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HappyHunting♡  作者: 六郎
第15章 マンイーター カタルシス (ロッシ、アンナ、ルーナ、カヤ、セラス)
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討伐証明部位と魔石を取り出してティアとマヌイの魔力回復がてら休憩していた。


「魔力の方は大丈夫か」

「えぇ、まだいけるわ」

「あたしも」

「じゃぁそろそろ次に行くか」

「ロッシさん、ロックワームを収納しますか?」

「そうだな。頼むよルーナ君」

「はい」

「この調子じゃ結構な数狩れるんじゃないかい?」

「そう思うぞ。体力的にキツイが通常の方法と比べたら何て事ないからな」

「押さえてるだけだしね」

「次は手で押さえるんじゃなくてロープで抑えよう」

「それが良いわね。手や体で押さえるよりロープで縛る様に抑え込んだ方が効率良いでしょうし」




休憩後に砦B方向に街道を歩きまたハンマーで誘き寄せる。


「しまった」

「どうしたの?」

「2匹来る」

『!?』

「2匹!?どうするの?」

「うーん。1匹は君等だけで仕留めてくれ。1匹は俺が時間を稼ぐ」

「分かったわ。なるべく早く仕留めるわね」

「いや、時間は掛かっても良いから確実に仕留めてくれ」

「分かったわ」

「でも囮はどうするのさ」

「私がやろう」

「セラス。大丈夫?」

「盾で突進を受けた後に拘束してくれれば良い」

「大丈夫かしら」

「恐らく受けたら吹っ飛ぶぞ」

「口よりも大きい盾だから吹っ飛ばされても食われる事はない。私を食おうとしてる所を拘束するんだ」

「いや駄目だ」

「ロッシ」

「あの巨体だ。恐らく1トン近くあるだろう。突進を受ければタダでは済まない」

「しかし他に方法が無いだろう」

「駄目だ。俺がやる」

「2匹とも!?」

「無理だろう!」

「いや、やる。ルーナ君、槍とハンマーを出してくれ」

「は、はい」

「来るぞ!準備しろ!」


ザザッ


1匹のロックワームが森の切れ目から目の無い頭部でこちらを見ていた。

少し離れた所に同じ様にしているロックワームが居る。

近めの方に俺は駆け出した。

そいつは俺の方に向き地面に頭から潜って行った。

匂い、もしくは振動で標的の位置を探っているのだろう。

とりわけ大きな振動を出している俺を標的にしたようだ。

残りの1匹も地面に潜った。

魔力反応から同じく俺の方に来ているのを感じる。

俺も走って近い奴の間合いに入る。

地面に魔法陣が現れ、陣の中から頭部が見えた。

俺は急停止し、《土想造コントロールアース》を発動、足元の地面に穴を空けた。

奴が土から飛び出し飛び掛かって来る。

槍の石突を地面に空けた穴に入れ支えとし、槍の先を奴の口に向ける。

食われる寸前で横に避ける。

俺の代わりに槍を口に入れた奴は、

飛び掛かって来た勢いを持って槍を体の奥深くまで飲み込んでしまった。


「ゴブッ」

「ティア!」

「バ、《バインド》!」


俺は詠唱を背中で聞き2匹目に駆けだす。

更に背後から詠唱が聞こえた。


「《コントロールウォーター》!」


2匹目も地面から頭部が見えて来た。

ポケットから石灰弾を取り出す。


「ブッシャァアア」


2匹目が飛び掛かって来る。

その口に石灰弾を投げ入れつつその身を避ける。

石灰弾を口に含みつつ着地した2匹目は悶えながら石灰弾を吐き出した。


「マジか」

「ゴッバァアアア」


しかし短時間しか口に含んでいなかったとはいえ、確実に効いてるようだ。

苦しいのだろう身を捩っている。

苦しみながらも俺の方を振り返った。

やはり匂いでも標的を探っているのだろうな。

そして執着するだけの知能は有るようだ、俺に対する執着を感じる。


「堅物よりも明るい女が好みなんだが」

「ブッジュァアアア」

「贈り物は口に合ったかね」

「ブバァアアア」


赤色の液体が奴の口から溢れ出て来る。


「言葉にならない程?そうかそんなに気に入ってくれるとは嬉しいよ」

「ブッジュァアアア」


頭部から地面に潜った。

地面を這うよりも潜った方が早いその速度で俺に迫って来る。

また飛び出して来た。

寸前で避ける。


ドゴッ


「ブルァアアア」


地面に激突して叫び声を上げた。

奴が着地するであろう地面に、《罠》と土魔法で固めた土を作った。

俺の魔力とスキルで作った土は、

恐らく飛び掛かって着地したと同時に潜ろうとするつもりだった奴の意表をついてモロに頭部に打撃を与えてダメージを与えたようだ。

体は固いが中身は柔らかい。

加えて自身の体重1トン近くが乗ったんだ。

衝撃で中身にダメージが入ったようだ。


「《MRI》」


内出血しているようだ。

脳にもダメージが有ったのだろう。

このまま頭部を攻撃・・・


「不味い」


奴が地面に潜ろうとしている。

継続して頭部にダメージを与えたいのに地面に潜られると休憩を与える事になる。

俺は奴に飛び掛かって抱きついた。

奴は頭部から地面に潜って行って胴体も潜りだしやがて、


ズゴン


俺は頭から地面に激突した。


「おっほ・・・」


幸いヘルメットで大ダメージは免れたが衝撃は有ったので多少フラつく。


「ロッシ!」

「だ、大丈夫だ!」


痛みに頭を振って辺りを視渡す。

奴は俺から離れて行き、また戻って来る。

勢いをつける為だろう。

まるで水の中を泳いでいるようだ。

体をクネクネさせながら向かって来る。

クネらせるという事は土の中は抵抗が有るという事なのか?

よく分からんがそういうスキルなのだろう。

奴がまた飛び出して来た。

そしてまた《罠》と土魔法で固めた地面に頭から激突する。


「ブグルゥ」


また苦しみだしている。

急いで奴に近付きハンマーで頭部を滅多打ちにする。

頭部も堅い。

しかし硬いからこそ衝撃が中身に伝わり易い。

特に頭部には色んな器官が有るのが視えた。

何かしらにダメージを与えているのだろう、地面に潜ろうともせず苦しんでいる。

しかし皮膚が硬すぎて衝撃を与えているだけで決定的なダメージを与えられていない。

しかし構わない、このままだ。

俺は時間稼ぎに徹すれば良い。

彼女達が1匹目を殺るまでの時間を稼げれば良いんだ。


「ロッシ!終わったわよ!」

「退いて!」

「おう!」


飛び退くと、


「《バインド》!」

「《コントロールウォーター》!」


後は時間が経つのを待つだけだった。




「ふぅ~。やれやれ、終わったな」


ロープを離して一息つく。


「2匹目は楽だったね」

「えぇ、相当弱ってたのね。拘束力もそんなに必要無かったし」

「ロッシさんが相手してましたからね」

「なんか抱きついてたけど?」

「抱きついてれば一緒に土に潜れるかなと思ったんだけど」

『・・・』

「無理だった」

「当然ね・・・」

「だろうな」

「馬鹿なの?」

「まぁ無理とは思ったんだけどね」

「仮に土に潜れたとして、もし土の中でロックワームと離れたらどうなってたの?」

「・・・それは考えてなかった」

「土に埋まってた?」

「いやその空間にも土が有るから埋まらずに土と同化してたかもな」

「こわっ」

「化石ね」

「洒落にならんな」

「余計な事はしないようにね」

「はい」

「ロッシさん、収納袋に空きが無くなりつつあります」

「あと何匹くらい入りそう?」

「今回の2匹を入れて後2匹くらいです」

「まぁこんだけの巨体だもんなぁ」

「そうね」

「悪いがこいつを売った金は僕等がもらうぞ」

「構わないよ。持って帰れるだけ凄いんだからね」

「報酬だけで十分よ」

「俺達も構わない。10人で1匹を持って帰られるかさえ分からないんだからな」




一息ついて更に街道を進む。

道にはミミズが干からびて死んでいた。


「この時期よく見るよね」

「そうねー」

「なんでだろうね」

「冒険者なんだよ」

「冒険者?ミミズが?」

「あぁ。ミミズは土を耕す。今見えてる土、この山の土、生物の居る土は全部ミミズが耕して来たんだ」

『へー』

「ミミズが居なければ植物が生える土にならないし当然僕等が住める土地にならない。ミミズが居なければ僕等は生きていけないんだよ」

『へー』

「そして彼らは新しい土地に向かっていく。この死体もその冒険の果てなんだ」

「切ないわね」

「自分の身を重ねてしまうな」

「この死体も他の動物や植物の栄養になる。無駄ではないさ」

「でも死にたくはないわよ」

「土から出なきゃ死なないだろうに、何で出るのかね」

「・・・冒険者なんだろう」


夏の日差しの下、ミミズの死体に蟻が群がっていた。


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