⑭-30-439
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ドドドドドドドドド
「どーすんのよ!?」
「サーヤ!合図をしたら《身体強化》だ!」
「は、はい!」
「ケセラはこのまま微速で進め!」
「分かった!」
「次に奴が人間を咥えるタイミングを狙う!」
『!?』
「どーすんのよ!?」
〈キョワアアアァァァ!〉
ゴォオオオオオ
《ぎゃあああ!》
ワイバーンは地表すれすれの低空飛行で口から炎を吐きながら飛んで行った。
炎に晒された人達が火達磨になって叫ぶ。
ワイバーンはまた上昇していった。
旋回してこちらに来るようだ。
「来そうだぞ!」
「だからどーすんのよ!?」
「ケセラ!奴の進路に合わせろ!」
「わ、分かったが!?」
「行け!今だ!」
ドドドドドドドドド
人の波を掻き分け掻き分け進み、前方上空からワイバーンが高度を下げて来ているのが見える。
「サーヤ!」
「《身体強化》!」
「俺を打ち上げろ!良いな!」
「は、はい!」
「ケセラ!俺を打ち上げたら回頭して進路をずらせ!」
「分かった!」
「ミキ!」
「何!?」
「もしもの時は後を頼んだ!」
「ちょ」
「マヌイ!」
「カズ兄ぃ!」
「タリルコルさんと仲良くな!」
「カズ「サーヤ!」」
俺は荷台でサーヤに向かって駆けより組んだ手を踏んで飛び上がる。
サーヤは俺をそのまま打ち上げた。
「カズ兄ぃ!」
『飛んだぁ!?』
フリーエ達にもワイバーンに向かって飛んでいくカズヒコの姿が見えた。
前方を見ると地上の人間を咥えようと地面低く飛ぶワイバーンが居る。
そこに俺が視界に入ったのだろう、
飲み込むかのように口を大きく開けるワイバーン。
「そらよ」
石灰弾を3個ほど口に投げ入れつつジェットパックの結晶魔石に魔力を送る。
フワリ
ほんの少しだけ高度を上げて食われる寸前でワイバーンの背中に回り込みつつハミ、ロープの轡をかませる。
ゴクン
突然口に入った物を思わず飲み込んだようだ。
「キョワアアアァァァ!」
ワイバーンは苦しみながら上昇していく。
「はっはっは!俺のキビダンゴは激辛だぜ!」
「グルァアアア!」
「はっはっは!火の玉吐き出すが胃腸は熱いのに慣れてないらしいな!」
「グボッグボォ!」
以前ドラゴンの頭部模型を見たが奥行きのあるものだった。
それもドラゴンが爬虫類っぽい所だな。
臼歯も無かったように思う。
ロープとは言え恐らく口角の轡は噛み切れないだろう。
ワイアーで作ってあるしな。
と言うよりも口角付近に歯は無かった気がする。
「グルバゥアアア!」
血を吐いた!
石灰弾の高熱で胃に穴でも開いたか?
ぐぅ・・・
じょ、上昇するな!するんじゃない!
「ギョワアアアァーアッアッア-!」
「《MRI》!」
やはり頭部の大きさに比べて脳の大きさはそれ程でもない。
しかしそれでも目を刺したとして解体ナイフじゃ脳にまで到達しないな。
「ふん!」
マチェーテで目を刺した。
「ブッギャアアア!」
メチャメチャに暴れる!
振り落とされないようにするので精一杯だ!
山刀から手を離し手綱を握りしめる。
とてもじゃないが手を離せない!
使うか迷ってる暇は無い。
「《雷撃》!」
マチェーテに雷を流す。
ジリィジジジジジ
ッパァン
目玉が破裂した。
マチェーテも破砕してどこかに飛んで行った。
ワイバーンの体から一気に力が抜け少し慣性のまま飛んだ後、
真っ逆様に墜落していく。
「おおおおおおお!」
『マコルぅ!!』
フリーエ達、
いやフリーエ達だけじゃなく戦場の両軍兵士やベドルバクラ軍総大将達までもがワイバーンと、竜と格闘していた人間との1匹と1人の戦いに我を忘れて見入っていた。
戦いと言うよりも人間が必死に竜にしがみついてるだけとしか見えていなかったが。
戦場の真っただ中に墜落して来る1匹と1人。
ズドォオオオオオオオン
敵味方問わず物音立てずに見入っていた為にシーンとした辺りに墜落音が響き渡った。
濛々と舞い上がった砂煙で墜落地点が隠される。
しばし固唾を飲んで風で流されてゆく砂埃とその発生地点を見つめる兵士達。
やがて晴れてきた煙の中、
片手の拳を天に掲げた男がワイバーンを踏みしめ立ち上がった。
「ルンバキア公国ヴォーレ大公が近衛騎士!ワイバーンを討ち取ったりぃー!」
『うおおおおお!』
ルンバキア兵が両拳を天に突き上げて吠える。
ベドルバクラ兵は声も出ない。
ルンバキア盾兵が剣で盾を打ち鳴らす。
戦場は悲鳴と救いを求める阿鼻叫喚の地獄から、
勝利と生への歓声のファンファーレが轟いた。
「マコル!」
「今じゃー!全軍突撃せぇー!」
『おおおおお!』
ドォオオオン
ドォオオオン
ドォオオオン
「・・・ファーダネ閣下!全軍突撃の合図です!」
「承ったぁー!者共ぉー!ドラゴンバスターに後れをとるなぁー!」
『おおおおお!』
「クレティアン様!」
「はーっはっはっは!竜騎兵の目の前でドラゴン退治とは!奴を死なせるなー!」
『おおおおお!』
「バルドル将軍!」
「奴は何者、いや!そんな事は今どうでも良い!者共!続けぇー!」
『おおおおお!』
ルンバキア兵が戦場に戻って走って行く。
全て同じ方向に向かって。
その勢いに気圧されベドルバクラ兵達は少し後退りをした後、
我先にと戦を放棄し始めた。
体調を崩してしまいました。
念の為に療養しようと思います。
ですので今週いっぱい投稿は出来ず、次回投稿は1月31日(月)の予定です。
2022.1.25




