表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HappyHunting♡  作者: 六郎
第13章 ハッピー・リバースデイ (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
409/706

⑬-39-409

⑬-39-409




「待て!」


ピタッ


バルドル将軍の首元寸前でマチェーテが止まる。

ファーダネさんの声だ。


「待てマコル」

「マコル!」


セーラちゃんの声も聞こえた。

バルドルと目線が合う。


「引け。マコル君。大丈夫だ」

「・・・」


周りも緊張感に包まれている。

士官も来ているのでそれなりに人数が多い。

その中でファーダネさんやクルトさんはいつも通りだ。

流石。

俺はマチェーテを納刀した。


「相変わらずだな」

「奇襲が取り柄でして」

「そうだったな」

「・・・状況が状況だけに説明無く呼んだのは此方の落ち度でしょう」

「そうだな。バグレスク大臣」

「は、はい。マコル。バルドル殿は今回の反乱に加わった罪を此度の戦争に参加する事で償われる事になった」

「戦争に参加?裏切者を?」

「うっ」


バルドルが苦しそうだ。


「裏切者、というよりも騙されたと言っても良いだろう」

「騙されたから殿下を弑そうとした?冗談でしょう」

「違う!殿下を殺そうとしたのではない!公弟殿下と共に大公位を譲るよう迫るつもりだったのだ!」

「公弟殿下にそのつもりが無かったとしても?」

「うっ」

「ありゃぁ殺すつもりだったと思うけどね」

「うぅっ」

「マコル。良いのです」

「殿下が良くてもね」

「?」

「公姉派として戦った将兵はどう思いますか。公姉派として戦って死んでいった将兵はどう思いますか」

『・・・・・・』

「分かっている!それでもバルドル殿が必要なのだ!」

「ファーダネ閣下」

「マコル君。今現在ルンバキア将軍は半減してしまっている。誰かのお陰でな」


俺は視線を逸らす。


「来る戦の為に使えるものは使わねばならんのだ。それこそ猫の手を借りてでもな」

「ニャー」

「あっ!ジョゼ!お前こんな所に居たのか!」

「ナーオ」

「オホン!」

「おっと」

「バルドル殿は己の不明を恥じていた。しかしバグレスク大臣に諭されルンバキア公国の為に戦う事を誓ったのだ」

「信じられると」

「故に此処に居る」

「・・・・・・首脳陣で決まった事を僕がケチ付けられる訳ないでしょう」

「そうしてくれ」

「責任は」

「私が取ります」

「殿下」

「私が決めたのです。バルドル卿!」

「はっ!」

「只今より其方を将軍に任命します。ルンバキア公国の敵を討ち破りなさい!それが今回、国の為に戦って死んでいった者達への罪滅ぼしとなるでしょう」

「ははっ!この命に替えましても!故国に足を踏み入れた略奪者に死の鉄槌を!」




「それでは説明する!国境街を視察しておられるフリーエ様から連絡が入った!ベドルバクラ内にて大規模動員の気配ありと!」

『おおおぉ』

「今日迄に小規模ずつ北に増員を派遣していたがここに至りベドルバクラ軍の侵攻に対処するべく我が国で大規模動員を行う!」

『おおおぉ』

「反乱の傷跡癒す間も無い大量動員は公都の防衛を危険にする可能性も有る!それに敵軍の総数は不明!しかし過少に見積もって多少の軍を送って敗れれば存亡の危機を迎えるであろう!故に出来得る限りの最大戦力を持ってこれに当たる事に決定した!」

『おぉ!』

「即ち!公都防衛に軍を残しつつも3700で公都を発する!道中1000が合流し更にソルトレイク王国から援軍500が来る事が確定しており合計5200で雌雄を決する!」

『おぉ!』

「諸君らは急ぎ出兵の準備に取り掛かられたし!」

『ははぁ!』




位が高そうな奴等が部屋を出て行った。

いつものメンバーに加え、バルドルが残っている。


「次は殺すぞ」

「む」

「マコル!」

「油断して負けたとか思ってんじゃねーの」

「む。思っていない」

「お前を殺さなかったのは偶々だ。お邪魔虫が入ったから偶々放っておいただけだ」

「分かっている」

「ホントか?次は負けんとか思ってんじゃねーの?」

「む」

「マコル!止めなさい!」

「ちっ」

「全くもう!」

「ニャァ」

「そういう事でマコル君も準備を整えてくれ」

「いつ出発するんです?」

「3日後だ」

「バグレスク大臣。余裕が有りますね」

「というより余裕が無いから3日も掛かるのだ」

「なるほど。道中合流していくと言ってましたが先発させてた兵だけじゃなく?」

「そうだ。反乱に関与せず公領に展開していた将軍と道中の街兵を吸収しつつという事だ」

「南からの街兵は」

「・・・オラキアへ来る迄の態度で分かろうというものだ」

「危機感が無いんでしょうか」

「秤にかけてるのだろう」

「勝ち馬に乗ると」

「貴族的ではある」

「ソルトレイク王国は来るそうですが、ベルバキア公国の援軍は?」

「連絡しているが返事が来ないのだ」

「変ですねぇ」

「あぁ。しかし待ってはおられん。戦える者だけで対処せねばならん」

「アルビジェの街主を今から罷免する事は出来ないでしょうけど、冒険者ギルドマスターはした方が良いですよ。ソルスキアからの物資や冒険者に被害が出るかもしれません」

「それ程か」

「えぇ。実体験です。フリーエさんやムトゥルグの街の冒険者ギルドマスターに聞いてみて下さい」

「分かった。ソルスキアからの援助は重要だ。速やかに行おう」

「では僕達も準備を整えます」

「うむ。そうしてくれ」

「お前も来るか?」

「ノオ」

「余程殿下が気に入ったみたいですね」

「うふふ」

「何かあったら殿下をお守りするんだぞ」

「ニャー」




キルカ商会に戻って来た。


「キルケさん!3日後に出発となりました」

「3日後!承知しました」

「開店準備は手伝えませんがよろしくお願いしますね」

「はい。お任せください。マコルさん達は準備に専念して下さい」

「ありがとうございます。そうさせてもらいます」


離れ家に帰って来た。


「カズ兄ぃ」

「ん?」

「バルドル将軍に斬り掛かったじゃない」

「うん」

「でも部屋入る前に感知して知ってたんでしょ?」

「あぁ」

「何で?」

「あそこにバルドルが居るって事は和解したんだろうなとは思ってた」

「じゃぁ何で?」

「他にも将官が居ただろ」

「うん」

「そいつ等が納得してるとは思えなかった」

「バルドル将軍は反乱に加わってたしね」

「部下が殺されてるでしょうし」

「そいつ等の代弁をしたと?」

「そういう事だ」

「ふーん。分かった」




次の日も魔物狩り、食料調達、各自の研究に費やしてある程度納得出来るグライダーの完成を見た。

2日目のグライダーの実験でお披露目だ。


「「「「へー!」」」」

「今までと随分変わったけど!」

「設計思想を最初に戻したんだ」

「へぇ?」

「今までの機体は前後に2人乗っていた」

「そうね」

「それを左右に乗るようにした」

「最初に戻したって言うのは」

「5人乗れる機体を目指したって事だね。2人乗りの完成を目指すんじゃなくて」

「それで左右にね」

「今までは後部座席の人間が結晶魔石を背負って、前部座席の人間が操縦してた。それだと前の人間が飛び降りると後ろの人間が操縦するまで不安定になる」

「飛び降りるっていう前提が間違ってるんじゃない?」

「太くなったねぇ!」

「その分短くなったろ」

「うん!凄い短いよ!」

「2人並んで座るからな」

「鏃みたいだね」

「翼も変わりましたね。前より短くなりましたし。4枚になりました」

「その分奥行きがある。長距離飛行じゃなく先ずは実験回数をこなす事を優先した。この翼の方が場所を取らない。森の開けた場所でも離陸し易いだろう。主翼の他に機首付近に2枚の前翼カナードを付けたんだ」

「窓が大きくなったな。というより一体化している」

「あぁ。機体と一体化した。これで風は入って来ない。無論、雨もな」

「これは良い!」

「俺が落ちる時は側面の小窓から出る」

「なるほど」

「飛行機だけど尾翼が無いのね」

「その分軽くなった。不安定になるだろうけどね」

「それ駄目じゃない!」

「前翼でカヴァーして、後は《馬術》に期待だな」

「綺麗な流線型でカッコ良いとは思うけど安全が1番よ」

「分かってるよ。まぁ折角の完成だし、機体に名前を付けるか」

「はいはーい!私付けるー!」

「マヌイか・・・まぁ良いだろう。言ってごらん」

「機体が黒っぽいでしょ」

「白か迷ったんだけどね。隠密性を考えると黒っぽい方が良いかなと」

「だからねー。ブラックドラゴン!」

『知ってた!』

「えー!?」

「マヌイはホントにドラゴン好きだな」

「分かり易いわね」

「まぁ良いのではないか。ドラゴンの首にも見えない事も無いんだし」

「見た事無いけどね」

「また今度それ風に塗装してみるか」

「うん!」


フライト実験は今までの蓄積もあり良好に終わった。

そして3日後が来る。


第13章終了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ