⑭-46-455
⑭-46-455
天幕に残ったルンバキア関係者。
「で、殿下」
レヴィが納剣して話しかける。
ポスッ
セーラは力なく椅子に着いた。
「だ、大丈夫です!あんな奴等居なくても私が殿下を御助け致します!」
「レヴィよ。ワシらじゃ駄目だったからマコル達に依頼を出したんじゃろうが」
「う」
「ふー。少々奴等に甘え過ぎましたなぁ」
「なっ!?カラッハ様、奴等がではなく、我々がですか!?」
「何度も言うが報酬を払っていないのは我々なんじゃ」
「しかし金などよりも大切な物があるでしょう!」
「マコルも言うとったが無給で働けるのか?」
「・・・」
「理想は立派じゃが結果が伴わんとな」
「・・・」
「民衆はいずれ言う事を聞かなくなる、か」
「信用が無くなればいずれそうなるでしょうな」
「ヴァルドゥレ卿」
「古来より民衆の反乱で国が亡びる例は枚挙に暇が有りません」
『・・・』
「国同士の戦争で滅んでも、本を正せば同様の理由で弱っていたといった事も」
「レヴィよ」
「・・・は」
「お主が冒険者を嫌うのは勝手じゃが、冒険者も貴族を嫌うのも道理が有るのじゃぞ」
「道理?」
「『新選組』と『7人のサムライ』が北部に抜けた原因は知っておるのか?」
「貴族に反抗したと」
「うむ」
「報酬にケチをつけて反抗して抜けたと」
「そうじゃ。そういう風に処理をされたのじゃ」
『!?』
「実際は、『新選組』は報酬の未払い、『7人のサムライ』に至ってはそれに加えて依頼者の貴族がメンバーの女子を手籠めにしてそれに反乱して抜けたのじゃ」
「何ですって!?」
「その女子は反乱の最中に死んだらしい。奴等は復讐の為に北に渡ったのよ」
「初めて聞いたわ!」
「ルンバキア公国のここ数年の混乱でそういう例があちこちに沸いておる。表に出んのは出ない様に細工されとるからじゃ」
『!?』
「マコルは駐屯地や要塞に潜入した。もしやその話を聞いたやも知れんなぁ」
『・・・』
「奴のメンバーへの想いは強い。異常にな。『7人のサムライ』の話を聞いたなら感化されるのは当然じゃろう」
「まさか北部に」
「いや、カラッハ。それは無いじゃろう。北部に家族を殺されておる」
「・・・でしたな」
「じゃが・・・ルンバキアにはもう・・・」
「・・・マコル」
セーラの膝の上の拳に雫が落ちた。
俺達はテントで荷造りをしていた。
荷造りと言っても普段から殆ど収納袋に入れていたから僅かだ。
そこにバイヨとジャック達が来た。
バイヨ「何が有ったんだい?」
「耳が早いな」
ジャック「そりゃぁあれだけ派手にやってりゃぁなぁ」
「公国が契約違反した上に報酬は払わないとさ」
『何だって!?』
「僕達は出て行く」
バイヨ「何が有ったんだい!?」
「悪いが守秘義務が有ってな」
バイヨ「契約違反されたのにかい?」
ジャック「ここ数日お前等のメンバーは3人しか駐屯地に居なかったがまさか」
「ジャック。根拠の無い推論は危ういぞ」
ジャック「はぁー。どうせそんな事だろうと思ったよ。しかしまさかグデッペン要塞もかよ!」
バイヨ「出て行くって、公国をかい?」
「よく分かったな」
ティア「あんだけ派手にやっちゃぁねぇ」
「貴族共に追われるかもしれんしな」
バイヨ「北部には行かないんだろ?」
「勿論だ」
カイル「じゃぁソルトレイク王国に来いよ。俺達も援軍が終われば帰るだろうしな」
「あぁ。それも考えてる」
カイル「そうか。じゃぁあっちで待ってるぞ」
「あぁ」
エマ 「しかしあんた達と連絡を取れなくなるねぇ」
「しばらくは公都オラキアのキルカ商会に厄介になる予定だ」
ティア「キルカ商会?」
「オラキアで素材を卸してる馴染みの商会だ」
バイヨ「そうかい。じゃぁ何か有ったらキルカ商会に連絡するよ」
「あぁ。そうしてくれ」
ミキ 「バイヨ達は?」
バイヨ「グデッペン要塞陥落の余韻に浸りたかったんだけどねぇ」
ティア「報酬が払われないと聞くとねぇ」
「僕達だけだと思うぞ。喧嘩したから」
エマ 「ならしばらく軍に付いてると思うけど」
「まぁ。また何処かで会えるさ」
バイヨ「そん時まで生きてるんだよ」
「あぁ、勿論だ。あっ、そうだ」
『ん?』
「ベドルバクラ兵に聞いたんだが『7人の侍』は死んだんだとさ」
お互いハグをして別れた。
女性陣はジョゼにもお別れをしていた。いつの間に仲良くなったんだ?
駐屯地を出て要塞に入った。
まだ駐屯地での話はここまで来ていないようだ。
北門塔に登って土嚢を回収、おまけで中に蓄えられていた燃料なんかを失敬する。
報酬が支払われなかったのだから貰っていく。
報酬としては全く足りないが、まぁしょうがない。
北門塔を使える状態にして近くの兵士に話し、要塞を出て行った。
ドドドドドドドドド
「このまま公都オラキアに向かうの!?」
「あぁ!指名手配されるかもしれん!急いで向かおう!」
ドドドドドドドドド
オラキアへの途上。
荷車の隅でジョゼが丸まっている。この揺れでよく眠れるな。
上空でレイヴが僕達の後を付いて来ている。
「喧嘩別れしちゃったけど、援助はどうするの!?」
「勿論継続していく!打倒北部の為にルンバキア公国が侵略されるのは不味い。それにもし侵略されても要人を南部に逃がす為にもネットワークは必要だ!」
「じゃぁキルカ商会はこのまま大きくしていくのね!」
「そうだ!」
「折角1億エナ払ったんだしねぇ!」
「開店早々、店を畳むのもキルケさんに悪いしな!」
「伝書鳩施設も作ったしな!当初の予定通り、バレンダル、公都ムルキア、オラキアの3点貿易でやって行こう!」
「次はソルトレイク王国ね!」
「店を出すの!?」
「金が足らんだろうな!」
「オラキアで1億も使っちゃったしね!」
「ソルトレイク王国は人口10万、20万とかだろ!?1億じゃぁ足らんだろうな!」
「こうなると無報酬は痛かったわね!」
「そーだろー!」
「もう過ぎた事だし忘れようよ!」
「「額がー!」」
「やはり達成したら、都度、貰った方が良いな!」
「まぁそれが普通なんだけどね!」
「3点貿易で儲けてラグリ商会でロンダリングして金を集めるのに集中しよう!」
『おー!』
ジョゼが日陰の中で片目を開けたがそのまままた瞑った。
駐屯中にジョゼが暑そうだったので木材で簡易な支柱を作り布でテントを作っていた。
そのテントの日陰で長閑に眠っている。
7月に入って大分暑くなってきたが草原は乾いた暑さだった。
前世の日本の暑さとは違い過ごし易い。
野営の夜には虫の鳴き声が響いて五月蠅い程だった。
第14章終了。
次回第15章は明後日17日からとなります。
以降、隔日投稿となります。




