⑭-39-448
⑭-39-448
「ブルーフ様!」
「何だ!」
「敵援軍現れました!」
「来たか!」
ザッザッザッザッザッザッザッ
盾を前面に押し出したベドルバクラ軍が北門にやって来た。
グデッペン要塞は通常の街とは違い、街としての機能や施設は少ない。
中央の大きな建物の周りに施設が固まっており、
通常の街なら街壁近くにまで建物が迫っているが、
グデッペン要塞は城壁近くに建物は無くテントが乱立しているだけだ。
その見晴らしが良い広場を中央からベドルバクラ軍がやって来る。
北門を守るルンバキア騎兵隊より遥かに人数が多い。
ましてここは要塞内、騎兵の機動力を生かす事が出来ない。
「苦戦は必至」
騎兵たちの頭に過る。
「全員下馬せよ!馬に乗ってても意味は無い!」
『おぉ!』
騎兵が馬を降りて愛馬を要塞内に走らせる。
「味方が来るまで耐えれば我等の勝ちぞ!」
『おぉ!』
「密集して隣と連携を取れ!」
『おぉ!』
「剣が折れても首を食い千切れ!建国王の下に参った時に顔を合わせられん無様な真似はするな!」
『おぉ!』
レヴィを中心にルンバキア騎兵が密集隊形を組んだ。
各人必死の形相だ。
死を覚悟している者も居るのだろう。
そこに盾隊が迫り来る。
騎兵の顔に冷や汗が流れ落ちる。
と、
ドォオオオン
「ぎゃぁあああ!」
盾隊数人が吹っ飛んだ。
「な、何だ!?」
レヴィが突然の事に放心した。
向かいのベドルバラ軍が叫ぶ。
「バリスタだ!」
「門塔頂上にバリスタだ!」
「バリスタ!?マコルか!」
カチカチカチカチカチ
「はぁ~今回は重労働ばっかりだなぁ」
「そうですね~」
カチン
「いきます!《強撃の一矢》!」
ドシュッ
グゥアアアン
『ぎゃぁあああ!』
鉄球が盾に当たってからも尚突き進んで進路上の数人を吹き飛ばした。
「ぃやっはー!」
サーヤが怖い。
「クソったれがー!バリスタだとー!」
「敵に使われてんぞー!」
「文句言っても始まんねーだろーが!」
「走れー!走って奴等と肉薄するんだー!」
「そうだ!そうすりゃぁバリスタも撃てねぇだろー!」
『うおおお!』
ドドドドドドドドド
盾隊が突撃を始める。
「来るぞ!」
『おぉ!』
騎兵たちとあと10m程という所で門塔屋上から盾隊に何かが落ちて来た。
ガチャン!
ガチャン!
「ぐわっ!?」
「何だ!?」
「水!?」
ガチャン!
ガチャン!
「いだっ!」
「あづっ!」
「いや!油だ!」
「油!?何で!?」
そう言って門塔屋上を見上げた兵士達。
そこには松明を掲げて笑っている男が手を振っていた。
その意図を一瞬にして悟った兵士達。
歩みが止まる。
「や、止めろ!」
「悪いな!臭いの嫌いなんだわ!綺麗にしてからまた来てくれ!」ポイッ
放物線を描きながら落ちて来る松明。
油を被った兵士達にはスローモーションに感じる程の時間を掛けて、
しかし一瞬で地上に落ちた松明は辺りの油に着火した。
ブゥワアアアアア
『ぎゃぁあああ!』
門塔には油壺が用意されていた。
2枚の落とし格子に挟まれた敵を焼き殺すつもりだったのか、
外から城壁に攻めて来る敵兵士に落とすつもりで門塔内に貯めていたのかは分からなかったが、結構な量置かれていた。
流石要塞。
有難く使わせてもらおう。
俺とサーヤは次々と油壺を放り投げていく。
ガチャン!
ガチャン!
ベドルバクラ軍の中央に炎が広がっていた。
炎の両脇を抜けてベドルバクラ軍がレヴィ達騎兵に襲い掛かる。
『おりゃあああ!』
『うらぁあああ!』
2カ所で戦端が開かれた。
「炎で正面からは敵は来れない!十分対処出来るぞ!臆するなぁ!」
『おぉ!』
「下はレヴィに任せよう!」
「はい!」
「俺達は城壁の敵を減らす!」
「了解!」
サーヤが撃ち、俺はその援護をしていた。
そして城壁の向こうに見えて来た集団が有った。
「グリフォンの旗!来たぁ!ファーダネさんだ!」
ドドドドドドドドド
「・・・ファーダネ閣下!北門見えてきました!」
「うむ!」
「・・・西に軍勢!クレティアン将軍と思われます!」
「うむ!」
「あっ!あれ!」
「「ん!?」」
「門塔の屋上!誰か手を振ってますよ!」
「「・・・」」
「「「マコルだ!」」」
北門塔から東寄りの城壁。
「おいぃぃぃ!また来やがるぞー!」
「今度は歩兵も居る!さっきより多いぞ!」
「東門攻めてた連中じゃねーのか!」
「あんな数に入られたら要塞も落ちるんじゃねーのか!」
「どーすんだよー!」
「ファーダネ、クレティアン将軍、北門に至る、と。じゃぁレイヴ、頼んだぞ!」
「クァー!」
「よーし!サーヤ!鉤縄だ!」
「はい!」
「お前はロープを伝って降りて来い!」
「はい!」
俺は門塔の胸壁の上に立った。
ドドドドドドドドド
「ファーダネ閣下!あれを!マコルを!」
「・・・壁の上に立った!?」
「何だ!何をするつもりだマコル!」
「とうっ!」
「「「飛んだぁ!?」」」




