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HappyHunting♡  作者: 六郎
第14章 ドゥムルガ戦役 (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
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⑭-13-422

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1人の大きな騎兵が前面に現れた。


『神は常に!我等と共に!』

『おー!』

ドンッ


ベドルバクラ軍兵士達が靴底を踏み鳴らす。


『神を恐れぬ愚か者共に天罰を!』

『おー!』

ドンッ

『神の尖兵に神の御加護を!』

『おー!』

ドンッ

『邪神の徒を滅ぼしてこの世に楽土を打ち建てるのだ!』

『うおー!』

ドンドンドンッ

『攻撃開始っ!』

『うおおおぉぉぉ!』


歩兵を先頭に歩いてくる。

盾を前面に押し出した歩兵だ。

ルンバキア軍は軍を3つに分けた。

即ち左右翼、そして中央軍。

それに対抗してベドルバクラ軍も3つに分けて今まさにそれぞれがぶつかろうとしていた。


〈弓構えぇー!〉


ルンバキア軍の士官が叫ぶ。

歩兵の後ろに居る弓兵隊が矢を番える。

味方ルンバキア歩兵は槍を立てずに倒している。

背後からの矢が槍に当たらないようにだ。


〈放てぇー!〉


シュシュシュシュシュシュシュシュシュ


無数の矢がルンバキア軍から放たれた。


カンコンカァン


矢は盾に弾かれ損害は微々たるもののようだ。

やがてルンバキア軍も盾を出してその後ろで槍を構えだした。

両軍とも前面に盾隊、その直後に槍隊を並べている。

やがて槍が届く距離まで近付いた両者は相手の槍を盾で防ぎつつ、盾の間から槍を繰り出して相手を攻撃する。

もうルンバキアの弓兵は矢を射れない。

乱立する味方の槍に当たってしまうからだ。

槍の高さを越えて撃ったとしても敵歩兵の頭上を越えていってしまう。

例え矢の落下地点に敵が居たとしても、山なりで撃った矢が届く頃には威力が殆ど無くなって被害を与えられない。

平坦な土地では正に数で押すのが正攻法だった。


「どうだい?撃てそうかい?」

「うーん。難しいわね。槍も邪魔だし、馬車に立ってるから少し高いとはいえ、狙えるのは頭か首までね」

「槍を越えて撃っても敵を飛び越えて誰も居ないしねぇ」


俺達は中央軍の弓兵隊の位置に居た。


「じゃぁやっぱり当初の予定通りか」

「軍隊なんだから当然でしょ」

「集団行動しないと」

「結果を出せば多少抜け駆けしても良いだろ?」

「まぁ確かに不文律でそういうのは有るが」

「目立ちたくないでしょ」

「まぁな。でも勝たなきゃいけない訳だし」

「左翼、右翼もぶつかりましたわ」

「本格的に始まったな」

「ぶつかるといっても、槍でつつき合いね」

「剣だと盾に届く前に槍で穴だらけだな。こういうのは時間が掛かるんだよ。根負けしたら負けだ」

「槍で如何に盾を崩すか、か」

「徴兵された者だと《盾術》や《槍術》は持っていないかもしれん。その辺で崩れる事もある。まぁ大概盾隊は軍属だが」

「なるほどな」

「兎に角隣同士での連携だ。隣の盾でお互いの隙を塞ぎ合う。連携が出来なかった所から崩れて行く」

「誰も死にたくないもんな」

「あぁ。殺し合いと言うよりも防ぎ合いと言った方が良いだろう」

「コイツの出番はまだまだって事だな」


ポンポンと、馬車に据えられていた布を被った物を叩く。




槍の突き合いが1時間も越えようとした時、中央軍が徐々に押され始めた。

中央軍を受け持つバルドル将軍の叱咤にも関わらずジリジリと後退していく。

前衛が後ろに少し退くと直後の者はそれ以上に退く。

それがドンドン後ろに波及していって大きな波となり遂に全体的な後退を余儀なくされていた。

開戦2時間も過ぎた頃には中央軍が後退しつつあるのが遠目でも分かった。


「よぉーし!この調子で中央を突破せよぉー!」


ベドルバクラ軍総大将が叫ぶ。


「押していますな!」

「凹凸陣になりつつありますぞ!」

「敵は人数が少ないのに逆V型の陣になってきました!」

「はーっはっはっは!このまま押し込んで崩壊させるのだー!」




ルンバキア中央軍の背後に待機していた弓兵隊も後退していた。

そして背後の窪地を過ぎて丘を登って行く。

弓兵隊は後退しつつ丘を登りながら左右に分かれて行った。

後退していたルンバキア軍前線と、押し込んでいたベドルバクラ軍が窪地に入った。


「よぉーし!合図じゃぁー!」

「ははっ!」


中央軍後方、丘の上で全体を見渡していた首脳陣の集団。

馬上のフリーエが叫んだ。


ドォーン!ドォーン!ドォーン!


「合図だぁー!槍を下せぇー!」

『おおぉ!』


バルドル将軍の命令に盾隊背後の槍隊が槍を立てずになるべく地面と水平になるようにする。


〈弓隊構えぇー!〉

「みんな出番だ!」

「「「「了解!」」」」


俺達も馬車に乗りつつ丘を登っていた。

左右に後方展開していた軍の左側に付いて移動していた。


「どうだ!?」

「見えるわ!」

「丘に登ったから打ち下ろしで腰まで見えるよ!」

「敵は窪地に居るから相対的に高さが生じたんだ!」

「敵盾隊じゃなく背後の槍隊を狙え!」

「「「「了解!」」」」

〈放てぇー!〉


シュシュシュシュシュシュシュシュシュ


「ぐあっ」

「うあっ」

「あつっ」


ベドルバクラ軍に矢の被害が出始める。


〈各自自由射撃ぃー!〉


シュシュシュシュシュシュシュシュシュ


「ケセラも《弓術》経験値獲得に頑張ってくれ給えよ!」

「おぉ!」


山なりではなく、打ち下ろしの十分威力の乗った矢に晒されたベドルバクラ軍。

盾隊の重装歩兵ではなくその背後の軽装歩兵が狙われていた。

実際、戦場の両軍の人数差はそれ程開いていなかった。

ベドルバクラ軍は予備兵を総大将付近に残していたのだ。

それ故にルンバキア軍は中央軍が押されても左翼、右翼の軍は持ち堪えられていた。

その左翼、右翼軍の後方の弓兵たちも、中央を押して距離が近くなったベドルバクラ軍に向けて射撃を開始していた。

前方180度から矢が撃ち込まれるベドルバクラ中央軍。

盾隊は盾で防げるのでまだしも、軽装歩兵の被害は時間が経つにつれ大きくなる一方だ。

そしてその盾隊も、


ズガァーン!


『ぎゃぁ!?』


ベドルバクラ軍の盾隊の何人かが空中に吹っ飛んだ。


『何だ!?』


前方の様子が分からないベドルバクラ中央軍中央付近から後ろ。

ただ悲鳴だけが響く様子に不安を隠せない。

いや、悲鳴だけではない、


ズガァーン!


『うわぁあ!』


また激しい衝撃音と共に盾隊の何人かが宙を舞った。


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