⑭-14-423
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「何じゃぁー!何が起きとるぅー!?」
ベドルバクラの盾隊が宙を舞っているのを見ていたフリーエ。
「フ、フリーエ様!左を!」
「左ぃー!?」
フリーエが部下に指された先に視線を転じると馬車に乗ったマコル達が見える。
そしてその馬車にはバリスタが今まさに放たれようとしていた。
バシュッ
ズガァーン!
『ぎゃあぁ!』
「バッ、バリスタじゃとぉー!?」
「ヒィーハァー!」
ミキが怖い。
「カズ兄ぃに「バリスタに《風載矢》を乗せる」って言われた時は乗るか不安だったけど乗っちゃったねぇ!」ビシュッ
話しつつ射るマヌイ。
「全くだ!やってみるもんだな!」ビシュッ
応えつつも射るケセラ。
カチカチカチカチカチ
ミキとサーヤでバリスタ次弾を装填している。
「バリスタで穴が開いた所に矢を放てよ!味方の盾隊の負担を軽減しろ!」
「「了解!」」
マヌイとケセラが応えた。
・・・カチン
「行くわよー!《風圧波》乗った《風載矢》!」
バシュッ
ズガァーン!
『ぎゃぁあ!』
「イエーッス!」
ミキが握り拳でガッツポーズだ。
吹っ飛んで出来た隙間にマヌイとケセラが矢を放つ。
冒険者連隊として左翼で後方待機していたバイヨ達やジャック達もカズヒコ等の様子を見ていた。
「バ、バリスタ!?」
「あんな物持ってきてたの!?」
「キルフォヴァでも出してくれてたらもっと楽出来たんじゃないのー!」
「何であんな物持ってんだよ!」
「ホントよ!」
「盾隊がブッ飛ばされてくぜ!やっちまえ!」
「エチル!マイン!ターニャ!頑張ってぇ!」
「相変わらず何かしでかす奴等だな!」
ズガァーン!
『ぎゃぁあ!』
「ラーン!あれは!?」
「バ、バリスタです!」
「バリスタ!?攻城兵器の!?」
「はい!」
「防衛兵器の!?」
「はい!」
「何で馬車に乗ってるの!?」
「イカレてるのでしょう!」
「あははは!彼等らしいわね!」
「はい!」
「「ほえ~」」
「スクルドもヒルダも参考にはするなよ!」
ズガァーン!
『ぎゃぁあ!』
「まぁーったく!バリスタなんぞ持っとるなんて聞いておらんぞい!」
「フリーエ様!この後の作戦はどうします!?」
「あ奴等の好きにさせぇー!バリスタの方が早そうじゃ!手間ぁ省いてくれたわー!」
「ははぁ!」
「おっと!」
飛んで来た矢を槍で叩き落とす。
「敵の矢は気にするな!俺が捌く!」
「「「「了解!」」」」
丘に登った弓兵は逆にベドルバクラ軍の弓兵にも狙われる事を意味した。
「マヌイとケセラは敵弓兵を狙え!」
「「了解!」」
「ミキとサーヤは引き続き敵盾隊を攻撃!」」
「「了解!」」
ベドルバクラ軍の盾兵がふと顔を上げる。
その視線の先には馬車に乗った1人の女。
バリスタを操作して丁度こちらに照準を定めたようだ。
「あ・・・」
ニヤリ
視線が合った女が不敵に笑う。
直後、盾兵の男は盾に爆発的な衝撃を受けて宙を飛んで行った。
ベドルバクラ中央軍は囲まれて矢を受け甚大なる被害を出していた。
しかしそれを知らない総大将は戸惑っていた。
「どうした!?何が起こっている!?」
中央軍の前線は窪地に入った為詳しい状況を本部からは見えず把握出来ていなかった。
ただ丘に登った弓兵に撃ち込まれているのは分かった。
平坦だと思っていた草原での思わぬ事態。
戦況の確認も出来ない為、手を打つ事も出来ないでいた。
「急ぎ状況を確認させろぉー!」
「ははぁ!」
ズガァーン!
『ぐぁああ!』
吹っ飛ぶ盾兵。
露わになる軽装槍兵。
穿たれた穴に殺到する矢。
ベドルバクラ中央軍最前線は混乱状態だった。
盾を構えても盾ごと持って行かれる。
盾の意味が無い現状、無力感を湛えていた。
彼等が生き残る道の1つは相手と密着する事だ。
密着すればバリスタの鉄球は味方への誤射を恐れて撃っては来ないだろう。
しかし相手の槍で阻まれる。
しかも数人で行っても意味は無い。
全体で行かねば各個撃破されるだけだ。
それを指示すべき士官は現状の把握と空いた穴の対処に忙殺されていた。
取り敢えず弓兵に指示したのだろう、
カズヒコ達に矢が集中して放たれていた。
「はっはっは!俺達は目立つからなぁ!」ビシッ
槍で迫り来る矢を叩き落としていた。
「大丈夫!?」
「はっはっは!《神経強化》持ってんですよ!任せん、さい!」ビシッ
馬車に立ってる上、バリスタも撃ってるんだ。
嫌でも目に付くだろうな。
しかし俺達を撃ってる分、味方への攻撃が減る。
悪い事ばかりでもない。
取り敢えず現状維持だな、ん!?あれは、
「おい!ミキ!あいつ!あの士官を狙え!」
「了解!《風載矢》!」
ズガァーン!
『ぐぁあ!』
「良い腕だ!敵士官も吹っ飛んだ!増々混乱するだろう!」




