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HappyHunting♡  作者: 六郎
第3章 領都ヴィヴィエント (ヴィヴィエント:カーズ、マイキー)
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③-07-52

③-07-52




門衛は呆れていた。

2人でヒィヒィ言いながら担いで帰ってきた。

聞くと2人なら一部の肉と角と胸装甲を持ち帰るだけらしい。

確かに丸ごと持ち帰る必要はなかった。

菊池君の視線が刺さる。


「いやぁ、持ち帰らないとって意識が強すぎちゃって・・・」

「はぁ・・・」


門を潜った先の広場で鹿を降ろし、溜息をついて菊池君は商会へ走った。

商会から荷車を借りに行ってもらって、僕は鹿の番をして待つ。




「なるほど!ディッキーディアの防胸盤か!」


胸装甲は防胸盤と言うらしい。

商会に借りた荷車で運んで職人区のバックパックを頼んでるおっちゃんの工房に鹿を見せた。


「確かに硬くて軽い!良いんじゃないか」

「じゃぁ、これで作ってください」

「あいよっ!」


しかし切り取った防胸盤はバネルにするには面積が足りないし厚すぎるように思えた。


「素材が足りませんかね?」

「ん?いや大丈夫だよ。《皮革》スキル持ってるからな」

「スキル持ってれば大丈夫なんですか?」

「あ?あぁ生産系スキル知らねぇのか。スキル持ってねぇ奴なら無理だけど、持ってるならこの程度なら均して薄くした分面積を広げられるのさ」

「「なっ、なんだってー!?」」

「へへっ、まぁ見てな」


おっちゃんは延し棒で防胸盤を均して広げていく。

パン生地や麺生地みたいだ。


「どうだ?」

「骨・・・ですよね?」

「そうだ、骨だ。スキル持ちの手に掛かるとこんなもんよ!」

「すごい・・・」

「素材にもランクみたいなのが有ってよ。ランクが高い素材だと要求されるスキルLvも高くなる。まぁこのディッキーディアは普通の動物で魔物じゃねーからそんなにスキルLv高くなくても大丈夫なんだわ」


均していってバックパックのパネルに納まる大きさになった。


「骨でも《皮革》スキルなんですね?」

「魔虫の甲殻なんかも《皮革》スキルだしな」

「なるほど外骨格は一種の皮ってところか。では牙や爪なんかも?」

「ま~用途によるな」

「用途?」

「甲殻にしても武器にするなら《鍛冶》で、防具にするなら《皮革》だな」

「どう違うんです?」

「《鍛冶》だと素材をより固める、《皮革》は素材をそのまま活かすって感じかな」

「ふむふむ?」

「勿論《鍛冶》で甲殻で防具を作ることは出来る。硬いのをな。ただ《皮革》だと素材本来の特性を生かせる。極端な例だと硬くて柔らかいっていう一見矛盾する特性があったなら、《鍛冶》はより硬くなるだけで柔らかさは失われ《皮革》は両方の特性を生かせる」

「なるほど」

「先輩?」

(恐らく《鍛冶》は無機的に特化したスキルなんだろう)

(あぁ。《皮革》は有機物に特化したスキルと)

(《鍛冶》は牙や爪の有機的な要素を無機的に変えていくんじゃなかろうか)

(《皮革》の素材をそのまま活かすっていうのも有・無機そのままってことですか)


「なるほど。では生物由来の鎧を買うなら、僕らみたいな力じゃなくすばやさを売りにしてる場合、《鍛冶》スキルでつくった鎧より《皮革》で作った方を買ったら良いんですね」

「そうだな。《鍛冶》で作ったやつは重くなる。簡単に言うと硬いのなら《鍛冶》、軽装備なら《皮革》かな」

「武器が作れる分《鍛冶》が有利ですね」

「それは否めんな。ただ武器は《鍛冶》だけど防具はほぼ金属鎧しか作れねー。《皮革》なら金属鎧は無理だが、ドラゴンの素材なんかで作れば金属鎧にも負けねーぞ」

「ドラゴンメイル!?」

「あぁ!要求スキルLvたけーけどな」

「でも《鍛冶》で作ればより硬くなるんでしょ?」

「あぁ。でもドラゴンの特性は無くなるぜ」

「ドラゴンの特性?」

「例でいうと柔軟性とか衝撃吸収とか。それに有利不利って話はどっちのスキルを習得するかってことだろ?お前さんはどっちか習得するつもりなの?」

「ブッ!いえ・・・」

「お前さんらの装備を見ればどっちのスキルも世の中には必要って分かるだろ」

「全くもってその通りです、はい」


「それに魔法付与もあるし、無い部分はある程度補える」

「魔法付与!?」

「あぁ。べらぼーにたけースキルLvが要るがな」

「ちょっ!じゃぁバックパックに付与できます?」

「バックパックに?何を?」

「重量軽減とかあります?」

「あるにはあるけど・・・バックパックに付与してもバックパックが軽くなるだけで入れた荷物が軽くなる訳じゃねーぞ」

「うあああ!そうかー!」

「あっ!でも水耐性とかあるんじゃないですか?」

「おー、あるけど・・・素材にも高ランクが必要になってくるな」

「高ランク素材?」

「あぁ、魔法付与には魔力適正の高い素材が要るな。金の桁が違ってくるぜ」

「それで高いんですね。因みにこの工房でも魔法付与は出来るんですよね?」

「あぁ。付与魔法一覧見ていくか?」

「えぇ。後日発注してもいいですか?」

「その辺はリオンヌさんと相談してくれ」

「そうですね。分かりました。じゃぁバックパックはお願いします」

「あいよっ!待っててくんな」




ディッキーディアの素材でバックパックの製作は進んだ。

元々、型は出来ていた事もありその後の進捗は速かった。

狩り終わりにちょくちょく工房に寄って細かい修正をしていく。

それを繰り返して1週間ほど、ようやく完成にこぎつけた。

素材のグレードを上げての魔力付与も少し考えたが掛かる費用がまさしく桁が違うものになり、そもそも水に強い素材を使っていたのでそのままとした。


コロリマイタケを狩る日やゴブリンで練習する日以外にも、バックパックを背負って浅い森を散策する日を作り、

その次には背負いながら魔犬で闘ってみる日を作ったり、

勿論バックパックの中身は軽くしておいたがベルトなんかが取れたりするようなこともなく耐久性も問題なさそうだ。


菊池君は50㍑、俺は70㍑を作った。

容量一杯に詰め込んだら重いが、《頑健》さんがいれば持てなくもない。

普段の狩り用と旅行用と2種類作ろうか考えたがバッグを多く持っても仕方ないだろうと1種類しか作らなかった。

大は小を兼ねるということで、ストラップを引っ張って薄く出来るようにしたので普段の狩りの場面でも活躍できるようになっている。

これから《頑健》さんが育ってくれば入れる荷物も増やしていけばいい。


ゴーグルとバックパックが出来て移動や狩りのストレス軽減と効率アップに満足しながら1ヶ月が過ぎた頃、またリオンヌさんに切り出された。


「バックパックの販売権を売って頂けませんか?」

「「えっ?また?」」

「・・・はい。”また”で恐縮なのですが、”また”職人たちが試作品を使ってしまってまして。評判が良くて他街への買い付けへ行く者も使ったところ絶賛しておりまして・・・」

「リオンヌさん。確かに僕達は口外しないという契約は結びませんでしたが、それはその・・・マナーと言うか・・・」

「ごもっともです!全くもって仰ることは御尤もなのですが・・・」

「コロリマイタケの契約で『目立ちたくない』というのは有ったと思うんですがそれは守られてるんでしょうか?」

「勿論です!そこは商会には言明していますので大丈夫です」

「では職人の方が・・・っていうことですか」

「はぁ・・・まぁ・・・そうです」

「なるほど。もう僕達は他に何もオーダーメイドしていないですし・・・」

「まことに申し訳ありません」


(どうする?)

(どうするも、もうある程度出回っちゃってるんでしょ?じゃぁゴーグルと一緒で拒否しても意味なくないですか)

(そうだよね。じゃぁ売るか)

(はい)

(はぁ。変な影響なきゃいいけど)


「リオンヌさんは今回も人助けの為に売るんですか?」

「えっ?そっ、そうです!このバッグは従来のそれより容量が多く、そして何より疲れにくいのが素晴らしい!このバッグであればお年寄りは勿論女性や子供も仕事の生産性が上がり稼ぎが良くなって暮らしも良くなるでしょう!冒険者も素材を多く持ち帰ることが出来、お金を稼げればより良い装備を買えて生存率も上がるでしょう!」


(疲れにくい?)

(リュックは背中に密着させた方が疲れにくいんだ。歩いてる時にブンブンする状態だと遠心力とかで外側に力が加わる。あとフレームで立体的にすることで重心がバッグの底に集中しないから肩紐が引っ張られないから荷重を分散出来る)

(ほー)


「お年寄りや子供のことまで・・・頭が下がります」

「おぉ!では?」

「お幾らで?」

「え?」

「ハウマッチ」

「は、はい。100万エナをご用意させていた」

「職人さんや買い付けの方の評判は良かったのですね?」

「はい!それはもうたいへ」

「そうですかー、職人や買い付けの方には評判が、良かったと」

「あっ!100万の販売権に加えてお詫びも兼ねてプラス20万を提示させて頂きたいと思っています!」

「わ・・・私は今感動しています・・・」

「・・・カーズさん?」

「・・・先輩?」

「僕達はリオンヌさんの崇高なる商売哲学に感動を禁じ得ません」


俺の目は赤くなって今にも涙を流しそうだ。


「分かりました!リオンヌさんに任せればこの街の人達の暮らしは良くなることでしょう!僕達のバッグがその一助となるのは冒険者として、いや人として万感の思いです。売りましょう!リオンヌさんに!この街の為に!」

「おお!」


ガシッ!とリオンヌさんの手を握れば、菊池君はあんぐりとしているのであった。




「いや~参ったな」

「こっちのセリフですよ」

「変な影響なきゃいいけど」

「《隠蔽》!Lvアップしなかったんですか?」

「それがしなかったんだよねー。なんでだろ」

「いやいやいや」

「まーでも経験値は貯まってるんじゃないかね」

「涙はどうしたんです?」

「極小の《雷撃》を内股に食らわせた」

「あっきれた!自分に?」

「くっそ痛かった」

「頭が下がりますって言ってホントに下げて何かブツブツ言ってたから何だろうって思ったらそんなことを・・・」

「タマが近かったからクッソ痛かった」

「その分稼げたんだから良いじゃないですか!」

「タマだけに金が」

「はいー!そこまでー!そっからはセクハラ慰謝料取りますー!」

「僕が稼いだ・・・」

「バックパックは2人で作りましたー」

「変な影響なきゃいいけど」

「さっきも言いましたよ」

「いやタマの方に」

「はいー!慰謝料けってーい!」

「えぇー!」


ハウマッチ。

異世界言語じゃなくて英語じゃないかと突っ込まれる所ですが、

メインストーリーに関係ない、会話遊びの様なものですし、

異世界言語内での別の言い方と脳内変換して気にせず楽しんで頂けたらと思います。

これ以降も出て来る可能性は有りますので同様に流して下さい。

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