⑭-03-412
⑭-03-412
「見えたぞ!」
「あれか。結構居ない?」
「あぁ。大規模動員というのはホントだったみたいだな」
「よーし。少し戻ってくれ」
「うん」
少し引き返した。
「あの森の中の開けた場所にパラシュート降下する」
「はぁ!?どういう事だ!?」
「グデッペン要塞に潜入して情報収集する」
「グデッペン要塞に潜入!?正気か!?」
「あぁ、菊池君達によろしく伝えてくれ」
「いや待て!」
「レイヴも連れて行く。情報は随時伝える」
「クァ」
「待て!危険過ぎる!」
「お前達はこの戦に参戦する時約束したよな」
「約束!?」
「俺の命令を聞くと。これは命令だ」
「うっ!」
「お前達はフリーエさんと合流しろ」
「うぅ」
「いいな」
「分かった。無事に帰って来てくれよ!」
「当り前だろ。命に替えても何てセリフ、俺が吐くとでも思ってるのか」
「えー!」
「じゃぁな」
そう言って小窓を開けてレイヴを外に出し俺もヌルリと湯舟に入る様に機外に出た。
ビョオオオオオオオオオ
くおおおぉぉぉ!
風圧が凄い。
体を水平に維持して落下速度を緩める。
パラシュートを開いた。
パラシュート降下しながら飛行機を見ると南に向かったようだ。
黒竜号が飛んで行く。
しばらく見送った後森の開けた場所に無事、着地した。
パラシュートを素早く回収して収納袋に入れる。ランクCの収納袋の方だ。
「よし。レイヴはしばらくグデッペン要塞付近に潜んでてくれ」
「クァ」
「笛で呼んだら来てくれ」
「クァ」
返事をしてレイヴは飛んで行った。
「さてと」
ザッザッザッザッザッザッザッ
ベドルバクラ軍が行軍している。
1人の兵士が列から離れようとしていた。
「おい!どこへ行くんだ!?」
「小便だよ!」
「早く戻って来いよ!」
「あいよー!」
そう言って森に消えた兵士。
しばらくして兵士が森から出て来た。
さっき離れた集団の後方に戻って来た。
「小便か」
「そうだ」
「森じゃなくその辺ですりゃぁ良かろうに」
「見られながらだと出ねぇんだよ」
「ははっ!そんなタマかよ」
「緊張ぉーしててな。何せこんな大軍だ」
「まぁなぁー。上の連中も気合入ってるって話だしなぁ」
「そうなのか?」
「あぁ。何でもこの日の為に色々準備して来たっつー話さ」
「へー」
「それにうちだけじゃなくて東隣のバウガルディ王国と西隣の神聖リィ=イン教国から援軍が来てるって話さ」
「援軍!?」
「あぁ。最後にティラミルティ帝国からもな」
「!?」
「4カ国連合軍だ。てーしたもんだろ」
「・・・あぁ」
「ドゥムルガ攻略して念願のバルキア平原征服への試金石だとさ」
「なるほどねー」
ザッザッザッザッザッザッザッ
その後軍勢はグデッペン要塞に入って行った。
「「「グデッペン要塞に潜入した!?」」」
「そうなのだ」
「どうして止めなかったの!ケセラ!」
「サーヤ。命令だと言われて、この戦争に参加する時に私達に約束しただろって」
「・・・そう」
「・・・まぁ、あの人がバレるとは思わないし」
「そうだよね。カズ兄ぃなら大丈夫だよ」
「・・・えぇ」
「カズヒコはフリーエ様と合流しろと言っていた」
「そう。じゃぁそうしましょう」
「うん。それでブラックドラゴンで回り道して西から来る軍隊を発見してる。後2、3日でドゥムルガに着くと思う」
「街に戻る?」
「うーん。門衛に怪しまれてるからねぇ」
「ここで魔石収集してますか」
「そうしましょう。定期的にブラックドラゴン飛ばしてフリーエさんが近くに来たら合流しましょ」
「「「了解!」」」
グデッペン要塞は丘の上に建てられていた。
確かに攻めにくく守り易そうだ。
俺は要塞に入って荷物の搬入をしたりして辺りを観察していた。
周りの連中に合わせ仕事をし、テントを宛がわれ、夕食を摂った。
勿論個室なんかじゃない。
同じテントはむさ苦しい野郎ばかりだ。
「茶を飲むか?みんなの分ももらって来た」
「おっ。気が利くな」
「パーティリングでパーティ登録しないのか?」
「あぁ。それはお偉方だよ。俺等徴兵組はいつ解散して別の部署に行って仕事割り当てられても良い様にパーティなんて作らねぇのさ。知らねぇのか?」
「こんな大規模なのは初めてでね」
「まぁ、そうか」
「田舎じゃ顔見知りしか居ねぇだろうしな」
「どの位の規模だろうな」
「なんでもベドルバクラ本隊は5000は居るらしいぜ」
「5000!?そんなにか!」
「あぁ。本気ってこった」
「俺の街でも沢山徴兵されたからなぁ」
「俺ん所もだ」
「村じゃないのか?」
「村なんて今時作れねーよ。おめぇそんな事も知らねぇのか」
「大分田舎の街から来たんでね」
「まぁなぁ。人の行き来が無ぇからしょうがねぇわな」
「だな。魔物が出るから村なんて作れねぇよ」
「冒険者は居ないのか」
「冒険者って・・・おめぇ」
「『フォー・キングス』とか聞いたぞ?」
「あぁ。南から引っ張って来たって奴等か」
「貴族待遇で引っ張って来るんだろ?」
「あいつ等は王家や貴族の依頼しかこなさねぇよ」
「俺等の依頼なんざ時間の無駄なんだろうさ」
「おめぇも強けりゃぁ貴族お抱えになるだろ?」
「報酬が桁違いだろうしなぁ」
「金は欲しい」
「そりゃそうだ」
「じゃぁ魔物の間引きなんかはされないんだな」
「あぁ。だから村なんて無理だ」
「在るっちゃぁ在るが。覚悟の上の連中だ。大概は街で生きていくのさ」
「貴族様は何もしてくれねぇしな」
「バカ!滅多な事言うなよ!」
「外ならまだしも、要塞ん中だぞ」
「誰が近くに来てるかも知れねぇ」
「すまん」
「あんたの街の奴隷はどうだい」
「奴隷?どこも同じだろう?無駄飯食らいのやる気なしだ」
「でも毎年減っていって困ってるなぁ」
「だなぁ」
「俺達がやる仕事も増えて来たし。どーしたもんかねぇ」




