⑭-04-413
⑭-04-413
夜。
俺の用意したお茶を飲んで同室の全員は鼾をかいていた。
さてと。
俺はテントを抜け出て闇に紛れながら要塞内を調べる事にした。
街と言うよりも駐屯地だな。
通常こんなに大勢の人間はいないのだろう。
こういう戦争で数が膨らんだ時にテントで収容するのだろう。
その為、街の施設は少ない。
テント用の空間として開けられているのだろう。
その方が建築するより安上がりだろうからだ。
要塞の真ん中に一際大きな建物が有る。
魔力の強い反応もそこに集中している。
恐らく兵舎、指令室。
そういったものが集中しているのだろう。
先ずは街壁に沿って調べて回る。
壁は高い。
流石要塞。
北門に来た。
今日、北門から入って来て分かったが、門は落とし格子だ、鉄製の。
流石要塞。
門の上には門塔がある。
門塔の中を視ると塔の中に落とし格子を上下動させる為の歯車が設置されている。
門塔への入り口は城壁上の左右2か所。
それに狭い、1人通れるかだ。その辺は八角塔と一緒だな。防御の為だろう。
今落とされている格子は2枚。
内と外。
内外の格子の間に挟まったら上の門塔から攻撃されるのだろう。
格子付近の地面は石畳だ。
土魔法で掘って格子の下を潜り抜けられない為だろう。
流石要塞。
取り敢えず壁を回ってみた。
キルフォヴァでも有ったが八角塔はここでは単なる四角の塔だった。
八角だったのは八神教に関係あるからだったのだろうか。
今日はこんな所か。
ピュイ
バサバサバサ
笛に呼ばれレイヴが飛んで来た。
ホイッスルを改造して喧しくない様に作り直した物だ。
レイヴに今日の情報を託した。
「カラスは昼行性だからな。夜が明けたらセーラの所まで頼むよ」
「クァ」
「セーラの後は菊池君に顔を見せてくれ。俺の無事も分かるだろう」
「クァ」
「じゃぁお休み、レイヴ」
「グゥー」
翌昼前。
「殿下!殿下!」
「どうしました、ラーン」
「レイヴだと思われるカラスが一直線にこちらに向かって来ます!」
「何ですって!」
バッサバサバサ
「レイヴ!」
「クァー」
馬に乗って進むままのラーンの腕に止まる。
手紙を先ずセーラに渡したラーン。
「それで何と!?」
「ベドルバクラ本隊は5000人だそうです!」
「5000!?」
「それにバウガルディ王国と神聖リィ=イン教国、更にティラミルティ帝国からも援軍が出ているようだと」
「!?3カ国から援軍!?何と!」
「殿下!その情報は本当でしょうか!」
近衛騎士が煩い。
「どういう事でしょう」
「速過ぎます!情報を得るのが速過ぎます!」
「あの馬車を見たでしょう」
「ドゥムルガの街までは行けたとしてもベドルバクラ領に入れるとはとても思えませぬ!」
「いいえ!マコルの情報収集力は確かです!この情報を皆に共有なさい!」
「か、畏まりました!」
近衛騎士が指示を出し近くの伝達騎兵が走る。
「本隊で5000。援軍を入れるとそれ以上に」
「そうですね」
「大戦となりましたな」
「えぇ・・・」
その日の夕方前。
「!?レイヴよ!」
『え!』
ミキ達は村の家から飛び出した。
レイヴが夕陽を背に飛んで来るのが見えた。
『レイヴー!』
「クアー!」
バサバサバサ
「あ、手紙は無いわね」
「セーラ様が取ったんじゃないのかな?」
「そうか。そうなの?」
「クァ」
「じゃぁ情報は渡ったって事ね」
「クァ」
「カズヒコさんも無事という事ですね」
「えぇ」
「流石カズ兄ぃ!」
「うんうん。先ずは良かった」
翌朝。
俺は要塞の中をぶらぶらしている。
仕事している風に見せかけつつのぶらぶら、レベル高いな。
幼稚園での演劇発表会で評判だった俺の演技を見るが良い、いや、見るな。
俺を見るんじゃない。
こういうのはコソコソしてるよりも堂々としてる方が良い。
今日は中央の建物を捜索しよう。
先ずは厨房に忍び込もうとしたがチェックが厳しい。
毒などを警戒しているのだろう。
これは掃除や雑用だな。してるフリをしつつ探ろう。
窓を拭きつつ部屋から部屋へ。
特にめぼしい物は無い。
部屋の中に有った物を抱えて更に別の部屋へ。
そんな事をしてる内に要塞内が騒がしくなった。
《魔力探知》を広げると軍勢が要塞の外からこっちに向かって来ている。
援軍だろう。
やがて要塞に入って来た。
要塞内から歓声が上がっている。
俺も外に出て見物していた。
近くに居た兵士に尋ねる。
「どこの軍だい?」
「知らねぇのか。バウガルディ王国軍だ」
「へぇ」
「兵500を率いて来たってよ」
「へぇ!」
「冒険者も何組か来てるな。おっ!あれが『新選組』だ」
「・・・ん!?」
「『新選組』。聞いたことねぇのか。バウガルディお抱えの冒険者パーティだ」
「へ、へー」
「リーダーは変わった名だったな」
「何て名前ですか」
「確か・・・コンド、コンド、コンド・・・」
「近藤勇!?」
「そうだ!コンドウ・イサミ!知ってるじゃねぇか」
「たた、確かに変わった名前ですね」
「だろう。それも有って覚えちまうのよ。4人共同じ民族だろうしな」
「な、なるほろー」
(『フォー・キングス』パターンか。確かに俺達と同じくらいの魔力の強さだ。いや、それ以上か)
「明日には神聖リィ=イン教国とティラミルティ帝国からも援軍が来るぜ」
「忙しくなりますね」
「頼もしいこったよ」
夕方。
「殿下!レイヴが来ました!」
「そう!」
・・・・・・・・・・
「バウガルディ王国500人ですって」
「500ですか」
「あと『シンセングミ』ってあるけど、これは?」
「『新選組』!?バウガルディの冒険者です!『フォー・キングス』に匹敵すると言う!」
「まぁ!」
「バウガルディも本気ですな」
「そう・・・」




