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HappyHunting♡  作者: 六郎
第15章 マンイーター カタルシス (ロッシ、アンナ、ルーナ、カヤ、セラス)
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〈ベオ!ウルフ!〉

〈ベオ!ウルフ!〉

〈ベオ!ウルフ!〉


ベオウルフが競技台から観客に手を振っている。

バケモンが。

俺はこの椅子まで来るのにも精一杯だったっつーの。

もう体力も魔力もカラッカラだ。

休む間も無くの3連戦だと?

しかも死人を出していない、手加減をしている。

バケモンが。


ベオウルフがメインスタンドに向かい手を掲げた。

競技台に上がってベオウルフを囲んでいた警護兵が槍の石突を石畳に打ち付けた。


ドォオン


シィ――――――ン


会場が静まり返る。


「諸君!祭りは終わった!これより我等は準備をせねばならない!」

「戦争の準備だ!」

《うおおおおおおおおおおお!》


サッっと手を掲げると観衆が黙る。


「北で同胞が苦しめられている!あの狂信者共に!」

「同胞を救う為に!家族を守る為に!我等は戦わねばならない!」

「我等の土地を汚す狂信者共を追い出すのだ!」

《うおおおおおおおおおおお!》


サッ

シィ――――――ン


「獣人だけでなくドワーフもエルフも武器を持て!」

「幸い此度はヒトもロイヤルスクランブルに参加して勇者に選ばれた!」


ベオウルフが俺を見る。

止めろ、見るんじゃない。

疲れてんだ。


「ヒトも!種族の隔たり無く我等が故郷を守る為に!家族を守る為に武器を持って立ち上がるのだ!」

《うおおおおおおおおおおお!》

「守れ!建国王より受け継いだ土地を!家族を!そして魂を!野蛮人共に見せつけろ!」

《うおおおおおおおおおおお!》

《我等は共に!ベオウルフと共に!》

《死して家族の盾となり!御霊は建国王の従者となる!》

《うおおおおおおおおおおお!》


警備兵の一部が先導の為に競技台を降りて行く。

ベオウルフが警備兵に挟まれながら同じく降りて行く。

メインスタンドには上がらずゲートを通って建物内に消えて行った。

アナウンサーが観客に叫ぶ。


「義勇兵の登録をしろ!戦争だ!」




観客がゾロゾロと席を立っていく。

コロシアムから出て行くのだろう。

俺は世話係に聞く。


「これからどうなる?」

「ビブスと引き換えに証明書を発行する」

「ふむふむ」

「後日、その証明書で賞金を受けとる」

「ふむふむ」

「バトルロイヤル勝ち抜きの100万エナと決勝トーナメント1回戦勝ち抜きの200万エナは今からでも受け取れる」

「ありがたいね」

「殿下と約束した500万エナはイレギュラーの為後日になるだろう」

「仕方ないな」

「賭けの1%の取り分も同様だ。集計に時間が掛かる」

「ふむふむ」

「勇者は公国が用意する特別ホテルに宿泊出来る」

「ほぉ!」

「お前はパーティが居るのか?」

「あぁ」

「そのメンバーも泊まれる。最大8人だ」

「やったぜ!」

「明日。勇者を招いての祝宴が開かれる」

「パスだ」

「・・・そう言うな、戦争に来たんだろ?連中とは戦友になるんだ、絆を深めるのは大事な事だぞ」

「まぁ、考えとくよ」

「そうしてくれ。戦争の手続きなんかも残った賞金の事なんかもホテルに居れば連絡が来る」

「分かった」

『ロッシ!』

「それであのゲートを『ロッシ!』」

「ん?」


そう言えば俺はロッシだった。

数時間前までマコルだったからな。

呼ばれて気付いたよ。

って事は呼んだのは、

俺は声がしたメインスタンドを振り向いた。


『ロッシ!』

「やぁ!」


彼女達がスタンドの自分の席から降りて来て壁の手摺から乗り出して手を振っていた。

みんな良い笑顔だ。


「パーティメンバーか?」

「そうだ」

「降りて来て良いぞ!」

「良いのか?」

「あぁ。みんなに祝ってもらいな!祭りだぜ!」

「だってさ!」

『やったぁー!』

「あの門から降りて来たら良い!」

『はーい!』


世話係が指さした。

彼女達が走って行く。


「なんとまぁハーレムだな」

「まぁな」

「お前を知る前なら変な考えを持っただろうが、今となったらお前の強さが分かる気がする」

「そうか」

「守るにも強さが必要だ。特に狂った相手からは特にな」

「この国の連中も俺には十分狂ってるように感じるぜ」

「はっはっは!そうかもな。お前には儲けさせてもらった。戦争も期待してるぜ」

「験担ぎじゃないが、グデッペン要塞からここに来たんだ」

「何だと本当か!」

「あぁ」

「噂だと落ちたそうだが!?」

「あぁ、生き証人だ」

「・・・はっはっは!そりゃぁ良い!建国王の加護が付いてるんだろう。いや、確かに良い験担ぎになった。礼を言うぜ」

「そりゃぁ良かった」

「そろそろ女達が来るな。あの大公殿下が潜ったゲートが有るだろ」

「あぁ」

「あれを潜った先に手続き所がある。ビブスもそこで渡せ」

「分かった」

「それじゃぁゆっくり休めよ、ロッシ」

「あぁ。世話になった。ありがとう」


手を振って世話係が去って行った。

彼と擦れ違って彼女達がやって来る。


「ロッシ兄ぃ!」


マヌイが抱きついて来た。

俺も抱き返す。

しばらくそうした後、マヌイの背中を軽く叩いた。

マヌイが離れる。


「心配したわよ。居なくなっちゃうだから」

「済まなかったな、マリ、アンナ」

「ふふっ!別の名前になってるじゃない」

「数時間前まで別の名前だったからな」

「それが今では勇者だな!」

「・・・バイヨ」

「あたしの見込み通りの男だっただろ!」

「急に連れて行くんだもん!ビックリだよ!」

「そうよ!ねぇ!ロッシ!」

「いえいえ、バイヨさんには色々お世話になりましたよ」

「「「!?」」」

「ロッシ!?」

「これから戦争も始まる事ですし仲良く行きましょうね」

「「「・・・」」」

「頭でも打ったのかね?」

「激しい戦いだったしね」

「打ち所が悪かったんじゃない?」

「はっはっは。何を仰いますやら、お三方」

「「「・・・」」」

「勝手に登録したから嫌みの1つでも言われるかと思ってたのに」

「1つどころじゃないでしょ」

「どうしちゃったのかしら」

「これからもよろしくお願いしますよ、お三方」

「「「・・・」」」

「何か怖いな」

「えぇ、まだ文句言われた方が良いわね」

「仕返しでも考えてるのかしら」

「「「ゾワ~」」」

「そんな事より顔!凄い顔してるわよ!」

「あの野郎!賞金払わねーとか言い出しやがって!」

「えっ、そうなの?」

「それでロッシ兄ぃは喧嘩してたの?」

「あぁ。ケチな野郎だ」

「大公と喧嘩だぞ!?」

「流石ロッシさんです!」

「良く無事だったわね」

「無事じゃねーだろ、見ろ、この顔」

「試合より試合の後のいざこざの怪我の方が酷いってどーなのよ」

「あいつ!戦争になったら後ろからぶん殴ってやる!」

「止めなさいって!カヤ、治療してあげて」

「うん」

「まぁ、無事に居てくれたし。お金も手に入ったし。結果オーライじゃない?」

「そうだな。金は手に入ったのかい?」

「えぇ。バイヨ達が買ってくれた席は一般よりも良い席でそういうのも独自にやってくれるのよ」

「そうか。バトルロイヤルで1200万エナだろ。決勝トーナメントで340万エナか。300万エナが1500万エナだからな、良い結果になった」

『ん?』

「ん?」

「何言ってるの計算間違ってるわよ」

「そうだよロッシ兄ぃ。桁が1つ間違ってるよ」

「ロッシさんらしくありませんね」

「まぁロイヤルスクランブルで疲れてるんだろう」

「ん?どういう事?」

「1500万じゃなくて1億5000万エナよ」

「!?」

「ん!?あれ!?100万賭けたんだろ!?何でそうなる!?」

「え!?1本って言ってたじゃない?」

「1本って1000万でしょ?」

「・・・お、おう!」

『・・・』

「何か前にも有ったような」

「そんな気がするな」

「はっはっは!ロッシらしいね!」

「本当ね!」


「ロッシ!」


呼ばれて振り返るとクルル・カトが居た。

女性エルフを連れている。


「クルル・カト」

「パーティメンバーか」

「あぁ。家族だ」

「・・・そうか。彼女は妹だ。妹のクルラ・カラだ」


妹さんメッチャ睨んでますけど!?


「明日の祝宴は勿論出るんだろ?」

「いや、出る気はない」

「何だと!?」

『祝宴?』

「あぁ。何でもないよ何でもない」

「決勝トーナメント出場者を讃える祝宴だ。パーティメンバーも同伴可能だから君達からも出る様に言ってやってくれないか」

(コイツ余計な事を)

「国が催す祝宴だ。豪華な料理が山ほど出るだろう」


キラーン


彼女達が真顔になる。


「話したい事が山ほどあるが如何せん疲れた。お互いにな。明日、祝宴の席でまた話そうじゃないか」

「従軍した時にでもゆっくり話そう」

「ゆっくり話すんなら尚更祝宴ですれば良いだろう!兎に角明日!待ってるからな!」


クルル・カトは背中を見せて去って行った。

妹さんが最後まで俺を睨んで兄の背中を追って行った。


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