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HappyHunting♡  作者: 六郎
第14章 ドゥムルガ戦役 (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
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パチリ


俺は目が覚めた。


「うぅ~ん」

「ううぅ・・・」

「うあぁ・・・」


周りは怪我人だらけだ。

救護所に《偽装》して紛れ込んで今まで寝ていた。

戦争と昨夜のスケルトン襲来時に怪我した兵士達が一帯に寝ている。

ゾンビだと噛まれたりしたらゾンビになる場合も有るらしいが、スケルトンに襲われてもアンデッドにはならないらしい。

どうやら本当のようだ。

じゃないと襲われた奴等を看病なんかしないだろう。

まぁ、そう信じていたからこそここで寝ていたんだが。

俺は救護所を出て被害状況を確認して回る事にした。




「カズ兄ぃ、今頃どうしてるかなぁ」

「無事よ、きっと。カズヒコさんだもの」

「サーヤの言う通りよ。要塞からも帰って来たのよ」

「うん。信じて待とう」

「そうだねぇ。あっ、見っけ!」


マヌイが鉄球を拾い上げる。


「カズヒコ・・・」


ミキが北をずっと見つめていた。




スケルトンは生者に対する攻撃性を有しているらしい。

従って施設へのダメージはそんなに無いようだ。

怪我人は多いが、多いだけで死者は少ないようだった。

スケルトンは攻撃力も無い。骨だからな。

武器を持たないと人を殺すのも容易じゃないだろう。

それに比較的倒し易い魔物らしいからな。

ランクも”E”だし。

という所で本陣近くに来た。

中には強い魔力持ちは居ない。

しかし魔力反応が有る。

どうやらセッティングをしているようだ。

これから会議だろうか。

別の場所から本陣に忍び込んでそこらの荷物を抱えて大きな天幕に入る。

俺は中に居た連中の手伝いをしながらセッティングが終わりそうなタイミングで《偽装》しながら隠れた。

中で息を潜める事しばし。

・・・暇だ。

ジッとしてるのは苦痛なんだよな。

そうだ、万が一見付かっても良い様にマスク着けとくか。

ハーフじゃなくフルの能面で良いだろう。

あまり出番が無いから使ってやらないと。

ある時、寝てる時に着けてて起きた菊池君がビックリして蹴って以来あまり使わなくなったしな。

お、

強い魔力持ちの反応が外から近付いて来る。

やがて要塞で見た顔ぶれが天幕に入って来て各々席に座り始めた。

俺は隅の箱の後ろで息を潜めている。


「いやぁ、スケルトンとは全く。参りましたな」

「本当ですな。草原は奴等の領土なのだから管理ぐらいしておけと言いたい!」

「全く」


勝手に攻め込んできて勝手な言い草だ。

お前等の兵士達も結構混じってたぞ。


「それで被害の方は?昨夜は一応聞いたが、あくまで暫定だったのでな」

「死者が多少。怪我人もそれなりに」

「数が数でしたからな」

「夜も有って発見が遅れました。仕方ありますまい」

「食料が少し無くなってるとか」

「またか。どうせ昨夜のドサクサに紛れて徴兵された奴等がくすねたのだろう!」

「全く。下賤の者共はどう仕様も有りませんな」

「今後に支障はないのだな?」

「はっ。補給を早める必要は有りますが戦えない程ではありません」

「うむ」

「では昨夜の混乱もあり今後の方針をもう一度説明したい」

「足並みを揃える事が肝要ですからな」

「先ずは《鷹の目》持ちがヴォーレ大公を発見した」

「フリーエが総大将かと思いきや、その近くに近衛騎士に守られた少女を発見。騎士の格好をしてない事から高い確度で大公であると思われます」

「これは我が軍に好都合だ。先日即位したばかりの大公を捕らえるか殺せば此度の戦の勝敗は勿論、ルンバキア侵攻も容易くなるであろう」

「その件に関して我々の要望をお忘れなき様!」

「勿論リィ=イン教国への配慮は忘れてはおりませぬよ」

「獣人が大公などとは笑止千万!ベオグランデだけでなくルンバキアまでその様な汚らわしい、神を侮辱する行為に我等騎士団は神罰を持って臨む!」

「然様!しかるに因って我が騎士団での単独奇襲を承認されたし!」

「承認する。貴軍らの本陣奇襲が成功すれば我が軍の勝利は疑いも無い。期待している」

「我等には神の御加護が有る!必ず成功させて御覧に入れる!」

「であれば我々は敵の目を引き付ける為にも正攻法で昨日と同じ様に攻め立てる」

「数は勝っております。正攻法こそ王道」

「正面から当たってる間にテンプル騎士団が本陣を急襲。混乱した隙に全軍で押し込む」

「勝ちは疑いなし」

「勝った後はそのままドゥムルガの街へ」

「多少兵も居りましょうが、この数には問題ありますまい」

「ようやく奴隷を確保出来ますな」

「全く。我が領地でも困っておりましてな」

「労働力が足りません。かと言って奴隷が多くても今回の様にヒトを徴集すると留守が気になり申す」

「配分が難しいですな」

「地元の奴隷の有力者は捕らえているとはいえ、ですな」

「そう言えば”パノプティコン収容所”は大丈夫ですかな」

「ティラミルティ帝国に在るという、各国の亜人共の有力者を収容しているという施設ですな」

「”パノプティコン収容所”は問題無く運営されている。安心してくれて宜しい」

「帝国の将軍の口から聞けば安心ですな」

「殺すと逆に結束させて厄介ですからな」

「生かしておいて言う事を聞かせる方が有益でしょう」

「反乱でもされたら敵いませんからな」

「反乱者を処刑したら奴隷の数が減りますし」

「さりとて処刑せねば示しがつきませんしな」

「ままなりません」

「全く」


その後、会議は愚痴やら健康の話やら老後の話やら。

戦争とはあまり関係無いような気もする事を話してお開きになった。

いつの世もどこの世界も会議ってこんなものか。

勝った気で居るから話せたのだろうな。




「何ですって!マコルが潜入を!?」

「はい。事後報告となって申し訳ありませんが。何分、敵にもスケルトンが襲っているであろう状況は潜入にも好都合であり、かつ自ら申し出ましたので勝手ながら私の判断で許可をしました」

「しかし彼は要塞にも潜入し情報を得ましたし、昨日の戦いでもバリスタで私達を助けました!それにスケルトンでも!これ以上「殿下」」

「レヴィ」

「殿下。正に要塞にも潜入に成功しています。心配される必要はないかと」

「然様!仮に失敗して殺されても冒険者の1人が死んだだけの事。何も気にする必要はござらん」

「情報を得れば儲け物。失っても我等にさして影響はござらん」

「・・・」


セーラはテーブルの下で拳をきつく握っていた。


「はっはっは!しかしレヴィアン殿の申される通り、潜入に成功し情報を得られれば大きな功となりましょうな」

『・・・』


一部の者達の目の色が変わる。


「要塞潜入による情報収集、戦場での戦働き、スケルトン退治、そして此度の駐屯地潜入ですか。報酬が気になりますなぁ!はっはっは!」

『・・・』

「青の騎士がいたく御気に召されたようですね」

「ファーダネ閣下!冒険者としての今回の戦争後の報酬を考えると某も羨む程ですよ!はっはっは!」

『・・・』


クレティアンは考える。


(冒険者は卑しいと見下してるお前等だが、お前等も似たようなものだろうが)

(自分達の利益を優先して考えている事に変わりは無いだろう?)

(聞けば南の諸侯は参戦していないと聞く)

(お前等も嫌々此処に来てるんだろう?)

(大公の為、国の為。そんな事思ってもいないくせに)

(自分の領地さえ保証されれば良いのだ)

(見下してる冒険者が巨額の報酬を得られるのが我慢出来ないだけだろう)

(自分は何も出来ないくせに、他人の報酬にケチをつけたがる)

(それがお前達、神に選ばれた世襲貴族ってもんだろう)




今日はスケルトン騒動の後始末に終始したな。

戦争に関しては特に進展の様子は無い。

駐屯地を抜け出てレイヴに手紙を託す。




手紙を受け取ったミキ達がフリーエを訪ねる。

昨夜の騒動もあって衛兵は素直にフリーエに取り次いだ。

テントにいつものメンバーが並ぶ。


「マコルによると数日は戦争は無いようじゃが」

「スケルトンの被害も軽微ではないようですし」

「うむ」

「ではこの期間を利用して兵の休息を十分に取らせましょう」

「然様ですな」


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