①-05
①-05
『残り5分となりました。パーティ登録の説明をします』
『手首にあるパーティリングをお互いかざしながらパーティ作成を念じればパーティとなります』
『パーティは魔物を倒した場合等の経験値の分割獲得を可能にします』
『またステータス画面でパーティメンバーの確認も出来ます』
俺の左手首にいつの間にか着いていたリングが光を放っている。
菊池君が無言で左手を差し出してくるのでリング同士を引っ付けて「パーティ作成」と念じる。
「ステータス画面にパーティメンバーの項目が出て君の名前が出てるよ」
「私も確認しました」
といいつつお互い自分の固有スキルの記憶作業に暇がない。
周りはステータス画面を見ているらしき者や仲間と談笑しているもの、
多面体にまだ食ってかかっているもの、様々だが結構な人だかりが出来てるところがある。
『時間となりました。これから転生を始めます』
『もし友人の近くに転生されたい方はその方に触れておいてください』
『では始めます』
左手に感触がある。
菊池君が握ってきたの―――
世界が真っ白になって意識が飛んだ。
目が覚めると丈の短い草原の中にいた。
微睡みも無く急に覚醒した感じだ。
足元には崩れた煉瓦が有る。
草原の中にある何かの建物の残骸のようだ、遺跡だろうか。
しかし遺跡は大した規模ではない。
遺跡の傍に花が咲いていた。
朽ちた遺跡と対照的な印象を受ける。
思わず摘み取ってしまった。
「先輩!」
「おおぉ、無事だったか菊池君!って夢じゃなかったのか?」
「まぁ、まだ日本にいる可能性も捨てきれませんけど、先輩?」
「なんだ?」
「若いですね」
「おっ20歳に見える?」
「見えますよー、結構いいじゃないですか、って何で花なんて持ってるんです?」
「あ、あぁ、何となくな。そういう菊池君は変わらんな」
「えー酷くないですか?」
「まー元々若く見えてたんだろうって、ステータス」
ステータス画面が出てくる。
「え~やだ~若く見えてって会話終了?」
「現状確認は最優先だぞ、菊池隊員」
「ラジャー!私もステータス画面確認したであります」
「何にしても嘘ではなかったわけだ」
「私達の格好も完全に日本じゃないですしね」
「ん?おぉ、ザ・村人って感じだな」
「お金も有りますね。見たことない貨幣です」
「服と金だけか。不安しかない」
「何かあったら肉壁よろしくです」
「そこは男女平等にいきましょうよ」
「中世観の世界に男女平等はないと思いますよ」
「我々は前世現代日本から来たんだぞ。セクハラじゃないのか」
「郷に入ればっ~てやつですよ」
「世知辛い」
「とりあえず第一村人を発見せねば」
「そうですね。今夜泊まるところを探しましょう」
「まだ朝かなこの感じ。夕方ではないし」
「そうですね」
「だとすれば東はあっちか・・・この世界も太陽は東からだよな?」
「知りませんよ」
「多面体がおっしゃるには街が近くにあるはずだけど」
「まず見渡してもそれらしきものは見えませんね~」
「ここらは草っ原で遠くに林なのか森なのかが見えるね」
「まず水の確保をしたいところだけど近くに街があるのなら目指すべきだと思うけど?」
「私もそう思います」
「じゃー、ここに転生した意味があると考えて、ここを中心として周囲1kmほどを探索しよう。まず北に行って何も無かったらここに戻って東に行く。それを東西南北繰り返す」
「それはいいんですけど1kmってどうやって測るんです?」
「歩幅でいこう。俺の1歩50㎝として2歩で1m。つまり2千歩」
「2千・・・半分にしましょう。駄目なら拡大していくってことで」
「そうしよう。やる気が無いと続かないからな。500mずつ交代で」
「じゃー、北から時計回りに行きますか」
幸い南に行って500m付近で遠くに街道を発見した。
「道っ!道ですよ先輩!文明の香りがっ!」
「おぉ!ってことはこの辺りは安全なのかな?」
「森の中よりかは安全なのでは?」
「それもそうだ。街道に出よう」
「街道は南北・・・北東ー南西に通ってるみたいだ。どっちに向かうか」
「先輩決めてください」
「えっ、俺が?」
「多面体に質疑応答で当てられてたじゃないですか。今日は持ってる気がします」
「確かに!なにも予備知識も無いからな・・・北だ」
「一応聞いても?」
「南は森が深そうだったってだけ」
「街が近くにあるなら開けてるかも知れませんしね。行きましょう!」
また500mほど歩くと壁が見えてきた。
「先輩!もしや城壁ではっ!?」
「何っ!あれが城壁か・・・やはりヨーロッパ風なのか」
「少なくとも日本風ではないですね」
「中国や韓国って線もある」
街道沿いの城壁付近に門らしきものが見える。
「門番ですね。街に入るのに税金が掛かるんでしょうか?」
「恐らく。それで金を持たされたんだろう」
「勿論入りますよね?」
「モチのロンだ。ここまで来て入らないは無いだろう」
「ですね。いざっ!」