⑮-36-491
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結局僕等は3日間ほど狩って帰った。
報告の為に砦Aの本部に向かう。
「遅かったな!」
ベオウルフが声を掛けてきた。
「お前達が最後だ」
「ベオグランデの為に一生懸命駆除して来ましたよ」
「はっはっは!それは良くやってくれた」
「では結果を見せてくれ」
「大臣、労いの言葉も無いんですね。まぁ構いませんが」
「他の冒険者も査定は終わっている。ダダイのパーティなどは3匹も狩って帰ったぞ」
「3匹!?」
「そうだ。あいつらは見所が有ってな」
「へぇー」
「デッドマンズカンパニーも期待しているよ」
「大臣、下品な2つ名で呼ぶあたり、皮肉にしか聞こえないですよ」
「下品とは何だ下品とは!ワシが考えたんだぞ!」
「では結果をお見せしますね、ルーナ君、お願い」
「承知しました」
サーヤ君が前に歩み出てバックパックから台に証明部位と魔石を出していく。
「1つ、2つ、3つ!?流石だな死体男。ダダイと同じ・・・4つ!?」
「5,6・・・」
13セット、台に置かれた。
『・・・』
その場に居た公国関係者は言葉を失って黙り込む。
口を開けたままの者も居る。
「13匹、ご確認下さい」
『・・・』
「初めての魔物で少々てこずりましたよ」
『・・・』
「大臣?」
「あ、あぁ。これ」
「は、はい」
鑑定人が鑑定していく。
鑑定し終えて口を開いた。
「間違い御座いません。全てロックワームの物です」
『・・・』
「砦Bの近くまで行きましたから行軍しても大丈夫だと思いますよ」
「あ、う、うむ。後ほど調査に向かわせよう」
「えぇ、そうして下さい」
「うむ。ではバティルシク」
「あ、う、うむ。これ、報酬を」
「はっ」
近習に報酬を用意させ僕等に渡した。
代表で僕が受け取る。
「650万エナ、確かに」
「うむ!良くやってくれた。調査が必要な為時間は有る。しっかり休んでおいてくれ」
「承知しました」
「うむ」
カズヒコ達が本部を出て行った。
軍関係者が口を開く。
「まさかロックワームを13匹も・・・」
「しかも3日で・・・」
「てこずって13匹・・・」
「オホン!至急調査に向かわせろ」
「はっ、は、はい。畏まりました!」
「バティルシク」
「・・・」
「余計な事はするなよ」
「最早しようとは思わん。利用した方が良いだろう」
「その通りだ。先ずは砦の奪還が最優先だ」
翌日は調査隊を向かわせ本隊は休みとなり翌々日から砦Bに向かって進軍となった。
その間も調査隊を先行させているらしい。
そうやって調査しつつ進軍をして数日。
明日にも砦Bに到着という日の昼下がり。
僕達5人は輜重隊の護衛を務めていた。
この輜重隊は軍の最後尾に居る。
何千という軍隊が山道を行くので進軍速度は遅い。
しかも狭い街道、隊列は細く長く進軍せざるを得ない。
だからだろうか、そいつ等も間に合ったのだろう。
「街道の両側から近づいて来る奴等が居る」
「敵!?」
「調査隊ではないのですか!?」
「非常に遅い動きだ。恐らくこちらを窺いつつ来ている。調査隊ではないな」
「敵か」
「それに加え魔物に近い魔力反応も有る」
『魔物に近い!?』
「どういう事?」
「分からん。言葉通りだ。恐らく人間ではないな」
「魔物でもないの?」
「はっきりとはな。人間じゃないから魔物だろうって判断だ」
「多分敵だよねぇ。どうするの?」
「敵だとしたら待ち伏せよね」
「恐らくな」
「規模は?」
「そんなに多くない」
「どういう事?」
「公国軍本隊はそいつ等の前を通過中だ。恐らく狙いは輜重隊だな」
「食料かっ!」
「どうします?」
「隊長に知らせよう。多くないと言っても俺達の手に余る」
「そうね、急ぎましょう!」
輜重隊隊長の下に走る。
「死体男!どうした!」
「前方で待ち伏せている奴等が居る!」
「何だと!?」
「街道の両側から挟み撃ちするつもりだ!」
「そうか!どうすれば良い!?」
「信じるのか!?」
「ベオウルフ殿下からお前達を当てにするように達しが来ている!」
「分かった!左側には魔物も居るみたいだ!」
「魔物も!?」
「リィ=イン教国は魔物を軍で使役するのか!?」
「いや!そんな話は聞いた事も無い!」
「兎に角!魔物らしき物も居る!本隊に報告してくれ!」
「分かった!我々は停止して様子を見るか!?」
「いや!敵の狙いは食料だ!停止して本隊と距離が空くと不味い!行軍しつつ防御態勢を築いてくれ!」
「分かった!おい!本隊に伝令騎を出せ!盾兵は車の両隣りに付け!弓兵は盾兵の後ろに付くのだ!」
『ははっ!』
伝令の騎兵が前方に走ってゆく。
何千という規模での行軍且つ細い山道、本隊まで時間が掛かるだろう。
やがて奴等が潜む付近に近付いた。
輜重隊を停まらせて様子を見る。
俺は荷車の御者席の隣で立っている。
「来るぞ!」
左側の森の中から一団が姿を現した。
それは裸の人間だった。
「兵士・・・じゃなさそうだが」
いや、人間のよう、だった。
遠くてはっきりしないが顔に陰が無い。
こんな青空で陽射しが良ければ顔に陰が出来そうなものだが陰が無い。
陰が出来ないのだ。
陰が出来そうな目の窪みや鼻の高さが無いのだ。
顔に有るのは口だけ。
耳元にまで裂けた口だけが有る人型の何かだったのだ。
「な、何だぁありゃ・・・」
人型の何かは枷で手を封じられている。
魔力枷なのだろうか。
そして人型の何かの後ろでリィ=イン教国軍の兵士が居る。
兵士が人型の何かを蹴り飛ばしながらこちらに近付けさせているようだ。
蹴り飛ばす兵士を威嚇しつつもこちらに近付く人型の何か。
やがてそいつ等の奥から更に人間が出て来た。
兵士の格好はしていない。
どちらかと言うと街の人間らしき服装だ。
そしてリィ=イン教国軍の兵士が叫ぶ。
「それ!味方まで走って逃げろ!」
街の服装をしている人間達は戸惑いを見せつつも徐々に兵士達から距離を取り始めこちらに向かって歩いて来る。
その様子をじぃっと見る人型の何か。
やがて街の服装をしている人間達がこちらに向かって走り始めた。
「おぉーい!助けてくれー!俺達は砦Bのモンだぁー!」
こちらに走って来る街の人間らしき服装の奴等が叫んだ。
っと、
「それっ!」
教国軍兵士が命令を下し人型の何かの枷を外させた。
人型の何かは前方を走る人間を追い始める。
一部、追わずに近くの兵士に飛び掛かる物も居た。
街の人間に向かった物は飛び掛かって更に、
「ぎゃぁー!?」
人間を食い始めた。
「やっぱり魔物か!」
「いや違う!」
「セラス!?」
「あれはゴーレムだ!」
『ゴーレム!?』




