表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HappyHunting♡  作者: 六郎
第15章 マンイーター カタルシス (ロッシ、アンナ、ルーナ、カヤ、セラス)
494/706

⑮-39-494

⑮-39-494




「ルーラ!セラス!付いて来い!」

「はい!」

「おう!」


2人を呼んで森の方に向かう。

まだ教国軍兵士が居るのだ。

しかし俺達に攻撃を仕掛けるのではなく、


「たっ、助けてくれー!」


ゴーレムに襲われ悲鳴をあげていた。


「自分達が連れて来た魔物に襲われてるとはな」

「飼い犬に噛まれるとはこの事だな」

「噛まれるどころか食われてるわ」

「自業自得過ぎて笑ってしまうな」

「戦場で笑うのは不謹慎だがその通りだな」

「いい気味ですわ」


うつ伏せの上にゴーレムに覆い被さられた兵士が俺達に気が付いて声を上げる。


「たっ、頼むぅ!助けてくれぇー!」


左目を奪われたのだろう、瞑った眼から血が流れている。


「魔物を作戦に組み込んだんだろう。だったらチャンと使役しろよ」

「言う事は聞かないんだぁ!」

「知るか。なら最後に敵に助けてもらうまでが作戦だったのかよ!」

「助け」

「キャラァップ!」


兵士の髪を掴んで引っ張るゴーレム。

頭皮がブチブチと音がする。


「ぎゃぁああ!」

「あれ以上は死ぬな」

「助けるのか、ゴーレムという禁忌を犯した奴を」

「情報を得る必要が有るからな」

「む、確かに」

「サーヤは連射式クロスボウを」

「はい!」

「ケセラはサーヤの護衛だ。盾を持て」

「心得た」

「準備が出来たらゴーレムを撃て、相手は俺がする。サーヤは周辺の警戒だ」

「はい!撃ちます!」


ヒュン


矢はゴーレムの額を貫通して途中で止まった。

鏃が後頭部から突き出ている。


「ギャラァップ?」


片目しかないが奪った目を寄せて矢を確認するゴーレム。

頭に刺さった矢を触るとようやくこちらに気付いたのか激高した。

此方に標的を変え、走って来る。


「ギャラァップ!」

「マジで、死なないってのは恐怖だな」

「確かに、殺す方法を知っていなければ逃げるしかないだろう」

「口しかないのも恐怖を駆り立てますわね」

「確かになっ!」


俺を襲おうと伸ばした右手を斬り下げて落とし、返す刀で首を斬り落とそうと斬り付けるが、


「ぐっ」


マチェーテが首に食い込んだまま振り抜けなかった、


ギンッ


どころか刃の根元で折れてしまった。

首に山刀を食い込ませたまま俺を襲おうと左手を伸ばすゴーレム。

その左手を折れた山刀のナックルガードで払いながら俺の左手に《EMブレード》を発動してゴーレムのもう片方の腕も斬り落とす。


「ギャラ・・・ッフ」


首に食い込んだままのマチェーテだが気道には達しているのか呼吸し辛そうだ。

呼吸器官が有るのか知らんが。

肘くらいから先が無くなった腕をワタワタさせながらも俺へ向かって来ようとするが、


ズボッ


魔石を抜き取られると程なく崩れ落ちた。


「流石に折れちまったな」

「右翼は何人程居たんだ?」

「50・・・位か」

「50!?大丈夫でしたか!」

「あぁ、奴等の目的は食料を燃やす事だったし手練れは居なかったしな」

「山刀もそれだけ斬れば脆くもなろう」

「また替え刃を作りたいが戦争中は無理だな」

「駐屯地で移動窯を出す訳にはいきませんものね」

「あぁ。まぁ、いざとなったら敵から奪って使うとするか」

「そこでノビてる兵士を連れて行きましょうか」

「あぁ頼むよ。ケセラも手伝ってくれ」

「了解だ」


サーヤとケセラが両脇を抱えて引き摺りながら兵士を連れ帰っている間、俺はその警護をした。

辺りを見ると戦闘は終わりかけている。

ゴーレムは粗方討伐されて地面に不動の身を晒していた。

人型の魔物と言ってもゴブリンやオーク等とは違って肌の色が青白い。

ケセラによれば古代文明時代に造られたらしい。

人が人を創ったと・・・

何をベースに造ったんだ?

人型である以上はつまり、


「死体男!」

「隊長!」

「土魔導士が到着した!消火活動を始めている!」


荷車の方を見ると魔法使い達が砂を掛けて消化している様子が分かる。


「分かった!俺達は周辺警護に回る!パーティメンバーの治癒魔法使いとその警護役は置いて行くから指示を頼む!」

「分かった!恩に着る!おい!お前達!負傷兵を回収しろ!敵の捕虜も集めるんだ!」

「ルーナ!カヤを頼んだ!」

「分かりました!」


さっきの捕虜をぞんざいに投げ捨てて返事をしたサーヤは俺に手を振ってマヌイの方に向かった。

俺も手を振り返しミキにも合図を送って俺の下に来させた。

ケセラもやって来てミキと3人でゴーレムの死体を見下ろす。


「古代文明時代に造られた物が残っているのか?」

「4百年ほど前の人魔大戦を知っているか?」

「名前だけはね」

「魔族と人間が争った世界戦争だ。その時に魔族が古代文明の遺跡からゴーレムを発掘したらしい」

「遺跡ねぇ」

「人魔大戦終結から幾つもの王朝が生まれては消えてきたがゴーレムは歴代の国に戦争の駒として使われていたという」

「だろうな」

「さっきの様子を見ると戦う事しか出来そうにないものね」

「しかしゴーレムの残酷性からある時期に戦争での使用を止める事に決まったという」

「ほぉ」

「私も文献でしか知らないし、この目で見たのも初めてだがゴーレムを軍隊で使用した場合、敵味方双方に莫大な被害が出るらしいのだ」

「今回のゴーレムは確かに数が少なかった。しかし確かにこちらの被害は少なくはない」

「カズヒコでさえもゴーレムに気を取られちゃって敵の罠に掛かっちゃったしね」

「あぁ。あらかじめ分かっていたのにな。今回は森での奇襲に使われたからまだ良かったが、街の中にでも放たれたらと思うとゾっとするな」

「テロね、一種の」

「無差別に敵味方を襲ってたからな」

「リィ=イン教国はゴーレムを持っていたって訳ね」

「いや、他の国でも持っているはずだ」

「「えっ!?」」

「リィ=イン教国だけじゃなく全ての国は、使用不可の慣習が出来て戦争での使用は止めても研究は止めてはいないはずだ」

「まぁ、悪魔の血と同じだわな」

「そうね。研究して新たにゴーレムを創れるようになれば世界の覇権を望んだりするんでしょうしね」

「誰も秘密を明かせていないからまだ使用不可の慣習のままという事なんだろう」

「秘密を明かしたら世界征服でもしだすんじゃないかしら」

「死なない兵士だ。どの国も喉から手が出るほどに欲するだろう」

「これを見てくれ」


俺はゴーレムの腹を開けて中身を見せた。


「ケセラの話じゃ内臓を取り込んで自分の物にするという事だったが」

「あぁ。これは文献での話だが」

「あぁ」

「ゴーレムは本能的に人間になりたいらしい」

「「・・・」」

「人間になりたいから人間のモノを自分に取り込むのだと」

「「・・・」」

「しかし所詮他人の内臓だ、やがてゴーレムの体には合わずに腐ってゆく」

「合う内臓を求めて彷徨い続けるのか、死なないから永遠に」

「・・・可愛そうな話ね」

「と言うか、使用不可なんだろう?ゴーレムは」

「そうだ!国際慣習法違反だ!これはベオグランデ公国とリィ=イン教国だけの問題にはならんぞ!」




「問題にするのは難しいな」

「何故ですかバティルシク様!ゴーレムですよ!人魔大戦でも使われた!」

「そうです!証拠だって有るのですよ!」

「慣習法は慣習であって条約ではないから罰則も無い。罰も無い法に従う者は居ないだろう」

「大臣は性悪派かな」

「殿下、軍を率いるのに長けた殿下なら御分りでしょう。罰の無い法で人殺し共を御せる訳は無い事を」

「確かにな。しかし軍を率いるには法だけでは駄目なのだ。しかし今はそんな話は良い。問題はゴーレムだ。口約束だから問題に出来ないと言う事か?」

「それも有りますが証拠を出したとて、その証拠が果たしてリィ=イン教国のゴーレムかを証明する事は出来ませぬ」

「奴等なら”ベオグランデ公国所有のゴーレムを持ち出して我々の罪をでっち上げている”とか言いそうだな」

「殿下、狂信者共に常識は通じません。ゴーレムを使うのが良い例です」

「言ってる事は分かるが納得は出来んな。特にゴーレムと戦って死んだ者や傷付いた者にはな」

「そこを殿下のカリスマで押さえて頂きたい」

「抑え付けられたものは何時かは爆発する。何らかの発散方法が必要だ」


そこに伝令が会合の輪の外からベオウルフに合図を送る。


「報告せよ」

「はっ!輜重隊長が事後報告に参っております!」

「通せ」

「はっ!」


通された輜重隊隊長が報告を済ませて出て行った。

そのまま幹部達との話を続けるベオウルフ。


「被害が少なくて済んだな」

「ゴーレムの数が思った程ではなかったからでしょうな」

「ゴーレムはどうする」

「都に運ばせましょう。死体とはいえ貴重な資料ですしな」

「ではその様に取り計らってくれ」

「は」

「しかし今回の規模の奇襲で我々の食料を燃やせられると思っていたのか?教国軍は」

「奴等の狙いは略奪です。今回砦は落とせてもロックワームの出現で略奪品を輸送する事は出来ませんでした」

「然様。砦Aからもあまり輸送出来ていませんでしたしな」

「つまりロックワームの姿が見えなくなったから輸送する為の時間を稼ぐ為に奇襲部隊を送ったと」

「その可能性が高かろうと存じます」

「ふむ。ならば進軍は止めてはならんな。国民が北部に連れ去られるのを黙って見てる訳にはいかん。本隊から輜重隊を警護する隊を割いて本体は進ませよう」

『畏まりました、殿下』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ