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HappyHunting♡  作者: 六郎
第3章 領都ヴィヴィエント (ヴィヴィエント:カーズ、マイキー)
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③-06-51

③-06-51




ゴーグルが出来たというので様子を見に行った。

ポーションの瓶から作ったガラス板に軽いフレームを着けて、皮膚に当たる部分は動物の皮はかぶれる可能性もあり、また密着させる必要もないため上級の下着の布地で作った。

装着感の確認も兼ねて狩りの日は毎日持っていってる。

門から出て装着し森に入ったら外す。森の中まで強風は来ないし索敵する上で邪魔だったからだ。


装着感や耐久度などを伝え改良を重ねていく。

短い時間だと分からないが長時間装着してると痛くなったりしてくる。

表面も細かい傷が付いたりするので、防護用の液体を塗っては乾かし塗っては乾かしで重ねていく。

それから数日で一応の完成をみた。


ここらは滅多に雪は降らないらしいがそれでも冬の強風は目に厳しい。

まぁまぁの金額は掛かったが、出来栄えには満足だ。


ゴーグルを完成させて数日後。

マイタケの納品の折にリオンヌさんに切り出された。


「ゴーグルの販売権を売って頂けませんか?」

「え?」

「実は申し訳ない事なのですが、ゴーグルの試作品を職人たちが勝手に使ってしまってまして。しかしそれが非常に良い具合だと評判でして」

「良い具合?」

「鍛冶職人は熱い窯で目を痛める者もいるのですがゴーグルで軽減されると。薬品を扱う者たちも目に入る危険が無くなるので評判です」

「眼鏡で代用できそうですが・・・」

「やはり覆う面積が少ないので隙間から入ってしまうようです。目を守るということであれば納品館の解体人にも重宝がられましょう。魔物には毒を持った物もいますから、マイタケの様に。解体している時にひょんな拍子に目に入ってしまう危険がありますがそれが無くなるのは心強いと思います」


(どうします?先輩)

(うーん。僕はあんまり前世の物をこの世界に持ち込むのは嫌なんだよなー)

(××の件ですか)

(それもあるし、その技術がこの世界でどういう影響を与えるか分からないだろ)

(・・・大量殺戮兵器みたいな?)

(その技術に応用されるかもって思っちゃうんだよね)

(でももう作っちゃいましたし)

(いやー、これ欲しいと思うとは)

(私達が欲しいと思ったから作ったわけですよ)

(確かに!いやー、あんまり深く考えずに作っちゃったな、参ったな)

(でもここで拒否してもこのゴーグル見た人が真似て売るかもしれないですよ)

(だな。リオンヌさんなら更に洗練されて良い物にしてくれるだろうし)

(パクリ物の粗悪品はリオンヌさんが取り締まってくれるでしょうし)

(人の為になるなら売ってもいいか)

(そうしましょう。今後は気を付けるということで)

(分かった)


「リオンヌさん、あなたは街の人達の目を守るためにゴーグルを買おうと?」

「え?えぇ。鍛冶職人は視力が悪くなるものが多くそうなると転職もままなりません。事故によって仕事を失えば家族も養えなくなります。それを防ぎたい」

「リオンヌさんの理念に感動しました。分かりました、お売りします」

「おぉ!ありがとうございます。では私共としまして勝手に使っていたお詫びも兼ねて25万エナを提示させて頂きます」

「25万エナ!?」

「不足でしょうか?でしたらもう少し」

「いえいえ。そんな額で大丈夫ですか?正直あんまり売れるとは思わないのですが」

「販売先であれば先ほど言った鍛冶職人や薬品関係、解体人、木こりや馬車の御者など考えられます。それに私共の販売力ならこの領は勿論、他の領にも売れる力が御座いますから心配には及びませんよ」

「う~ん。まぁリオンヌさんがそうおっしゃるなら構わないのですけど」

「はい。お気になさらず」

「分かりました。ではその額でお願いします」

「ありがとうございます!」




「いやー。参ったな」

「まー、人の為にもなることだし。良かったんじゃないですか?」

「だと良いんだけど」

「大丈夫ですよ。ほらホイッスルでも吹いて」

「フィーッ!って吹くか!」

「鍛冶職人って目が悪くなるんですかね」

「同じ距離の1点をずっと見つめて瞬きしないからかね?」

「あー」

「あとドライアイとか」

「熱いですもんね」


「あとさ」

「なんです?」

「人がいるところでコソコソ話す時さ」

「はい」

「日本語で話そうよ」

「日本語で?」

「あぁ。この世界の言語でコソコソ話してて、もし読唇術のスキルでもあったらバレちゃうじゃん」

「確かに!」

「日本語ならこの世界の人には分からないし、もし分かる奴が居たらそいつは・・・」

「日本人!つまり転生者!」

「あぁ。あいつら全員の顔なんて覚えちゃいないからな」

「そうですね。でも私達も日本人ってバレちゃいますよ」

「全員で100人程しかいないんだ、出会う確率は低いよ」

「まぁ、それもそうか」




商会を出てその足で職人区へ向かった。

バックパックについて話があるという。


「少し重いが一応形には出来てな。背負ってみてくれ」


背中や肩に張り付く感じはするがまだ隙間が空いている。

その辺細かいが要求を伝えると、


「バッグの立体性を維持するにゃお前さんらの言うフレームとパネルの素材がなかなか見つかんなくてな。丈夫で軽いのが良いとは思うが・・・」


技術的に難しいのではなく、どうやら素材不足だったようだ。

僕達も市場とか見回って色々探したがそれらしきものは見つけられずにいた。

しかしその要求に応えられそうな素材に出会うことが出来たのは数日後の森の中だった。


「あっ、あれは!?」

「あれはディッキーディアです」

「ディッキーディア・・・あれが」


10m先にデカい鹿が僕達を見つめていた。

角を合わせると体高で俺と同じくらいだから180cmは超えてる。

2本の太い幹から枝分かれした角は刺さるような形状を確かにしている。

攻撃的な角に目を奪われがちだが胸にも装甲みたいなのが張り付いてる。


「あの胸のは・・・」

「骨の一部らしいです」

「前方からは心臓を狙えんな」

「因みに魔物じゃないんで魔石は持ってないです」

「なんだと!?」

「ただの動物です」

「いや、魔物も殺せそうな角だけど・・・」

「ゴブリンくらいなら串刺しにするそうですよ」

「でしょうねっ!」

「どうします?」

「魔石が取れないんじゃ、肉と角を売るくらいかな?」

「えぇ。肉よりも角の方が高いです」

「やめよう。僕達は魔物は殺すが野生動物は金の為に殺さない」

「そうですね。魔物がいますし」

「よし、ゆっくりそのまま後ろに下がっていくんだ」

「はい・・・ゆっくり・・・ゆっくり・・・」

「あら・・・」

「なんか首をフンフン揺らして・・・角を誇示してる風に見えますけど」

「ま、まさかやる気なのか?」

「どど、どーします!?」

「仕方ない。ヤツがこっちに来たら殺すぞ」

「わっ、分かりました!」


ディッキーディアは走り出して頭を下げ始めた。


「やる気だぞ!避けろっ」

「はい!」


とっさに左右に分かれて突撃を躱した。


「遠距離で仕留めてくれ!俺が引きつける!」

「了解ですっ!」


僅か数m先にいるディッキーディアだが、たとえその距離でも突撃されたら突き刺さるだろう。


ブルルルッ


頭を下げて角を向け威嚇してくる。


「《風刃》!」


ビシッ

ザシュ


ボルトと風魔法の同時攻撃が鹿の横面の腹を刺し斬り裂いた。


「ブオオオオォォォ!」


痛みにいななくディッキーディア。

その隙に網を用意する。


首をもたげ突進してくるディッキーディアに網を置くように投げ飛び退いて躱す。


「ブオオオォォォ!」


網が角に絡まりイラついているようだ。

これで刺さっても網が邪魔してある程度までしか刺さりきらないだろう。


「よし!あとは落ち着いてダメージを与えていこう!」

「はいっ!」


時間を掛けながら着実にダメージを負わせディッキーディアを仕留めた。


「フウゥ!なんとかやったな」

「はぁはぁ、えぇ。ビックリしたぁ」

「攻撃的な動物だな」

「そうですね。草食なのになんで襲ってきたんだろ?」

「縄張りだったのか発情期だったのか、ただ単に虫の居所が悪かっただけなのか・・・」

「今となっては分かりませんが・・・死体はどうします?」

「菊池君、この胸を見たまえ」

「えぇ、骨の一部らしいですけど」

「バックパックのパネルに使えるんじゃないかな?」

「あぁ!・・・確かに軽いですね!」

「・・・持って帰るか」

「これを・・・ですか」

「2、300kgはありそうだな」

「猪とかじゃないし200kgくらいじゃないですか?」

「網でくるんで棒を通してそれを担ぐ・・・か」

「市場とかに売ってるんじゃないですか?」

「売ってなかったらどうするんだ」

「まー、確かに。でも棒なんかないですよ」

「木の枝を切るか」

「硬いの切りましょ」


江戸時代の駕籠屋みたいに担いでなんとか街まで帰った。


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