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HappyHunting♡  作者: 六郎
第15章 マンイーター カタルシス (ロッシ、アンナ、ルーナ、カヤ、セラス)
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ホテルに帰って一息つく。


「ふー」

「ニャー!」

「おっ。勿論お前達の料理も取って来たぞ」

「グァ」

「《偽装》しながら収納袋にホイホイ入れてたわね」

「一杯食べろよ」

「ニャウ」

「グァ」


「やっぱり何か有ったわね」

「そういう星の下に産まれてるんだよ、カズ兄ぃは」

「僕のせいか?」

「不可抗力とは言え、騒ぎを大きくしたのは確かでしょ」

「カズヒコさんは私達の事を思ってですよ」

「仕方ない面も有るな」

「で、よ」

「秘匿のリングだね」

「カズヒコさんの《隠蔽》と同じ様に感じましたけど」

「私もだ」

「もしかしたらスキルを持ったリングなり魔導具なんかが存在するのかもね」

「リングやネックレスなんかの装飾品に?」

「装飾品だけじゃないかもしれないが」

「でも魔石が無いのにスキルが発動するのかなぁ?」

「恐らく装着者の魔力を使っているんだろう。パーティリングもそうだろうしな」

「なるほどね」

「以前、宝石や魔石に魔法付与するって聞いた事が有ったが」

「そうだったわね。確か魔石だと最低魔物ランクB以上からだったかしら」

「悪魔とワイバーンの魔石で作れない?」

「それが有ったな」

「でも何の魔法を付与した方が良いか分からないのに使うのもねぇ」

「ちょっと試しに買ってみても良いかもしれんな」

「ダンジョン産だと元々スキル持ってる指輪とかありそうですね」

「それは有るかもしれないな」

「でもカズ兄ぃ。秘匿のリングはカズ兄ぃの《偽装》が有るから要らないんじゃない?」

「マヌイ。普通、《偽装》を持ってない人は欲しがるだろう?」

「うん。絶対欲しいね。特に私なんかは」

「そうだろう。つまり欲しがる素振りをしないとなれば何か他にステータスを隠す手段を持っているかもと予想される恐れがある」

「そっか!だから売ってくれって言ったんだね!」

「その通りだ」

「なるほどねー」

「この場合買えようが買えまいがどっちでも良いんだよ。予想されない様にするのが目的だからだ」

「ふんふん」

「相手の立場になって考えると交渉も上手く行き易いぞ」

「うん!分かった」

「料理はどうだったんだい?」

『美味しかったぁー』

「そうか。良かったじゃないか」

「まぁ2000万エナの臨時収入も有ったし」

「何か有ったら国から逃げれば良いしねぇ」

「では明日からは今まで通り、魔石を採って実験の続きですか?」

「そうだね。ここは山地で滑空実験もやり易いから進めておきたい。後は」

「後は?」

「僕は城の周りを張り込みだな」

「止めなさいって!」




それから数日は以前と同じように過ごし、時折夕飯をバイヨ達と一緒に摂っていた。

そうして3日目の昼、街の外からホテルの部屋に返って来ると窓辺にウリク商会の伝書鳩が居た。


「何の知らせだろう」

「良くない知らせじゃなきゃ良いけど」

「そういう事の為に伝書鳩を作った訳でも有るからな」


鳩を部屋に入れ手紙を取る。

鳩にご褒美の穀物をマヌイがあげていた。


「むむっ!ルンバキア南部の貴族が弟妹を脱出させて担ぎ上げ、新大公を宣言したらしい」

『えー!?』




ドドドドドドドドド


箱馬車を連れた騎兵の一団がルンバキア公国公都オラキアの北門を潜って行った。




カツッカツッカツッ


王城の廊下を足早に歩く集団。

先頭のパンツスタイルの軍服の少女が隣の壮年の男に声を掛けた。


「バグレスク宰相。状況は?」

「はい、殿下。呼応する諸侯は今の所少なく、北部の諸侯らの参加は有りません」

「南部の諸侯が中心という事ですね」

「恐らくは」


一団が会議室に入った。

既に居た面々が席を立って控える。

大公ヴォーレ8世が部屋の奥にある上座の席に回り込んで座った。

それを確認し各人達も席に座る。


「先ずは状況を整理しましょう」

「はい。ドゥムルガ戦役遠征軍がグデッペン要塞に駐留中に南部の複数の貴族らの私兵が弟妹殿下を奪還しオラキアを脱出。その貴族達の中心人物の街で新大公を宣言。国内諸侯らに参加を呼び掛けている所であります」

「最初聞いた情報と変わりがありませんね」

「はい・・・殿下、殿下から御預かりした都での狼藉を許し面目次第も御座いません。斯くなる上は責任を取って宰相の職を辞し」

「却下よ」

「でっ、殿下!?」

「ドゥムルガ戦役で兵士を取られ公都の守りが手薄になった所を突かれたのはあなたの落ち度ではありません。あなたは良くやってくれています。責任を取ると言うのなら宰相の職を全うしなさい。いいですね」

「殿下・・・畏まりました」

「弟妹と南部の様子は?」

「はい。調べさせました所、思った程呼びかけに応える諸侯が少ないらしいです」

「弟妹派にとっては?」

「はい。どうやらグデッペン要塞を攻略したのが功を奏し、諸侯達は二の足を踏んでいる状況と推察されます」

「なるほど。思ったより悪くはないという事ですね」

「はい」

「殿下。ここは一気に攻めて後患を断ちましょう」

「然様!難攻不落のグデッペン要塞を陥落させた勢いを持ってきゃつらを一掃してしまうのです」

「将軍達の言う事も尤もなのですがドゥムルガ戦役で公国内北部は混乱しています。勝ったとはいえグデッペン要塞に駐留させた軍もいて編成が難しいわ」

「然様ですな。要塞にある程度の兵士を置かねばなりませんし」

「ソルスキア軍とソルトレイク軍との合同防備にした事である程度で済んだ事は幸いでしたが。それでも悪魔騒動以降の混乱を抑える為にも北部に分散させねばなりますまい」

「それでは当面、武力鎮圧は見送るおつもりですか」

「そうするしかないでしょうね」

「それでしたら離間の計で南部の諸侯らの対立を促しましょう。新大公擁立で功が有った貴族しか優遇されないと噂を広めれば反発も起きましょうから」

「それは良いわね。弟妹と言っても直轄地は持っていないわ。経済的に収入の手段が無いし、街を治める事は事実上、擁立した貴族が行うに違いない。弟妹も自分達の思う通りに統治が出来ない事に焦れて貴族との対立も起こるかもしれないし」

「それが良ぉ御座いましょう。今は国の統治に力を注ぐべきかと。反乱者共は時間が経つにつれ自滅していきましょう」

「その線で行きましょう。皆も先ずは国の統治を優先して行うように!」

『御意!』




会議は一旦解散しセーラに親しい者達で話し合っていた。

バグレスク大臣、ラーン、そしてレヴィ。


「こうなるとフリーエ達に任せて来たのは良かったわね」

「はい。要塞は攻略で功が有った将軍に、フリーエ様には混乱真っただ中のドゥムルガの街に、バルドル将軍は戦の熱冷めつつあるキルフォヴァの街でそれぞれ治めて頂きましょう」

「南部は弟妹と通じていた。マコルの予想通りになったわね」

「はい」

「・・・」

「マコル達は公都には居ないのかしら」

「彼等が興した商会に当たってみますか」

「えぇ。そうして頂戴」

「ベドルバクラ王国は大丈夫でしょうか」

「恐らくな。ドゥムルガ戦役で負けて更にグデッペン要塞まで失ったのだ。攻めて来る余裕は無いだろう」

「では今の内に私の足場を築いた方が良さそうね」

「はい。此度の戦勝で民からの信望は厚くなっているでしょう。国内北部諸侯等への影響力も高まりました。より強めて行けば周辺国も殿下を正統なる大公だと認識します」

「ソルスキア王国とソルトレイク王国はドゥムルガ戦役で共闘した仲です。この2国は殿下を支持するでしょう」

「何より家宝を受け継いだのは殿下です。正統なる跡継ぎは殿下でしょう」

「しかし色々有って周辺国に通知のみで招待してはいない。正式に各国に認められるにはこれからの統治で見せていかねばならん」

「統治を失敗すると弟妹達に揚げ足を取られるという訳ね」

「然様です」

「皆の助けが必要です。御願いね」

「「「勿論です」」」

(・・・マコル)




「あいつ等やりやがったな」

「挨拶に来てたのはやっぱり時間稼ぎだったって事?」

「だろうな」

「公国内南部の諸侯達は戦争に参加して無かったもんねぇ」

「セーラさん大丈夫でしょうか」

「殿下」

「戦争に勝ったんだ。人気は出るだろう。それにソルスキア王国とソルトレイク王国は共闘したんだ。セーラちゃんを支持する」

「公弟は北部と通じてたわね」

「その噂を広めれば南部連合の国は公弟を支持しないだろう。大丈夫だ」

「そっか」

「問題は公弟がセーラちゃんに戦争を仕掛けるかだな」

「クーデター起こしたもんね」

「うーん。こればっかりはここに居ては分からんなぁ」

「大丈夫じゃない?ベドルバクラとの戦争に勝ったんだし」

「セーラちゃん側にも被害がそれなりに有ったからなぁ。引き換え、南部は温存していた訳だし」

『うーん』

「キルケさん大丈夫かなぁ」

「何か有ったら逃げてもらうよう手紙を書こう」

「そうね」


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