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HappyHunting♡  作者: 六郎
第15章 マンイーター カタルシス (ロッシ、アンナ、ルーナ、カヤ、セラス)
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⑮-31-486

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砦の中ではリィ=イン教国軍の兵士へのリンチが其処彼処で行われている。

俺達はそれを眺めていた。

止めようとする者は居ない。

リンチをしているのは住民。

女が中心だからだ。

しかもヒト以外の種族の女達。

ヒト至上主義の連中が神の名を騙って何をしたか想像出来ようというものだ。

サーヤ、マヌイ、ケセラ等は然も当然と言った目付きだがミキは複雑そうだ。

周りのベオグランデ軍の兵士達も止めようとはしない。

ルンバキア軍でも戦ったがあそこ以上にここの対北部への憎しみは強い。

過去に色々有ったのだろう。

小突かれ、石を投げられて泣きながら助命を乞う敵兵士たち。

1本ずつ指を石で潰されながら絶叫を上げる敵兵士たち。

既に動かなくなった敵兵士から何か奪っている子供たち。

ニヤニヤしながら味方兵士たちはその様子を見ている。

あぁいう顔をしながら敵の兵士も女を襲ったんだろうかと思いながら俺は歩いていた。




夕方、砦郊外のベオグランデ軍駐屯地。

砦は落ちたばかりという事で一部の兵士を入城させたが駐屯地もまだ機能していた。

ベオウルフを始め軍首脳陣も駐屯地に。

僕達冒険者部隊も駐屯地に。

僕達は配給食を摂っていた。


「ホントに砦落としちまうなんてね!」

「また言ってるわ。バイヨ、あんた信じてなかったの?」

「勿論信じてたさ!目の当たりにするとね」

「まぁ分かるがね」

「だろっ。クルル・カト」

「ティアも良くやったな」

「まぁねー。私位になるとねー」

「結構ビビってたがな」

「ちょっと!セラス!言わないでよ!」

「はっはっは!まぁ敵の真ん前だったしねぇ。しょうがないよ」

「だよね!」

「5つも《バインド》出せたお陰だな」

「1つに集中した方が拘束力は高いんだけど5つでも人間程度なら楽に拘束出来るわ」

「それは凄い」

「2日だよ!2日で落としたんだ!士気もうなぎ上りさ!」


「カヤも弓が上手くなったねー」

「でしょー、エマさん」

「あんなに泣いてた子が。お姉さん嬉しいよ」

「泣いてた?」

「あっ、クルラ・カラ。聞く?聞いちゃう?」

「ちょ、エマさん!駄目だよぉ!」

「えー、お姉さんどうしよっかなー」

「駄目だってばぁ」


「成功しちゃったわね」

「うん?」

「流石です!」

「ありがとう、ルーナ君」

「はい!」

「旗振ってる時何かボーっとしてた気がするけど」

「飛行機作んなきゃって思って」

「何でよ!」

「なんか暑くてさ、あそこ」

「・・・屋根で照り返しも有っただろうしね。危なかったわね」

「日射病になる所だったな」

「今日はゆっくり休んで下さい」

「うん、そうするよ」


「ロッシ!こっち来て呑みなよ!」

「呑み?」

「バイヨったら酒保からお酒をかっぱらって来たんだって」

「・・・流石ドワーフ!」

「ほら!クルル・カトも呑みなよ!」

「う、うむ」

「兄さん大丈夫?前、エルフ製以外のお酒で悪酔いしたじゃない」

「ま、まぁ今日位は付き合っても良いかな」

「リィ=イン教国の奴らめ!ざまぁ見ろってんだ!」

「ティア、バイヨが暴れたら《バインド》を頼むぞ?」

「分かったわ、任せて」


バイヨ達とは仲良かったが更に距離が縮まった気がする。

クルル・クルラ兄妹・・・言い難いな、クルクル兄妹ともだ。

破壊的な戦争で友情が生まれる皮肉。

吊り橋効果みたいなもんだろうか。

対北部という事で気持ちを同じくする者達。

冒険者を通商同盟に入れる事を考えるのも良いかもしれない。

既にキルカ商会とビグレット商会にも居るしな。

事情は話せないまでも、傘下の商会の仕事を手伝って貰うとかでも良いだろう。

僕達だけじゃ戦争には勝てない。

みんなを巻き込む必要がある。

本人達が知らず知らずやっている事が通商同盟の益になっていれば良いのだ。

通商同盟の目的は対北部での勝利なのだから。


「よっと」

「ロッシ!何処行くのさ!」

「憚りにね」

「またかい!早く戻っておいでよ!」

「分かったよ」




ベオウルフの居る天幕。


「ふぅー」

「おめでとう御座います、殿下」

「然様。2日で落とすとは。この調子で行けば国土回復も秋の収穫の前に成せるでしょう」

「そう願いたいものだ」

「諸君。兵達は勝利に酔っても構わんが我々が酔うのは全て終わってからだ。砦B奪還もある。今日は早く休んで明日の砦Aの完全制圧に備えてくれ」

『畏まりました、バティルシク様』


諸将諸官らが天幕を出て行く。


「それで?」

「うん?」

「話が有るんだろ?人を遠ざけて」

「うむ」

「・・・死体男か?」

「・・・」

「奴は有用だ。策も決まった。2日で落とせたのは奴の存在が大きい。それは認めるだろ」

「故に危険だ」

「私心が入っていないか?」

「・・・」

「戦争に勝った後で、とか、変な事は思わんようにな」

「・・・」

「ありゃぁ言った事は必ずやる人間だ。自分を犠牲にしてもな」

「・・・」

「つまり約束したらそれを履行する人間と言う事でもある」

「信用はならん、特に冒険者はな」

「誰に言ってんだ?」

「お前は違う。神に愛された男だ」

「ほっ。貴族院首長様に煽てられるとはねぇ」

「歴代最長の在位。アレク3国は元より他国でもそうは居ない。神に認められなければここまで君臨出来ん。それは全ての人間が認める所だ」

「人には呑むなと言っときながらもう酔ってんのか?」

「ロイヤルスクランブルという他の国には類を見ない体制。その所為で此度の様にリィ=イン教国に隙を突かれる事も数え切れず。だが今更大公家を固定しようものなら国民からの反発は必至。8年毎に必ず起こる大混乱を我が国の・・・お前は正に神なのだ」

「貴族院に頭が上がらねぇし?」

「過去に貴族院に反発する大公も勿論居た。しかし一介の冒険者だった者が統治機関を統べる事など出来ようか。その辺を弁えてお前は王になったのだ。王になろうとした者は居たが王になったのはワシの知る中でお前ただ1人だ」

「面倒なのが嫌いなだけだよ」

「面倒な事は他人に任せる。それが王という者だ」

「だったら死体男の事も放っておけ。面倒な事になる」

「・・・話はもう1つ有る」

「ほぅ」

「ダダイと近いようだな」

「見所がある」

「と、言うと?」

「奴には芯が有る。死体男と似たような芯がな」

「ふむ」

「これは実際に戦ってみた者にしか分からんだろうな」

「だとすればワシには分からんな」

「何も拳を突き合せろと言ってるのではない。文官でも議論で互いの理解を深めるのだろう?」

「ほぉ」

「24年も大公してるとな」

「つまり分かり合えたと?」

「そんな言葉に出来る感じじゃねぇんだが。何かしら感じるんだ。ただ閉塞感も同時に感じる。溺れそうな、助けを求める様な・・・」

「ふぅん?」

「まぁ・・・磨けばものになりそうなんだよ」

「なるほど。だから傍に置いておくと」

「まぁな」

「お前が言うのなら間違いなかろう。否やは言わぬよ」

「助かる」

「それは此方の台詞だ」




「あっ!ロッシ!遅いじゃないのさ!」

「おっきい奴が出ちゃってさ!」

『食事中ぅ~!』

「ロッシィー!」ガバッ

「うわっ!?何だ!?クルラ・カラ!?」

「あんたはエライ!見直したよ!」

「左腕の件話しちゃったらさぁー、こんなになっちゃったのよー」

「エマさんが喋っちゃったんだよぉ」

「ふおっ!?酒くさっ!」

「絡み酒ね」

「ちょっと席を外した間にこんなに!?」

「クルラ・カラは酒に弱くてな、すまんな」

「ほらっ!こっち座って!みんなも呑みましょ!」

「ロッシ兄ぃ?」

「あぁ。今日は呑んで良いぞ。この時間を一緒に楽しもう」

「「「「はーい!」」」」


パーティでは禁酒をしている。

判断力の低下による事故に遭わない為だ。

俺達は全員身内は居ない。

転生した俺と菊池君は元より、サーヤ君もマヌイもケセラも。

俺等にはこの家族しか居なかった。

しかし今は通商同盟を作り目的を同じくする仲間も増えた。

だったら仲間と接する時間は大切な時間となるだろう。

いや、大切にしないといけない。

バイヨ達は最早戦友と言える間柄だ。

クルクル兄妹もロイヤルスクランブルを通じて生死を懸けて戦った。

それだけで全てが分かる訳では無いが北部に対する思いは分かり合えただろう。

おっさんの俺はまだ良い、だがまだ若い彼女らには同じ年代の仲間が必要だ。


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