表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HappyHunting♡  作者: 六郎
第14章 ドゥムルガ戦役 (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
430/706

⑭-21-430

⑭-21-430




『うわあああ!』


北のベドルバクラ軍の駐屯地では大きな混乱が起きていた。

駐屯地内にスケルトンが侵入していたのだ。

見張りが見付けた頃には数百のスケルトンが駐屯地間近に迫ってしまっていて撃退に間に合わなかった。

駐屯地内で個別に対処に当たっているとある場所で、


「うあああ!助けてくれぇ!」


ベドルバクラ軍兵士が尻もちをついた。

その男が向き合うのは剣を振りかざした骨だけになった元兵士。


「くっ!」


思わず目を瞑ってしまった生身の兵士。


ガシャッ


「えっ!?」


兵士が目を開くと槍を持った自分と同じ装備の兵士がスケルトンをブッ叩いていた。


「おらっ!」


ガラン


頭蓋骨が地面に叩きつけられる。


「大丈夫か!」

「あっ、あぁ!助かったぜ!」

「駐屯地の様子は!?」

「大混乱だ!数が多過ぎる!」


助けてくれた兵士が手を差し出して尻もちをついていた兵士がその手を取る。

引き上げられながら安堵の溜息をついたものの、目の前の兵士の挙動に表情が歪む。


「何やってるんだ!?」

「ん?魔石をね」

「んな事やってる場合かよ!」

「俺の街は貧乏だし、徴兵の給料じゃぁやってらんねーよ」

「ま、まぁ分かるけどよ!」

「それより本陣を案内してくれ」

「本陣!?なんでまた?」

「本陣が無事なら安心出来るだろ」

「そ、それもそうだな!よし!こっちだ!」




ふーむ。

流石に本陣は無事だな。

というより何の被害も出ていない。

ここまでスケルトンは来れてもいない様だ

確かにスケルトンは数が脅威なだけで強い訳じゃない。

組織的に動けばそれ程の危険も無く討伐出来るだろう。

ただ夜で発見が遅れた事、予想以上の数で手間取った事が問題だったのだろうか。

本陣は魔力が強い奴等がウヨウヨ居る。

幹部連中だな。

下手に手出ししない方が無難だ。

俺の任務は諜報。

情報収集だ。藪を突く様な真似はしない方が良いだろう。

本陣の場所は確かめたし少し駐屯地を見て回るか。




本陣とその付近は全く被害が無い。

駐屯地の中で火の手が上がってる所もあるが外縁部だ。

あの辺からスケルトンに侵入されたんだろう。

さっきから馬やラドニウスの移動が激しいな。

そうか、スケルトンに襲われない様に避難させているんだ。

生き物を襲うって言ってたからな。

動物も襲うんだろう。


カチカチカチ

ガスッ

ゴロン


顎を噛み鳴らしてたスケルトンの頭骨を吹っ飛ばした。

しかし体はまだ動いてるな。

おっと!?

頭は無いのに剣を振って来やがる。

剣を槍で叩き落として近付き鎖骨の上から手を入れ魔石を抜き取る。

骨だけの体なので丸見えだ。

魔石の位置はやはり心臓の逆。

魔石を抜き取られたスケルトンは全ての骨の結合力が無くなったのか、

ガラガラと音を立てて崩れていった。

なるほど。

骨を組み立てていたのも一種のスキルかな。

頭を失ってもまたくっ付くんだろう。

おっと。あれは食料庫じゃなかろうか。

流石に警備が厳重だ。

周りにスケルトンは・・・居ないな。

誘導せねばなるまい。


俺は少し離れた位置に居たスケルトンを複数誘き寄せて食料庫に走って行く。

慌てた様子で警備の兵士達に叫ぶ。


「ス、スケルトンだぁー!ここまで来たぞー!」

「何!皆の者!迎撃準備!」

『おう!』


警備兵がみんな集まって襲って来ようとするスケルトンに対する。

その隙に《偽装》、

食料貯蔵テントに潜り込む。

あれ、思った程じゃないな。

数千人の胃袋を満たすには少ないんじゃないか。

そう思いつつ収納袋にせっせと入れていく。

そうか、分散して貯蔵してるんだ。

1カ所に纏めて置いておくとこういう時に火事にでもなろうものなら全て失ってしまうからな。

なるほどなー、と思いながら収納していく。

あまり取り過ぎると大問題になるな。

収納袋のランクもCだし、あまり入らない。

ここはこれ位にして別の食料庫を探すか。

警備兵は・・・まだスケルトンと戦ってるな。

付近は・・・誰も居ない。

よし。

誰も見ていないだろう後方からテントを抜け出てまた違う施設に向かう。




セーラ達が大テントの下に集まっていた。


「ふぅ。皆の働きにより大量のスケルトンは討伐されました。礼を言います」

『ははっ』

「いやぁまさか戦に勝ったその夜に現れるとは!」

「全くですな!興を削ぐ無粋な輩共ですな!」

「しかし我が軍の働きで大きな被害も無さそうですし。良かった良かった!」

『はっはっは!』

(軍の働きって、あなた達が起きて来るまでに大方片付いてましたけどね)

(殿下)

「オホン。被害状況は?」

「今の所死者は1人も居ません」

「アンデッドだけに」

『はっはっは!』

『・・・』

「オホン。スケルトンは居なくなったのですか?」

「はい。現在斥候と冒険者に付近を捜索させていますが発見した報告は有りません」

「1匹居れば纏まっておる可能性があるからのぉ」

「それが”骨”ですなぁ」

『はっはっは!』

『・・・』

「それでは見張りを増やして今夜はもう休むとしましょう」

「はい。敵にも魔物は向かって行った様子。今日明日の会戦は無いでしょう」

「油断は出来ませんが休まなければならないのも事実。であれば交代で見張りと斥候を増やし休める時に休んでおきましょう」

「おぉ!流石殿下!まだ若いのに分かっていらっしゃる」

「正に仰る通り!ベドルバクラだけでなく魔物とも戦いましたからな!」

「然様!しっかりと休まねば!」




「スケルトンがここまで来てるぞー!」


1人の兵士が叫びながら食料庫に走り寄って来た。


「何!皆の者!出会え出会えー!」

『おぉ!』

「はぁはぁ、俺は息を整えてから向かう!俺に構わず先に行け!」

「良かろう!後でまた会おう!者共ー!いざー!」

『おぉ!』


俺はせっせと食料を収納していた。

こんなもんだろう。

あまり無くなったら大事になるだろうからな。

しかし流石に疲れたな。昼は戦争で夜はアンデッド。

凄く眠たいしここで無理をしてもな。

戦いなら無理も必要だろうが今はスパイだ。

用心深さが重要だろう。

よし、今夜の寝床を探そう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ