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HappyHunting♡  作者: 六郎
第14章 ドゥムルガ戦役 (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
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⑭-12-421

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僕達は急いで駐屯地に帰った。

セーラ達に報告だ。


『ベドルバクラ軍が動いた!?』

「はい」

「確認したのか!」

「はい」

「殿下!」

「えぇ!此方も準備を!」

「御待ち下さい!他の偵察兵にも確認をさせた方が!」

「そうですな。複数の確認が有った方が良いでしょう」

「分かりました。但し、準備は並行して行います」

「畏まりました」


慌てて駐屯地から騎馬が何騎か駆けて行った。

翌日の夕方、その騎馬が帰って来た。

情報の確認が取れたようでようやく翌朝になってドゥムルガ草原に向けて出発する事になった。

草原への道は狭く、大軍が移動するのに適していない。

発見から移動するまで時間が掛かり、更に時間を掛けながら移動しつつもベドルバクラ軍よりも早く草原に到着出来た。

草原の南側に野営をする。

そして明けたその日の夕方。

北側に砂塵が舞う中、ベドルバクラ軍が姿を現した。


ビョオオオオオオ


草原に風が吹く。

駐屯地の旗もバタバタとはためいていた。

ベドルバクラ軍を彼方に見据えながら僕等は佇んでいた。


「会戦ってやつだな」

「広ぉーい草原って、前世でも無かったわね」

「その場所に行く機会がね。特に僕達の故郷では」

「向こうに敵が見えるって変な気持ちね」

「今夜はこのまま寝るんだもんねぇ」

「夜襲などは大丈夫でしょうか」

「カズヒコが察知してくれるから大丈夫だろう」

「あぁ。感知範囲外だから入って来たら気付く。任せろ」

「はぁ~。戦争を避けようって言ってたのにね」

「しょうがない。そーゆー時代に来ちゃったんだ。そこは諦めようぜ」

「時代の流れに個人では抗えず、か」

「戦争を無くす為にセーラちゃんには勝ってもらわないと」

「無くなるの?」

「無理だろうな」

「えぇ!じゃぁ何で」

「戦争の頻度を抑えられればね」

「ここで痛撃を与えれば回復に時間が掛かって軍事行動は出来なくなる?」

「これだけの規模は近年稀にみるって言ってたぜ」

「回復も余計に掛かると」

「潜入して一般兵士に紛れて聞いたんだが、簡単で単純な重労働は奴隷にやらせているんだと」

「そうだ。獣人やドワーフやエルフにな」

「今じゃ逃亡が相次いで奴隷も少なくなってヒトもその労働をこなしているらしい」

「いい気味だよ!」

「そこに今回の大量動員だ。今街じゃ労働力が不足してるだろうな」

「なるほど。もし我々が勝てば戦死負傷で労働力は帰って来ず、更に落ちると」

「女性やヒト以外の種族の社会進出もある南部の方が明らかに回復速度は速いはずだ。益々南北格差が広がるだろう」

「南部が有利になるんだね」

「そうね」

「私達の通商同盟も回復に手を貸す訳だな」

「勿論よ」

「しかし物資も有限だしな」

「ん?」

「幾ら南部で物資をかき集めても程度は有るだろうし」

「そりゃぁね」

「タリルコルさんと村を作るって話したが」

「獣人のだね」

「あぁ。僕等で村を作るっていうのもアリかもしれんな」

「物資調達用のですか?」

「あぁ」

「以前、街を支配すると言っていたが」

「あぁ。経済的にな。それで食糧の増産をしても良いかもな」

「まぁ、先ずはノウハウを得る為にもタリルコルさんの村作りを援助すれば良いんじゃないかしら」

「そうだな」

「一杯やる事有るね」

「大変ですわ」

「しかしやりがいもある。敵の戦力を削ぐだけでなく、貧しい者達を助ける事でもある。騎士の頃よりも大きな気概を感じている」

「まぁ、そんなに気負わないで楽に行こうぜ。僕達の安心安全な老後の為に」

『はーい』

「おい!貴様達!敵を見てビビってる場合じゃない!殿下が御呼びだ!急いで集まらんか!」

『・・・』

「段々イラついて来たわ」

「何であんなに偉そうなんだろうねぇ」

「冒険者って事も有るのでしょうけど」

「嫉妬かな」

『嫉妬?』

「あいつはバグレスク大臣を守ってただろ」

「えぇ」

「近衛騎士として大臣を守ったという立派な働きをした。しかしそれ以上の働きをする奴等が現れた。しかも冒険者だ。さらに大公と仲が良い。おまけにフリーエさんともだ」

「はぁー。女々しいわね」

「女々しいって言葉自体、ハラスメントになんない?」

『うーん』

「勝てるのは近衛騎士という身分しかないという訳ですね」

「別にルンバキアの国民じゃないから従う必要無いんだけどね」

「でも今は雇われの身よ」

「だな」

「早くせんか!」

『はぁ~い』




テントで作戦会議だ。

僕等も護衛として呼ばれて隅で待機していた。


「いつもならば初戦は被害を出さんように様子見で戦って来たが、今回はその裏をかき相手の戦力を削ぎたい」

「しかし相手は7000。真面にぶつかるのは不味いでしょう」

「その通りじゃファーダネ将軍」

「では策が?」

「今回マコル達が作ってくれた立体模型を調べると確かに周囲の状況と一致しておる事が分かった。従ってこの立体模型を基に作戦を立てる事にした」

「一冒険者をそこまで信用するのは大丈夫でしょうか」

「立体模型に関しては実地に確かめたで大丈夫じゃ。安心して良い」

「してその策とは」

「既に仕込みは終わっておる。明日の開戦を待つばかりじゃ」

『おぉ!』

「しかし明日来ますかな」

「来る。奴等も時間的に余裕は無い。事ここに至れば速やかな決戦を挑んで来るであろう」

「時間的な余裕?」

「報告書によると北部国内は深刻な労働力不足に陥っておるそうじゃ」

「長い間留守には出来ませんな」

「加えて遠征をしておる手前、補給の問題もある」

「大軍ですからな。大量に消費するでしょう」

「つまりそれだけの労働力を連れて来ているという事。秋の収穫にも響きましょう」

「その分は奴隷に向かう」

「重労働に耐え切れず奴隷の逃亡が加速すると」

「我等に有利ですな」

「しかし仕込みというのは?」

「うむ。仕込みは―――」




「何だあいつ等の陣形は。真面に我等とぶつかる気か?」


ベドルバクラ軍総大将が訝しむ。


ドン!

ドン!

ドンドン!


両軍の陣太鼓が鳴って陣形を作っていっていた。

総大将からみたルンバキア軍は真正面から自分達に対峙する形となっている。


「まぁ人数は我等が圧倒的。小細工など効かぬと思っておるのでしょう」

「然様然様。寧ろ南の軟弱者が真面に対するとは、褒めてやろうではありませんか」

「それもそうですな!ではこのまま一捻りにしてやりましょうぞ」

「然り。いつもなら様子見の初戦もこの人数差なら押し切れるやも知れませぬ」

「では此方の陣形を急ぎましょう」




「マコルよ。お主達も弓兵隊に入っておくれでないかい」

「願ったりですよ」

「ほぉ」

「歩兵として戦いたくはなかったので」

「ヒェッヒェッヒェッ。それも期待しておったんじゃがなぁ」

「勘弁して下さい。キルフォヴァはもう懲り懲りですよ」

「ヒェッヒェッヒェッ。あぁならんようにせんとなぁ」

「馬車の使用許可をください」

「良かろう。より高さが出るじゃろう」

「ありがとうございます」




両軍配置も完了し睨み合う時間が過ぎる。

総大将であるセーラは最後尾で馬に乗って戦場に臨んでいた。

ドゥムルガ戦役の戦端が開かれようとしていた。


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