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HappyHunting♡  作者: 六郎
第15章 マンイーター カタルシス (ロッシ、アンナ、ルーナ、カヤ、セラス)
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⑮-11-466

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賭けの締め切りの銅鑼が鳴った。

俺とクルル・カトは位置に着く。

お互い向かい合う。

間もなく開始の銅鑼が鳴る。

クルル・カトは事前詠唱に入った。

開始と同時に発動すんのか?

もう少し距離を取ろう。

後退する。


ブーブーブーブーブー


ブーイングが聞こえる。

何とも思わない。

勝手な奴等だ。

だったら参加しろと言いたい。

お前がやってみろと。

おっと、何とも思わないと言いながら愚痴っちまったな。

クルル・カトを視る。

火と風の魔力が活発化している。

複合魔法に間違いないだろう。

初っ端からぶっ放す気か?

今は決勝トーナメントだ。

俺との後にも戦いは残ってる。

特に次は大公ベオウルフとだ。

ここは一気に勝負を着けて大公戦に余力を残したいって所か。

あんなバケモンに挑もうって本気で思ってるようだ、それこそ称賛に値するぜ。

その魔力、勇気、勇者だな。

ロイヤルスクランブルに参加してるから碌でもない奴なのは決定だが。


バァアアアンンン

バッ


俺は更に正面を向いたまま後ろに駆け出して距離を取る。


奴は杖じゃない。

剣だ、そこまでの射程は無いはずだ。

案の定、開幕いきなりの魔法は無かった。

俺は無手、何も持っていない。

奴は剣を持っている、細身の剣だ。

開幕、魔法を使うのに剣を持つとは、用心深いんだろう。

本気で掛かるってのは本当のようだ。


2人共動かない。

お互い睨み合っている。

何が起こるか分からない為に開幕の銅鑼が鳴ったら息を飲んで見守っていた観衆達も、一向に戦わない俺達に痺れを切らしたのか、やがて喚声を上げ始めた。


ワァーワァーワァーワァーワァー

ブーブーブーブーブーブーブー


俺はじっと動かない。

時折首をポキポキ鳴らしたりする程度だ。

しかしクルル・カトは焦れているようだ。

心臓が早く打ってるのが視える。

観客のブーイングに煽られたか?

若いねぇ。

自分のペースを乱しちゃいかんよ。

事前詠唱はいつでも魔法を発動出来るようにしておく事だ。

しかしそれはつまり事前詠唱待機中はずっと魔力を消費し続けている事を意味する。

いくら魔力が多いエルフという種族とは言え、長時間の待機には耐えられないだろう。

更にこのブーイングだ。

精神的にも精神的に・・・も。

あれ、魔力って精神的な物なのか?

違うよな。

実際魔力は視えてるし。

つまりこの場合体力的な扱いで魔力的にもと言うのが正解な「ダダッ」。


クルル・カトが仕掛けてきた。

こちらに走って来る。

俺も後ろに走る。


ブーブーブー


競技場の端に追い詰められた。


「降参しろ!」

「止めとくよ!」

「どうなっても知らんぞ!」

「お互い覚悟の上だろ!」

「っち!」


嫌々覚悟させられたんだがな!

来る!


「《インフェルノ》!」


ゴウッ


クルル・カトの眼前から炎が生まれ螺旋を描きながら俺に向かって来る。

さながら銃のライフリングだ。

《インフェルノ》?

聞いた事の無い魔法だ、奴独自の固有魔法なのだろう。

俺の《神経強化》のように。

《ファイアーサージ》の様に火炎放射の様な炎の濁流が来るといった物ではない。

2重螺旋を描きながら2条の炎が迫り来る。

なるほど!

火は中心ではなく外縁が1番温度が高い。

酸素に接しているからだ。

科学技術が未発達のこの時代、酸素を知ってるとは思えない。

パーティメンバーにはまだ早いと思ってただ”空気”としか教えていないのもその為だ。

酸素を効率よく取り込んで炎の温度を上げる為に炎の塊を放射するんじゃなく、

螺旋状にして放つとは!

塊じゃなく線状にする事で酸素に接する面積が増え結果、炎の温度が上がる。

しかも2重螺旋にする事で螺旋に囲まれた中心の空気も高温になっている。

見た目、魔法の規模はそんなでもないが炎自体だけじゃなく空気も武器にしてしまっている。

着火温度が低い物だと炎だけじゃなく周りの空気に近付いただけで燃える。

まさに地獄インフェルノ、火炎地獄。

この魔法を操る才能、着眼点、天才に間違いない。

大公を望むのも頷ける。

2頭の火炎龍が俺に迫る。

俺は火龍に向かって走りだした。




『ロッシィー!?』


ミキ達が叫ぶ。




「《EMBエレクトロマジカルバリア》!」


炎に突っ込む瞬間魔法を発動した。

火とはプラズマだ。

そして俺の属性魔法である雷もまたプラズマ。

プラズマ、つまり電離だ。

雷を操る俺は雷を利用して電磁波を発生させ《EMP》を発動している。

つまり電気関係をある程度操れる。

そしてそれはより俺の方が電離状態のものに強いと言える。

火は燃えているという現象に過ぎないからだ。

体表を雷で覆う。それが《EMB》。一種の電磁バリアだ。

火より強力な雷の磁場と電離により火自体が霧散していく。

火自体は問題ない。

問題は熱だ。

このままでは衣服や髪が発火してしまう。

新たにより強力に《EMB》を発動させ《EMB》の層を作る。

層の間の空気は強力な雷で電離してイオン化しバリア層に取り込む。

真空に近い状態となり熱を通しにくくなる。

最外殻のバリア層が火と空気に触れ反応し、霧散していくので体表から次々に生み出してゆく。

バリアと真空層のミルフィーユだ。

繊細な魔力操作を必要とする強力な雷のバリアを次々に生むので魔力消費が激しい。


カズヒコは2頭の火龍を真正面にぶつかって行った。

それは周囲の人間からしたら龍に飲み込まれたように見えただろう。

そしてそれは発動者のクルル・カトも同じだった。


ブワッ


火炎地獄からカズヒコが飛び出して来た。


(馬鹿な!?)


油断はしていなかったとはいえ、炎に飲み込まれた人間が炎の中から出て来るとは夢にも思っていなかったクルル・カトは驚きの余り硬直する。


(馬鹿な!?)

ガタッ


ベオグランデ公国大公ベオウルフ16世も驚きの余り椅子から飛び上がった。


ギィン


マチェーテで細身の剣を払う。


カランカラン


手から離れた剣が石畳に転がった。


ビタッ

「くっ!」


クルル・カトの首元にマチェーテを添える。


「戦争に参加するんならここで死ぬ必要は無いだろう?降参しろ」

「ぐっ・・・」

「お前も忠告はしてくれた。恩は返すと言ったな?だが1度しかしないぞ」

「・・・降参だ!」


バァアアアンンン


銅鑼が響き渡った。


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