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HappyHunting♡  作者: 六郎
第14章 ドゥムルガ戦役 (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
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ビョオオオオオオ


バタバタと幟がはためいている。


ドゥムルガ草原でルンバキア軍とベドルバクラ軍が南北に対峙していた。

両軍とも軍を先日と同じく3つに分けた。

しかしベドルバクラ軍は予備兵をその3つに吸収させ、全兵力を投入しているようだ。

僕達は中央軍背後の本陣のセーラの近くに配置されていた。

ヴォーレ大公たっての要望だそうだ。

その要望にバイヨ達とジャック達も滑り込ませた。

セーラの居る場所には天幕を張っていた。

駐屯地じゃなく戦場でテントを張るはあまり見ないのだそうだ。

通常総大将は馬上で全軍を睥睨する。

また兵士達も馬上の大将の様子を見て戦の機微を見るものらしい。

今回その見られ役は体の大きいバルドル将軍に任せる事になっている。

僕等と首脳陣は天幕に居た。

天幕と言っても天井だけのテントだ。

近衛騎士が天幕を囲っている。

ちびっ子騎士達も見える。

テントの下で立体模型を置いてみんなで囲っていた。


「駒を用意しました。駒は1つで512人。即ち1大隊を表しています」

「ふむふむ。色違いなんは敵味方という訳じゃな」

「その通りです」

「ふーむ。上から見ると言うのは分かり易くて宜しいですな」

「しかしこんな物からは戦の機微は分かりません!やはり実際に目にしない事には勝ち負けの分かれ目など捉えられませんぞ!」

「然様!このような玩具で戦を進めるは侮辱で御座る!」

「これは誰もが一目見て戦況を把握出来るようにと考えました。一部の将校だけの頭の中の考えだけだと全体に伝える事は難しいでしょう。先ず士官達に理解させる事が大事だと思います」

「その通りです。これだと初陣の私にも戦場の様子が分かります。例え馬に乗っていたとしても見えない部分は当然ありますし、一度に全体を見る事など不可能です。しかしこれなら私でも凡その事は想像出来ますね」

「ワシなど馬に乗っても見渡せんもんなぁ」

「僕のメンバーが戦場を望遠鏡で観察し、動きを僕に伝えて駒を動かします。勿論僕等は戦争は素人なので各軍からの伝令と照合して判断して下さい」

「うむ。そうしようかねぇ」

「しかし今までのやり方を変えれば混乱が生じます!」

「やり方を変えるのは南部だからこそでもあろう。獣人の大公殿下しかり、それこそ建国王しかりじゃ」

『むむむ・・・』

「イスカンダル陛下こそが変革の人で在らせられた。その子達である我々が変革を恐れては陛下に顔向け出来んわいな」

『・・・』

「フリーエ様。そろそろ配置に付きませんと」

「うむ。ではファーダネ将軍もクレティアン将軍も宜しゅうなぁ」

「「はっ」」




両軍が陣形やらを整え前衛が前進する。

ある一定の距離を開けた所で両軍停まった。

ベドルバクラ軍から1騎、前に出て来た。

剣を抜いて高く掲げる。


「富と名声を己の手で掴み取れー!」

『うおおおおお!』


騎兵が掲げていた剣を僕達に向かって振り下ろした。


ザッザッザッザッザッ


盾を持った歩兵を先頭に歩いてくる。

全軍ではなく前衛だけ歩いているのだろう。

遥か向こうには待機中の軍も見える。

やがて先日と同じ様な槍と盾の攻防が始まった。

俺も模型上の駒を動かすが大して動きは無い。

敵の半分はまだ投入されていないのだ。

全軍を動かしても戦うのは前に居る者達だけだ。

後ろに居る者はただ後ろに居るだけになる。

無駄に緊張感や疲労を与えるよりも後方で待機にしておいた方が良いのだろう。

味方からの伝令も多々走って来るが現状報告だけで特に変化は無い。

つまり互角の状況だ。


そして1時間程経った頃だろうか。

ベドルバクラ軍に動きが見られた。


「敵第2波確認!」

「来たかぁ!こちらも第2波出すのじゃ!」

「敵第2波中央にローブを着た集団を確認!何だろあれ!?」


高台に立って望遠鏡を覗きこんでいるミキが叫んだ。


「魔導士じゃ!魔導部隊じゃ!」


俺は色違いの駒を盤上に加える。

確かに中央に強い魔力を感じる。

しかし・・・


「フリーエさん。戦争における魔法使いの運用は!?」

「攻撃と防御!攻撃で盾隊を吹き飛ばし、相手の魔法攻撃を障壁で弾く!パーティ戦でも同様じゃが規模が違う!」

「つまりパーティ戦の延長と考えて良いんですね!?」

「うむ!大きくは外れとらん!」

「敵中央の魔導部隊の他に敵右翼にも魔法使いが居るようです!」

「何じゃとー!」

「マヤ!どうだ!?」

「うーん。格好は歩兵と変わんないよ!」

「セリーナ!」

「私にも同じ格好に見える!」

『うーむ』

「魔導士ではないのではないか!?」

「かも知れません!しかし魔法使いの可能性が高いと思われます!」

「かも知れないで軍を動かせるか!」

「軍の進退に冒険者風情が口を挟むな!」

「マコル!敵はどういう意図だと思うのです!」

『殿下!?』

「中央のローブの格好した魔法使いは囮!敵右翼の部隊が本命でしょう!」

「本命!?」

「攻撃部隊です!」

「フリーエ!」

「それが本当なら味方左翼の盾隊は潰される!魔導防御隊を回す!」

「冒険者の言を信用為さるのですか!」

「諜報索敵に優れた者の言を信じるんじゃ!」

「しかし先日潜入に失敗しておりますぞ!」

「潜入に失敗したのではない!潜入中に見破られたのじゃ!生きて情報を持ち帰っておる!そもそも駐屯地に潜入出来るモンが軍に居るんかー!」

『・・・』

「魔導防御隊主力を左翼に回せ!中央は多少薄くてよい!」

「はは!」

「フリーエさん!」

「何じゃ!」

「攻撃部隊主力も左翼に回しましょう!」

「!?」

「敵中央魔導隊は防御が主力の様です!つまり!」

「敵右翼は魔導防御が弱いと!?」

「はい!」

「それじゃと敵左翼を狙うのが良いのではないか!?」

「敵右翼に居る魔法使いも減らすんです!」

「なるほどのぉ!よーし!魔導攻撃隊主力を左翼に回せ!」

「はは!」




ザッザッザッザッザッ


ベドルバクラ軍第2波中央軍が同左右翼軍より突出して詰め寄って行く。

やがてルンバキア第2波中央軍から魔法が放たれるも盾隊の前と空中に現れた壁に霧散していく。

《バリア》《アクアウォール》《コントロールアース》。

それらの障壁により火の玉や火矢、石礫などが弾かれ、或いは吸収されている。

その様子を離れた位置から眺めていたベドルバクラ軍総大将。


「いよぉーし!かかったな!中央はそのまま攻撃を受けさせろ!」

「は!」

「右翼を進めて敵左翼盾隊を粉砕しろ!」

「はっ!」




ベドルバクラ軍右翼が中央軍と並ぶように進んでルンバキア左翼軍と槍と盾でやり合う距離になった。


「魔導隊!攻撃開始!」


一般の兵士と同じ様な兵装の男達から攻撃魔法が放たれた。

魔法はルンバキア軍の盾隊に向かって行くが、


バアアアンンン


『何!?』


現れた障壁に弾かれ消えていった。

完全に敵の虚を突いたと思っていた右翼軍は動揺する。


「魔導隊!攻撃開始!」


今度はルンバキア軍から魔法が放たれる。


ドオオオォォォン

『ぐあああ!』


火の玉が盾に当たり吹き飛ぶ者、

真空波や石礫で目が潰される者。

目や身体を負傷した者には影から伸びた手によって体を固定されてしまい、そこを槍で突かれる。

魔法の第1波の応酬はベドルバクラ軍に多数の被害を出した。


「馬鹿な!?一般兵に偽装していたのに何で!?」


ベドルバクラ軍魔導隊士官が疑問を叫ぶ。

ルンバキア軍魔導隊士官も叫ぶ。


「各自自由射撃!杖を持ってるのが魔導士だー!狙えー!」

『おおぉ!』


ドオオオォォォン


「隊長!こっちは《バリア》はおろか、《アクアウォール》持ちすら居ません!」

「読まれていたのか!?」

「奴等の魔法を防げません!どうしますか!」

「退けば魔法追撃を食らうだけだ!攻撃を続けるしかない!撃てー!」

『おおぉ!』




ベドルバクラ軍の魔法攻撃はルンバキア軍の魔法障壁に弾かれていく。

そしてルンバキア軍の魔法攻撃は防ぐ手段の乏しいベドルバクラ軍を着実に減らしていった。

僅か数mの間で魔法がぶつかり合いそのエネルギーは光となり音となり熱となって一帯を混乱の渦に巻き込んでいった。


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