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HappyHunting♡  作者: 六郎
第15章 マンイーター カタルシス (ロッシ、アンナ、ルーナ、カヤ、セラス)
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⑮-27-482

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翌日朝。

体の調子は良い。

昨日は少し鍛冶仕事をしてから早くに寝たからな。不本意ながらも早くに。

僕達は山間部の街道をラドニウスを曳いて北上していた。

道が狭いので軍全体の移動速度も遅く馬車に乗っているより歩いていてもそれ程変わらないからだ。

更に言えば山間部という事もあり道は整備もあまりされておらず高低差もあり荷車になんて乗っていられないからだ。

徒歩で移動するだけでも平野部よりも体力を消耗する。

僕達の後を輜重隊が続いている。

ベオウルフより、輜重隊の警護を命じられていた。


「でもさぁロッシ兄ぃ」

「ん?」

「思うんだけど」

「うん」

「国も収納袋持ってるんでしょ。だったら食料は収納袋に入れて運べば警護する人も要らないし進軍速度も上がるし良いんじゃないのかな」

「これは僕の考えだが」

「うん」

「仮にそうしたとして、敵も斥候を出してるだろ」

「うん」

「んで僕等の軍容を観察して知る訳だ、輜重隊が居ないと」

「うん」

「敵はどう思うかな。食料を運んでいる部隊が居ない、しかし食料は必須だ、どうしているんだろうと」

「収納袋を使ってるって思うね」

「だろうな。そしてもし僕が敵の指揮官だったら暗殺部隊を送る。勿論、収納袋を持ってる奴に向けてね」

「ふーん」

「何千人という敵を相手するよりも収納袋を持った個人を相手にする方が効率は良いだろう?」

「そうだね」

「探す手間は有るがそれでも成功した時の効果は絶大だ。何せ本隊は戦わずに暗殺部隊だけのリスクで何千という敵を撃退出来る。食料が無ければ戦えないからな」

「そうだね」

「実際過去にそういう事が有って戦争では収納袋に食料は入れないんだ」

「セラス姉ぇ、そうなの?」

「うん。過去にそれをやられて食料を失って退却した将軍は今でも愚か者の代名詞になっている。現代まで愚か者としての名が残る程の過ちを犯す勇気は無いだろうな」

「そうなんだー」

「全軍の食料を入れた収納袋を失うリスクを考えるのなら、どうせ人間は収納出来ないんだ。だったら人に食料を警護させるのが良いだろうしね」

「そっかー」

「僕なら1割、多くても2割程度を収納するかなぁ」

「ふーん?」

「その程度だったら敵にも”食料が人数分より少ないから収納袋を使ってる”って思われないだろうし、例え思われても1割2割の為に部隊を送ろうとは思わないだろうしね」

「なるほどねー」

「クァー」


ラドニウスに乗ってるレイヴも返事をした。

ジョゼは相変わらず荷車で寝ている。

日差しが強いので前に作ったテントの下で寝ている。

ん?日差し?陽射し?

まぁどっちでも良いか。

この揺れでよく眠れるもんだ。

暑くて怠いのだろうか腹を見せて仰向けで寝ている。

お前ホントに猫か?


「それで私達は何処に向かってるんだっけ?」

「何でもリィ=イン教国は2つの砦を落としたらしい」

「2つも?結構侵略されてるわね」

「ベオグランデ公国は山地国家という事もあり、他のアレク3国よりも人口も経済規模も小さい。戦争の準備が間に合わなかったのだろう。加えて大公選抜祭の準備で国中が浮かれていたのも有ったのだろうな」

「まぁ国のテッペンを決めるお祭りだもんねぇ」

「8年に1度ですしね」

「まぁそうだな。んで、その2つの砦の内、近い方の砦Aに向かってるんだ」

「じゃぁ先ずは砦Aを奪還してその後砦Bを、って事ね」

「恐らくね」

「人数は大丈夫なの?砦を奪還って難しいんでしょ?キルフォヴァの逆だもんねぇ」

「こっちは4000人程らしい。敵は5000だとか」

「えぇ!?大丈夫?半分に分かれて守られてるとして、4000対2500。城を攻めるには相手の数倍は必要なんでしょ?」

「だよなぁ。どうするんだろ」

「自分達の砦だからどこを攻めれば良いか知ってるんじゃないか?」

「まぁ、そうである事を願ってるよ。この国の奴等は力攻めしか知らないって恐れも有るんだが、まぁ戦争だし、んな訳もないか」




ドドドオオオオオオオオオ


〈うおおおぉぉぉ!〉

〈殺せぇぇぇぇぇぇぇぇ!〉

〈侵略者どもを皆殺しにしろぉぉぉぉぉ!〉

〈うおりゃぁあああ!〉


数日後に砦Aに到着して早々、攻略を開始したベオグランデ公国軍。

ベオウルフの「同胞を救いだせ!」の号令と共に全軍突撃を敢行した。


「ウッソだろっ!?」

ドォオオオン!

「ルンバキア公国とはえらい違いね!」

ドォオオオン!

「こいつ等脳ミソも筋肉だよぉ!」

ドォオオオン!

「策も何も有りませんね!」

ドォオオオン!

「ベオウルフのカリスマでも無ければ出来ない作戦だな!」

ドォオオオン!

「これを作戦って言えるのかね!?」


ベオグランデ公国軍側の魔導士が街壁に近付いて魔法を壁上のヒトに撃っている。

魔導士の周りにはサポートの盾隊の姿がある。

他にも弓隊も攻撃を間断なく加えている。

そして歩兵が街壁に近付いて梯子を掛け登ろうとしていた。

別の梯子では矢を受けた兵士が落下している。

通常、守る方が有利であり攻めるには守備側の何倍かの人員が必要とされているが、見ると砦を守る人数はかなり多い。

苦戦は必至だと思われたが案外そうでもない。

一進一退と言った所だ。

俺達は大公近くの陣に居て戦況を見つめていた。

ケセラが言う。


「ベオウルフのカリスマ、ヒトへの怨念、同胞の救出。諸々の動機が彼らを奮起させているのだろう!」

「なるほど、下手な小細工よりも一気に行った方が・・・ってそんな訳ないだろ!ちゃんと作戦を考えて自軍の犠牲を減らす事も考えないと駄目なんじゃないのか!」

「最初の戦いだ。一気に行くと言うのは間違ってはいないと思うぞ!」

「それはそうだが!」

「なにより彼ら自身が策よりも一気に攻撃する事を良しとする性格だ!ならばそれを最大限に生かす事を考えた方が良いだろう!」

「こいつ等の性格は嫌というほど思い知ったけどこれから砦2つ落とすんだ、犠牲は少ない方が良いに決まってる!俺達も参加するぞ!」

「「「「了解!」」」」




ベオウルフの居る本陣。

本陣というよりテントすらなく、ただ集まってるだけに過ぎない。

本格的な本陣は後方で現在も急造中だ。


「殿下に報告!」

「何だ!」

「死体男が参戦したいと参っております!」

「通せ!」

「はっ!」


やがてカズヒコ達が現れた。


「ベオウルフ殿下!」

「死体男!」

「俺達も参加しようと思いまして!」

「そうか!何が出来る!?」

「普段は弓がダメージソースです!」

「良いだろう!弓兵隊に配属するよう命令書を渡す!持って行け!」

「畏まりました!」


その後は係員に聞いて弓兵隊の居る場所を教えてもらい向かった。

向かったそこは冒険者義勇軍の弓兵隊で命令書を見せるとその辺で適当に攻撃しろと言われた。


「結構アバウトね!」

「寄せ集めだからな!いきなり連携なんて無理だろう!」

「「ロッシ!」」

「ん?」


声のする方へ向くとバイヨ達3人とクルル・カト兄妹達だ。

バイヨとクルル・カトが同時に同じ名前を口にしてお互い見合ってる。

今まで別々に居たが偶然集まったようだ。


「君等は初見か!?」

「「あぁ!」」

「大公選抜祭で顔だけは見たがね!」

「バイヨ!こっちはクルル・カト、クルラ・カラ兄妹だ!」

「噂は知ってるよ!」

「光栄だ!」

「クルル・カト!こっちはバイヨ!ティア!ナマだ!」

「エマよ!」

「エマだ!」

「宜しくな!」

「こちらこそ!」

「それで!大公付がこんな所にどうしたんだい!」

「居ても立っても居られなくなってな!」

「心奮わされたってわけかい!」

「んな訳あるか!見ちゃいられねーんだよ!」

「はっはっは!他国の人間には刺激が強すぎたかな!」

「こんな所で味方の人数減らしても良かねぇだろ!」

「我々は軍も含めて所詮は寄せ集めだ!練度を必要とする行動など出来る訳がない!ならば力に任せて突っ込むのが1番なんだよ!」

「だから応援に来たんだよ!」

「応援って、武器は!?」

「勿論弓だ!」

「弓って、持ってないじゃない!」

「準備だ!」

「「「「了解!」」」」

「「準備!?」」

「バッグを開け、何かの部品を取り出し、嵌め込んで、弦を・・・って組み立て式の弓!?」

「そうだ!」

「「へー!」」

「矢を番える所が面白い形になってるな!」

「普通の弓は矢を番えても矢が向いてる方向には飛ばない!分かるだろ!」

「なるほど!しかしこの形なら番えた方向が飛ぶ方向になる訳か!」

「その通りだ!準備は!?」

「「「「完了でーす!」」」」

「じゃぁ各自撃て!」

「「えっ!?この距離から!?」」

「俺達の弓は悪魔眷属の素材を使ってる!見てろ!」


ケセラ含めたミキ達が矢を放つと城壁上の兵士に命中していく。


「凄いな!」

「お前等は届かんのか!?」

「当り前だよ!」

「周り誰も居ないでしょ!」

「・・・なるほど!じゃぁお前等が届く所まで前進しよう!」

「良いのか!?」

「バイヨと俺で弾除けだ!ティアは全体を見て状況を把握してくれ!」

「「了解!」」


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