⑭-06-415
⑭-06-415
「7000でドゥムルガ草原に・・・ですか」
「定石ですね」
「えぇ」
「数で圧倒する。これまた定石」
「えぇ」
「そろそろマコルを引き上げさせた方が宜しいのでは」
「・・・そうね。戦場がドゥムルガ草原ならもう良いでしょう」
「はい」
ミキ 「バイヨ!」
バイヨ「やぁ!久しぶり」
ミキ 「っても2カ月くらいよ」
ティア「まだそんなもん?」
エマ 「あれ、マコルは?」
ミキ 「えぇ、今任務で居ないの」
ティア「そう。元気だった?」
ミキ 「お陰様でね。そっちは?」
ティア「こっちも特に問題無かったんだけどねぇ」
エマ 「キルフォヴァはね」
バイヨ「今度はドゥムルガときた」
ミキ 「そうね」
ティア「じゃぁマリア達も参加するのね」
ミキ 「えぇ。あまり乗り気じゃなかったんだけど」
ティア「相変わらずね」
エマ 「今までどうしてたの?」
ミキ 「公都オラキアに居たわ」
ティア「そうだったの!てっきりベルバキア公国公都ムルキアに居たのだとばっかり」
ミキ 「色々有ったのよ・・・」
エマ 「そう。なんか疲れてない?」
ミキ 「気疲れね。今までリーダーはマコルに任せてたから」
エマ 「あははは」
ミキ 「相変わらず3人?」
バイヨ「あぁ。今までもやってこれたしね」
ミキ 「変に弄るより良いかもね」
ティア「えぇ。オラキアは大変だったんじゃない?」
ミキ 「そう・・・でもないわよ。反乱は城だけで市街には殆ど被害無かったらしいから」
エマ 「そう。じゃぁ混乱もそんなに?」
ミキ 「えぇ。出発する時声援が凄かったわ」
バイヨ「北部とだからね。そうだろうよ」
ティア「兵舎なの?」
ミキ 「そうよ」
ティア「じゃぁ一緒に夕食食べましょうよ」
ミキ 「良いわ」
帰れ、か。
このまま潜入し続けて情報を送ってても良いんだが菊池君達が心配だ。
そろそろ戻った方が良いだろう。
だが問題はどうやって戻るか。
つまり、
どうやって門を開けるか、だ。
どうやらこれ以上の増援は無いらしい。
門が開く事はあんまり無いだろう・・・輸送隊ぐらいか。
ふと視線の先に4人の歩兵が門に向かっている。これは。
4人に向かって走る。
「何だお前は」
「はいぃ。罰として先輩方のぉ仕事を見ておけとぉ言われましてぇ!」
「はっはっは。そうか。良いだろう付いて来い」
「上下関係を叩き込んでやるからな。覚悟しろ」
「はいぃ!」
『はっはっは!』
4人と共に門を抜け外に出たのだった。
「食料を受け取りました」
「うむ」
カラッハが果物をフリーエに渡した。
「結構溜まっとるのぉ」モシャモシャ
「報酬ですな」
「うむ」モシャモシャ
「待たせておけば宜しいではありませんか!」
「レヴィ・・・」
「冒険者などにそれ程気を使われるのが私には分かりません!」
「ふーむ」モシャモシャ
「お前は聞いていないのか。『フォー・キングス』と《爆鎖》の事を」
「聞いております。十分に役に立った。それだけです」
「・・・はぁ」
「レヴィや」
「はい」
「『フォー・キングス』の事は知っておるかぇ」
「えぇ。南部を裏切って北部に走った卑しい冒険者です!」
「そうじゃ。何で北部に行ったんじゃろうの」
「金ですよ!金!卑しい奴等だ」
「今『ワイルドキャット』にも報酬を払っとらんのぉ」
「!?ま、まさか奴等も北部に!?」
「冒険者は使い潰して当然。そうやって嫌気がさして北部に走ったのかもなぁ」
「・・・」
「あ奴等は騎士になれる程の実力の持ち主じゃ。それは認めよう?」
「・・・はい」
「しかし騎士になる気は無いじゃろう」
「はい」
「皆が皆貴族になりたいとは思わんし、皆が皆国の為に命を懸けようとは思わん」
「・・・」
「お前の基準だけで人を量る時、その程度の人じゃと量られるぞ」
「しかし!国が無ければ」
「国が無くてもあ奴等は生きていけるよ。それこそベルバキアやソルスキアでな」
「・・・」
「ルボアール王国でも大丈夫じゃろぅ」モシャモシャ
「殿下を護衛してソルスキア王国まで行き、援軍を伴って反乱を鎮め殿下の即位を助けた。報酬後払いでだ。これは彼らの善意によって為されたのだ」
「・・・」
「もしお前の言う騎士の誇りが有るならば、報酬を用意するのが貴族たるべき者ではないのか」
「・・・」
「その善意をお前の言動は踏みにじっているのだ」
「う」
「反乱の詳細が伝わっておらんから分からんが。あ奴等活躍しとらんとえぇんじゃがのぉ」
「これ以上大きい貸しは怖いですな」
「北部は嫌いなようじゃから走る事は無いとは思うが」モシャモシャ
「ソルトレイク王国にでも行かれるとそのまま居付きそうですね」
「金が有るからのぉ」モシャモシャ
「ようやく春が来たと思いましたが」
「春の嵐か」モシャモシャ
バリバリバリバリィ
森の中に閃光が走った。
「森の偵察をするにはまだ早かったな。さてと」
俺の足元には4つの死体が転がっていた。
収納袋に入れる。
手紙をレイヴに託す。
「じゃぁ菊池君に渡してくれ」
「クァ」
そのまま森を急いだ。
夜。
テントの中でセーラは黒猫を撫でながらオルゴールを聞いていた。
「いよいよ明日、ドゥムルガに到着致しますな」
「えぇ」
「ニャウ」
「この人数を街には収納出来ませんので街の北側で野営致します」
「はい」
「・・・殿下・・・お休みなされませ」
「・・・えぇ」
「クアー」
1匹のカラスが宿舎の窓辺に止まった。
「あれ!?レイヴ!」
「あっ!ホントだ!」
「ミキ姉ぇ。入れようよ」
窓を開けるとレイヴが部屋に入って来た。
「何々。ドゥムルガ草原でピクニックしよう・・・だって」
「カズ兄ぃだね」
「ドゥムルガ草原?」
「大丈夫だ。私が案内出来る」
「じゃぁ明日の朝に出発しましょう」
「「「了解」」」
翌朝。
「流石、速いな」
草原の彼方に馬車が走ってるのが見えた。
ドドドドドドドドド
草原の中1人歩いている俺を見付けるのは容易かったのだろう、一目散に走って来る。
みんな手を振っている。
俺も振り返した。
そういえば離れたのは数日間だったがこんなに離れたのは初めてだったかも知れない。
やがて馬車が俺の近くに停まった。
「無事だった!?」
「あぁ。そっちも元気そうだね」
「怪我無い!?」
「あぁ。かすり傷一つ無いよ」
「お腹空いてませんか!?」
「あぁ。ベドルバクラの飯は不味くてな」
「帰ってゆっくりしよう!」
「そうだね」
俺は馬車に揺られながら眠りに落ちた。




