⑮-01-456
⑮-01-456
ルンバキア公国公都オラキアに入街した。
馬車屋にラドニウスを返却する。
「今回も世話になったな」
「ブルゥオ!」
高級野菜を食べながら返事をした。
「また直ぐ出番が来るだろうからしばらく骨休めしといてくれ」
「ブオ!」
キルカ商会に向かう。
「やぁキルケさん」
「マコルさん!皆さんも御無事でしたか!」
キルカ商会に入って今までの経過を話した。
「そうですか。北部は4カ国連合軍でしたか」
「えぇ」
「大戦でしたな」
「えぇ」
「しかしグデッペン要塞まで陥落させるとは。これからは北部からの侵略が難しくなりますよ」
「ほぉ。平和に近付いたと」
「えぇ。それは間違いありません」
「ルンバキア公国は今後、戦争後の復興の為に物資が必要になるでしょう」
「はい。ウリク商会とビグレット商会から取り寄せましょう」
「しかし僕等はそれの手伝いは出来ません」
「派手におやり為されましたな」
「いやーっはっはっは。ついね」
「マコルさんのメンバーを思う気持ちの強さですね」
「そう言って頂けると、すいません、ご迷惑かけて」
「いえいえ。そもそも商売が私達の仕事です。お気になさらず」
「それで僕等はソルトレイク王国に行こうかと思ってまして」
「ほぉ。商業の都ですな」
「やっぱり凄いんですか」
「えぇ、そりゃぁもう。そうですかソルトレイク王国に。店も持たれる予定で?」
「お金が・・・報酬を破棄して来たのでお金が無いんですよ」
「はっはっは。では当分私達の事業がメインになりますね」
「えぇ。ソルトレイク王国との行商で稼ごうと思ってますよ」
「収納袋も御持ちですからそれが宜しいでしょう。護衛も必要有りませんからな」
「キルカ商会に卸して販売はキルケさんにお任せしますよ」
「承りました。御任せ下さい」
「それで一先ず卸したい素材が有りましてね」
「ほぉ。戦争中に何ぞ有りましたか?」
「悪魔とワイバーンです」
「・・・・・・・・・・は?」
「悪魔とワイバーンです」
「・・・あ・・・くまとワイバーン?」
「えぇ。マーラ君、頭だけ出しちゃって」
「はい」
サーヤ君が収納袋の口からそれぞれの頭部を出し見せた。
「ぶふぉお!?」
「ワイバーンの骨は卸せないんですが他の素材は卸そうと思ってまして」
「いやいやいやいやいや!御待ち下さい!」
「ん?」
「悪魔2体にワイバーン!?これだけで1財産!いや5財産ですよ!」
「ほぉ」
「それこそソルトレイク王国で売った方が儲かりますよ!冒険者も多いのでその素材装備に幾らでも払うでしょう!」
「そうですか!そりゃぁ良い。キルケさん、お願いしますよ」
「いやいやいやいやいや!マコルさん達の装備は宜しいのですか!?」
「欲しい部位はもう剥いでますので大丈夫です」
「そうですか。でもマコルさん。ワイバーンの心臓は食されたのですか?」
「しょく・・・はっ?」
「竜の心臓を食べるとパワーを得るという言い伝えが有るのです」
『え~』
「損は無いでしょうから御試しになる事を勧めますよ」
「じゃ、じゃぁ食べてみるか」
『う~ん』
「セリーナさんにはワイバーンの血が宜しかろうと存じますよ」
『血?』
「えぇ。薬になるそうです」
『ほぉ~』
「それは是非取っておこう、セリーナ」
「うん」
「色々教えて下さりありがとうございます」
「いえいえ。そうですか、いやしかし悪魔とワイバーンとは!」
「あとスケルトンの骨とか有りますけど」
「全く需要有りませんね」
「だよねー!」
キルケさんとの話も終わり離れ家にやって来た。
『ふぅー』
「懐かしの我が家ってとこだね」
「それほどの時間離れてた訳じゃないけど」
「サーヤ君にはソルスキア王国での盗賊団で経験積んだからマヌイに戦争の経験を積ませられられたのは良かったな」
「でも私達にとってもあんな大規模なのは初めてだったわよ」
「そうですね」
「騎士だった私にもだ」
「今の世の中、戦争は当然だとしたら勝てて良かったな」
「みんな無事だしね」
「カズ兄ぃはもう無茶は駄目だよ」
「まぁな。でも要塞は落とせて、結果、南部には良かったんだろ」
「それは間違い無いな」
「カズヒコは要塞は破壊派だったわね」
「ルンバキアにあの位置に要塞は必要無いだろ」
「まぁねー」
「でも破壊してもまた造られたら困るんじゃないの?」
「また造るのにどれだけの金と物資と労力が必要か、という事だよ」
「奴隷も足りてない現状、戦争で負けてヒトも減った。労働力の低下で生産力はぐっと落ちただろう。造り直すのにも何年も掛かろうな」
「秋の収穫にも響くでしょうし」
「造ったら造ったで国力も減ると」
「女性の社会進出が無い事や、異種族差別でそもそも生産力が低い。村ですら造れない奴等に要塞を造ろうとすれば国力が疲弊するのは間違い無いだろう」
「でも南部にとっては要塞が有れば有ったで良いんじゃないの?」
「南部はそもそも対北部に関しては専守防衛らしいからな。離れた所に要塞なんぞ必要無いと思うんだがなぁ」
「放っておいてもヒト族以外が脱出して来る。無理に攻める必要は無い」
「ジッとしてれば勝手に国力が落ちていくんですね」
「遠ければ補給も難儀でしょうしね」
「まぁ破壊はすまいよ」
「勿体ない?」
「大公に就いたばかりのセーラちゃんには要塞は象徴みたいなもんだろうしな」
「それは有るな。一般人にもグデッペン要塞の名は知れ渡っているからな」
「当分は要塞堅持ね」
「ドゥムルガの街に食料武器弾薬を届けよう」
「そうしましょう」
「直ぐにソルトレイク王国に旅立つの?」
「いや。飛行機の作業を進めたい。戦争で止まっていたからね」
「でもカズ兄ぃ。ワイバーンの骨で何作るの?」
「飛行機の翼を作ろうと思ってる」
『へぇ?』
「スキルで飛んでいたとはいえあの巨体だ。骨も軽くてかつ丈夫みたいだった」
『なるほどー』
「飛行機の素材には丁度良いわね」
「あぁ」
「じゃぁ翼を作る?」
「いやまだだ。5人用、出来れば8人用の機体を開発してそれから本番にしたい」
「って事は違う素材で実験機体を作るの?」
「あぁ。3人、いや5人用の機体を先ずは開発だな」
「またミニチュアで風洞実験?」
「基礎が大事なんですよ基礎が」
「悪魔の鰓を使った装備の改良もしたいんだけど」
「そうだったね。キルケさんに相談しよう」
「それでですよ」
「・・・ワイバーンの心臓ね」
『う~ん』
「まぁ食べてみよう。先ずはそこからだ」
僕達は台所で料理の準備をする。
ドンッっと竜の心臓をテーブルの真ん中に置いた。
あの巨体を支える心臓だ、かなり大きい。
「よーし!先ずは生で行ってみる」
『えー!?』
「取り敢えず食ったらパワーを得ると言うのを信じる事から始めると、先ず生か調理しても良いのかという2択になるだろう?」
「そうね」
「うん」
「そうですね」
「そうだな」
「血も薬になると言うらしいから血が滴るままガブッと行きたいが気分的に吐きそうなのでパスだ」
『異議無し』
「心臓を洗っててくれ」
「どこに行くの?」
「その辺走って来る。お腹空かせば何でもおいしく感じるだろう」
『・・・』
「意味あるのか分かんないけどあなたがそうしたいって言うんなら好きにしなさい」
「気分的な問題でね。じゃっ!」
しばらくして。
「はぁー。はぁー」
「帰って来たわ」
「はいどうぞ」
「刺身っぽくしたわ。薄いから食べ易いと思う」
「見た目は刺身なんかに及ばんが・・・見ない様にしよう、食べさせてくれ」
「私が!」
「た、頼むよ、サーヤ君」
「はい!」
「ちょっと待ってくれ。《殺菌》。よし、あーん」
パク
モグモグ・・・
う~ん。
なるほど。
《魔力検知》で肉片から魔力が体に吸収されてるのを感じるような感じないような。
「モグモグ。うん、まぁ、ステータスアップしたように思う」
『マジで!?』
「次に調理した物を頂こう」
「えぇ。シンプルにステーキよ」
「はい。あ~ん」
「あ、サーヤ君。これは見た目大丈夫だから自分で食べられるよ」
「えっ!?」
パク
モグモグ・・・
「モグモグ。なるほど。これもステータスアップを感じる。しかし生の方がより強く感じるな」
『えー!?』
「そんな・・・生で?」
「生を食べるの?」
「癖はあります?」
「結構な弾力だね。流石竜種。でもやっぱり洗っただけだから血の臭さは抜けてないね。逆に言えば血の臭さが強いから他の癖も分かんない感じ」
『なるほどー』
「塩とか、ドレッシングで誤魔化して食うのが良いんじゃないかな」
「はぁー。食べるわよ。食べただけでステータス上がるんだもの」
「そうだねぇ」
「食欲が・・・」
「私もだ」
刺身を大皿に乗せて各々のペースで摘まんでいた。
「そういえばカズ兄ぃ。最近動物狩っても血抜きしないよね?」モグモグ
「血抜きしていたのはバイヨ達が居た時だよ」モグモグ
「ふーん?」モグモグ
「僕達だけの時は血抜きしないんだ」モグモグ
「何で?」モグモグ
「する必要が無い」モグモグ
「何で?」モグモグ
「何で血抜きをするのか」モグモグ
「腐るから」モグモグ
「そうだ。でも僕の《殺菌》で腐らないから血抜きしなくて良い。収納袋も有るしね。それに血液は体で1番栄養が有るんだ。捨てるのは勿体ない」モグモグ
「へー」モグモグ
「血液に乗って体に必要な様々な栄養が体中にいきわたるんだ」モグモグ
「へー」モグモグ
「竜の血液が薬になるって言うのもその辺が理由かもね」モグモグ




