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HappyHunting♡  作者: 六郎
第14章 ドゥムルガ戦役 (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
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手を傷口に当て血糊を確認する。

かなりの出血だ。

動くと余計に出血する。

激痛だ。

内臓の損傷も分からん。

兎に角奴を倒すのが先だ。




(殺れる)

(無詠唱にはビビったが俺のスキルは通用する)

(俺の固有魔法同様、奴のも何らかの固有魔法なんだろう)

(砂のせいではっきりと見てなかったが、《雷撃》と言っていた。《サンダーボルト》だろう)

(何故日本語なのかは分からんが、対集団広範囲攻撃の《ライトニング》より射程は極端に短く単体専用だが威力が高い)

(背後を取っての至近距離戦だったが奴は俺を捕捉出来ていなかった)

(気配察知系のスキルを無効化する霧だ。諜報してたんだから探索系のスキル持ちだ。これで奴は俺を索敵出来ない事が分かった)

(仲間の仇を取る!)


水魔法使いがカズヒコを回り込んで背後を取る。


(死ね!)


水魔法使いが剣を振りかぶって1歩踏み出した。


ガクッ


(な、何!?)


ズグッ


「ぐっ」


バックステップしたカズヒコは後ろ向きのまま相手に身体を預けながらマチェーテを突き刺した。


「馬鹿な・・・」

「悪いな。土魔法も使えるんだ」

「土魔法で何故・・・」

「歩く振動を感知出来る」

「・・・ごふっ」


水魔法使いは血を吐きながら倒れていった。




危なかった。

《罠》を掘っておいて良かった。


ガクッ


俺は膝をついた。

緊張が切れたら途端に体が言う事を聞かない。


「レイヴ!レイヴゥー!」

「クアー!」


レイヴが雨宿りをしていた木から飛んで来た。


「雨の中すまんが手紙をミキに届けてくれ」

「クア!」

「雨が降ってるとは言え上空には鷹が居るかもしれん。西に大きく迂回して行ってくれ。時間が掛かっても良い、確実に届けてくれ」

「クア!」

「頼んだ!」

「クアー!」


レイヴは飛んで行った。

さて、

収納袋から戦闘用バックパックを取り出して止血用の裁縫セットを出した。

手探りで傷を確認しながら縫っていく。


「くそっ!さっきので治癒ポーション使い切っちまうとは!」


余裕こいてまだ戦闘中だったにも関わらず使っちまうからだ。

油断したぁ。

調子に乗ってた。

エウベルトの時に反省してたが無詠唱、【ランク】Cになって浮かれてたかな。

ざまぁねぇ。

魔力は俺より強かったんだ、舐めちゃいけなかった。

いや、舐めてた訳じゃないが・・・まぁいい。

舐めようが舐めまいが結果的にこのざまだ。

無意識に舐めてたんだろう。


「ぐっ」


傷を縫い終わった。

取り敢えず内臓出血が無ければ直ぐには死なないだろう、後は時間との戦いだ。

出血多量で死ぬか、ミキ達が間に合うか。

雨で体温が下がる。

体温保持にエネルギーを余計に消費してしまうな、参った。

不安感が増していく。

せめて内臓の様子が分かれば・・・

そうだ、《EMP》を使って損傷個所を調べられないか。

前世で言う所の「MRI」だ。

いつも《魔力検知》で体内を調べていたし、《EMP》の情報を《EOM》で砂に投影していた。

前は城だったが今回は体内だ。

大して変わらんだろう。

《EMP》を傷の周りに限定する。


「《EMP》発動」


・・・

特にいつもと変わらんな。

《魔力検知》も意識してもう1度だ。


「《MRI(MagicalResonanceImaging)》発動」


よし!

体内の様子が分かる、おえぇ!

ぐろい!

前世で見た画像はコンピュータ処理されてたんだな、かなりグロい。

しかし立体的で把握し易い。

俺の脳内に浮かぶ映像の負傷個所を回転させながら色んな角度から見ている。

はっきりとは分からんが内臓は大丈夫のようだ。

後は助けが来るまでジッとしている事だ。

なるべく雨の当たらない木の下に移動してうつ伏せに寝る。

体温低下予防の為に敷物を敷きたいが戦闘用パックには入っていない。

今が初夏で良かった。

寒くは感じるが出血の所為だろう。

止血の為に石鹸の開発過程で出来たグリセリンを傷口に厚めに塗っておこう。

雨の水で溶けるが無いよりはましだろう。

彼女達が来るまで《偽装》して隠れていよう。

しかしもし彼女達が来た時に気を失って《偽装》が解かれていなかったら?

そもそも《偽装》してたらレイヴも俺を見付けられないだろう。

レイヴが来たら《EMP》で感知出来るようにしてそれから《偽装》を解こう。

それならレイヴも俺を見付けられるだろう。

それまで寝る事は許されんな・・・




「クアー!」

「レイヴが来たみたいね」

「こんな時間に来るなんて珍しいですね」

「定時連絡じゃないって事は何か重要な情報でも手に入れたのかな」

「かもしれんな」


バサバサバサッ


レイヴがテントの入り口に降り立つ。


「何々・・・「follow her」?」

「「「ん?」」」

「英語。私達の世界の言語よ」

「なるほど。暗号としては良いな。この世界の者達には分からないだろうし」

「知ってたら転生者かその関係者って事だね」

「それに血が付いてるわね」

「「「血?」」」

「・・・レイヴ。もしかしてこの血ってカズヒコの?」

「クアー!」

「「「「!?」」」」

「急いで支度して!」

「「「了解!」」」




ふっふっふ。

カラスに帰巣本能って有ったっけ?

《偽装》を解除する。


「《EMP》発動」


フウゥ・・・ゥゥン


それからしばらく定期的に《EMP》を発動していた。


「こっちよ!」

「クアー!」


バサバサバサ


レイヴが俺の下に舞い降りた。


「クアー!」

「カズヒコ!」

「カズ兄ぃ!」

「カズヒコ様!」

「カズヒコ!」

「やぁ・・・待ってたよ」

「大丈夫なの!?」

「背中をやられた・・・《治癒》を頼む」

「分かったわ!マヌイ!」

「うん!」


俺はそのままの姿勢で治癒を受ける。


「何が有ったの!?」

「潜入がバレて追われた」

「周囲には居ないわね!」

「逃げたよ。しかしその辺に『新選組』の4人が転がってる。回収してくれ」

「1人で倒したの!?」

「お陰でこの様だよ」

「無理しちゃ駄目だよぉ!」

「無理しなきゃ生き残れなかったんだよ」

「詳しい話は後よ!サーヤとケセラは死体を回収して!」

「はい!」

「分かった!」




俺が治癒を受けている間にサーヤとケセラは死体を回収した。

一般兵と魔物も見付けたものは回収したらしい。


「取り敢えず応急処置は終わったよ!」

「良いわ!後は馬車でやって頂戴!」

「うん!」

「サーヤ!カズヒコを背負って!」

「はい!」

「ケセラは後方を守って!」

「分かった!」

「馬車まで行くわよ!」




ドドドドドドド


馬車の荷台にうつ伏せになってマヌイの《治癒》を受けていた。


「オフロード馬車にしといて本当に良かったよ」

「傷に響くでしょうからね」

「少し眠るよ」

「そうしなさい」

「サーヤ」

「はい!カズヒコさん」

「輸液だ。帰ったら輸液をしてくれ」

「だ、大丈夫ですか!?」

「流石に輸血は出来ない。輸液は実験済みだ。血を失った、水分が足らん。やっておいてくれ」

「わ、分かりました!」

「頼んだよ」


俺は眠りに落ちた。


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