⑭-38-447
⑭-38-447
ドドドドドドドドド
地上で北門を守るベドルバクラ軍兵士達。
門の向こうには敵の姿は見えない。
ただ地響きだけは聞こえる。
丘を登っているのだ。
連日の攻勢で軍は南門に集中していた。
そして今日、突然の東西門への攻撃に北門から援軍が割かれていた。
連日の撃退で余裕が油断に代わっていたのか、
完全に対応が後手に回ってしまっていた。
しかしそれは仕方がないとは言える。
籠城戦は籠城する側がアクションする側ではなくリアクションする側になるのは当然だからだ。
しかし悲惨なのは後手に回った一般兵士達だった。
ドドドドドドドドド
「見えた!」
「来たぞ!」
門の向こうの世界の地平線に騎兵隊が昇って来た。
「槍構えー!」
『うおおお!』
そして今まさに先頭の騎兵が門を抜けようとした時、
『!?』
今まで数m先に居ると思っていた騎兵達がいきなり目の前に現れた。
槍を突き刺すべく構えていた歩兵達は反射的に槍を繰り出してしまう。
しかし繰り出した槍はその騎兵を突き抜けても何の手応えも無かった。
まるで蜃気楼を突き刺したかのように。
「「「《ソニックブレード》!」」」
『ぎゃあああ!』
複数の真空波が歩兵達を襲う。
ドゴォオオオ
『ぎゃあああ!』
先頭の槍隊が真空波を受けて倒れた所に馬が突っ込んで来た。
《馬術》の乗った馬の突撃で次々に吹き飛ばされていく歩兵達。
突っ込んだ騎兵は外側外側に歩兵を押し込んで行く。
そうして新たな騎兵は騎兵が居ない中央に突撃。
そして外側に押し込みそれを繰り返しとうとう囲みを突破した。
突破した騎兵は敵の後ろに回り込む。
挟み撃ちになって陣形も崩れ数を減らしてゆく歩兵達。
やがて支えきれず逃げ出し始めた。
「上がれ上がれー!城壁を奪取するのだー!」
『うおおお!』
騎兵は周辺を確保しつつ一部が馬を降りて城壁に上り始めた。
レヴィアン・ブルーフが部下に語り掛ける。
「よーし。先ずは成功だな!」
「そうですね!」
「しかし城壁からの弓兵の攻撃が少なかったな」
「味方に当たるからでしょう」
「そうだ・・・な!?」
レヴィが城壁を見上げると弓兵は門塔の屋上を狙っている。
その屋上には2人の兵士が弓兵を射ていた。
「マコル・・・」
「よーし!北門は突破したようだぞ、サーヤ!」
「やりましたね!」
「このまま北門を維持だ!」
「はい!」
「クァー!」
「レイヴ!」
「グァ!」
「お前ホント良い所に来るな!天才かよ!」
「グゥ!」ニヤリ
「騎兵隊北門を確保。この手紙を託した!」
「クァ!」
「気を付けてな!」
「クァー!」
要塞を少し遠巻きに東から北に向かうファーダネ、西から北に向かうクレティアンからも北門城壁の異変が見て取れた。
ファーダネ 「争っているのは分かるが良く見えんな!」
クレティアン「しかし争っているという事は完全に負けてもいないという事だ!」
「「全員歩を早めろ!このまま雪崩れ込むのだー!」」
『『うおおお!』』
ワァーワァーワァーワァーワァー
「クァー!」
「騎兵隊!北門を確保!」
『おおぉ!』
「いけますぞ!フリーエ様!」
「うむうむ!」
「で、殿下!」
「何か!?」
「わ、私めにも出撃許可を!」
「狡いぞ!殿下!私にも!」
「私にも!」
「御黙りなさい!」
『きゅっ』
「作戦を今更変える事は出来ません!あなた達は本陣をしっかり守りなさい!それも務めですよ!」
『きゅ~』
「殿下!」
「何か!」
「『ワイルドキャット』が面会を求めております!」
「通しなさい!」
「はっ!」
「殿下!」
「マリア!」
「作戦は!」
「今の所成功よ!北門を奪取したわ!」
「私達も北門へ!マコル達の所に行かせてください!」
「許可します!マコル達と合流しなさい!」
「ありがとうございます!行くわよ!」
「うん!」
「おう!」
「全員無事に戻って来るのよ!」
「勿論ですよ!」
ベドルバクラ軍本陣。
「報告!」
「何だ!」
「北門突破されました!」
ダァアン!
総大将が机を叩いた。
「予備兵は!」
「編成に手間取り今向かっています!」
「クソっクソっクソっクソっ!このグデッペン要塞が落ちるものか!」
「如何されます!」
「突破されたとはいえ敵は騎兵隊のみだ!予備兵で押し戻せ!」
「ははっ!」
「うあっ!」
城壁の弓兵がサーヤに撃たれた。
俺はサーヤに飛んで来る矢を叩き落としている。
城壁では下から上って来る下馬したルンバキア騎兵とせめぎ合いになっていて、そこに門塔の屋上から矢が降って来るものだからベドルバクラ兵士も怒り心頭に発しているようだ。
「クソったれがっ!」
「鬱陶しい!」
「2人しか居ねぇのに!」
「降りて来て戦え!卑怯もんが!」
「降りて来い!ブッ殺してやる!」
「下で何か叫んでますよ!」
「卑怯もんって!同じ弓で戦ってんじゃん!お前等が上がって来いよ!」
「てめぇ!」
「ブッ殺す!」
「ほーらほらほら!おしーりぺーんぺーん!この的に当てられるかなぁー!」
『ブッ殺す!』
「尻文字書きまーす!何て書いたか当てられるかなー!?」
『撃て撃て撃てー!』
「ぎゃーっはっはっは!」バシバシ
「あの野郎!」
「ぜってぇー殺す!」
「なーっはっはっは!お待ちしーてまーすよー!」
ワァーワァーワァーワァーワァー
ルンバキア軍本陣。
「現在の状況はどうじゃ!」
「はっ!東門はファーダネ将軍が抜け北門に向かい、バルドル将軍が攻城中であります!」
「うむ!」
「西門は作戦通り全軍クレティアン将軍に率いられ北門に向かっております!」
「西は誰も居らんな!」
「はい!」
「よっしゃよっしゃ!南門は現状維持じゃ!」
「はっ!」
「作戦通りに動けー!悲願である要塞陥落までもう直ぐじゃぞー!」
『おぉ!』




