのかもな」

「複雑で私には・・・」

「混乱させるのが目的ならここは単純にあいつが言っていた礼だったと思うのが良いだろう」

「そうでしょうか」

「何にせよ。こちらから手を出さなければ無下にはすまいよ、連中は」


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― 新着の感想 ―
[一言] 先輩の対人能力の高さに感服。 身体能力なくても察知、罠、殺菌のコンボでハメられるし、見切りの回避性能や近距離での雷魔法もなかなか。 小物じゃまず相手にならないなー。
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