⑬-34-404
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キルケさん達と別れて冒険者ギルドに向かって新規登録をした。
「新規!?」
「名前変えるの!?」
「今更ですか!?」
「ルンバキアでは1つの名前しか使ってないぞ!?」
「公都オラキアでは当分活動しそうにないからな。それにマコルの名前も上層部しか知らないだろ。一般の人達に僕達は知られてない。それに商人ギルドに登録するにも都合が良いだろう」
そういったやり取りも有り、新しい偽名で新規登録をした。
後にこのギルドカードで商会設立をする事になる。
その後でブルーフ家に馬車を取りに行った。
話は通ってたらしくすんなりといった。
「お待たせ」
「ブオオォ!」
「いたたた!」
「随分待たせちゃってごめんね」
「ブゥ!」
「南部の高級野菜買って来たから機嫌直せよ」
「ブオ!」ムシャムシャ
「ホント美味しそうに食べるなぁ」
「ブオ」ムシャムシャ
「ちょっと頂だあいだだだだ!」
「ブオオォ!」
『はぁー』
キルケさん達と同じ宿を取り、馬車を預かってもらう。
部屋で話し合っていた。
「午後はどうするの?」
「商会の払い下げもあと数日は掛かるだろうから拠点は当分先だ。戦争の為に食料調達。後依頼をこなして魔物を口減らしつつ報酬をもらうか」
「それが良いね。ビグレット商会が来るんだし道中の安全の確保の為にも魔物を狩ろうよ」
「そうね」
「うん。途中に動物も狩って食料調達すれば良いだろうしな」
「じゃぁそうしましょうか。スキルレベルも上がって調子も良いし」
「お、何が上がったんだい?」
「《魔力検知》がLv5、《魔力操作》がLv4ね」
「私も!」
「マヌイもか」
「《魔力検知》がLv4、《魔力操作》がLv3だよ」
「私もだ。《魔力検知》がLv3、《魔力操作》がLv2」
「流石エルフ。魔力関係は早いな」
「私も頑張らないと」
「サーヤ君は十分凄いんだから無理するな」
「でも」
「【ランク】Cになったんだし、着実に強くなってる。そのままで良いんだよ」
「・・・はい」
「じゃぁ南に魔物駆除に行くわよ」
『はーい』
その日は終日、魔物狩りに勤しんだ。
宿に帰ってキルケさん達と夕食を摂る。
「キルカ商会?」
「えぇ。娘の名前にしました」
「良いじゃないですか。愛着も湧くでしょう」
「えぇ、とても」
「早く呼寄せられると良いですね」
「はい。でも払い下げられるなら早くなりそうですよ」
「そうですね」
「後、タリルコル様とオランド様への手紙も完成したので後で見て下さい」
「分かりました」
「狩った魔物も渡しますね」
「そうですね。ありがとうございます」
翌日は朝に魔術師ギルドで伝書鳩使用許可証を見せ、ベルバキア公国公都ムルキアのウリク商会オランドさんに食料武器弾薬をルンバキア公国公都オラキアのキルカ商会に送るよう伝書鳩を飛ばした。
その後はまた終日公都南側の魔物駆除、食料調達に費やした。
そして翌日参内命令が来た。
いや、参内ではないな、特に役職も無いし。
兎に角お呼び出しだ。
バグレスク大臣と面会する。
「商会の払い下げが決まった」
『はやっ!?』
「早いですね!」
「うむ。殿下も我々もこれまでの依頼報酬を払っていない事を気に病んでいるのでな。更に大手商会が協力している事が明白になった為今後の事を考えて見せしめの意味も含めて潰したのだ」
「そうですか、大手商会が」
「うむ。公弟殿下が即位したら・・・という奴だ」
「一か八か、商人らしいと言えばらしいですが。どちらに付くかで自分の身どころか家族の身も・・・明日は我が身ですね」
「正義は勝つ、とは青臭い事を言うつもりは無いが、多くの者がそう思う事で秩序は形成される。みんなが金儲け至上主義に走ると徳も情けも無い淀んだ世の中になってしまうだろう。正統なる後継者がやはり継ぐべきなのだ」
「そういえばソルスキアのバレンダルって街では不正に領主を追われた方が正義を取り戻して返り咲かれるそうですよ」
「そうか、流石はソルスキア王国。大国たる所以よ。普通は間違ったら正すのが恥だと思ってしまうが認めて正すのがやはり大国よな」
「そう思います」
「うむ。其方達も殿下との縁を大事にして欲しい」
「北部は僕達にとっても仇ですから」
「・・・そうか。では報酬として払い下げ証明書を渡そう。これを持ってこの後手続きをしてくれ」
「畏まりました。ちなみに金額は」
「1億エナだ」
『いちおく!?』
「勿論分割払いで良い。その場合は利息を貰うがな」
「あらー。殴った事怒ってます?」
「はっはっは。通常この場合何年にも渡っての分割払いは受け付けておらん。それも報酬と思ってくれ」
「あ、そうそう。従業員の方達はどうなります?」
「全員解雇だ」
「反乱に参加したのを知らなかった人達を面接して雇おうと思ってるんですが」
「ふーむ、成る程。直ぐにでも商売を始められるか」
「はい。ソルスキアからそういった人員を連れて来てましたので」
「公都で店を持つ為に来たのだったな」
「仰る通りで」
「良かろう。反乱を知っていた者は逮捕している。知らなかった従業員らは罪は無い。それにいきなり明日から職が無くなるのも哀れである。準備させよう」
「ありがとうございます」
「うむ。ムルキアに鳩を飛ばしたようだな」
「えぇ。馴染みの商会に食料武器弾薬を送るように書きました」
「そうか。物資がオラキアに集まるのは喜ばしい事だ。其方達も準備を急いでくれ」
「畏まりました」
その後、一旦宿に帰りキルケさん達を伴って再び城に入り、払い下げの手続きを済ませる。
各種証明書やら権利書やらの書類を受け取り城を出た。
払い下げられた商館に向かう。
その道中。
「係官、目を真ん丸にしてたねぇ!」
「1億エナなんて現金、私も商人をして初めてですよ!」
「我々もですよ!冒険者があんな量の金貨見るなんて滅多にねぇですよ!」
「わっはっは!分割なんてしないで一括で払ってやったわ!ざまーみろ!」
「足元見られるんじゃない?」
「利息払うより良いだろう」
「利息なんて勿体ないですよ」
「商人として言うなら、利息分以上を稼げば良いので分割が悪い訳じゃないですよ」
「どうせ払うんだ。今全額払うのも同じだよ」
「接収した時に高そうな商品も持って行ったらしいわね」
「らしい。食料もな。なので当分商売は難しいですが、キルケさん」
「えぇ。しかし全くの一から始めるよりマシですよ」
「これからどうします?」
「先ず冒険者ギルドとの提携、大きな商会だったので護衛の冒険者も雇わないと。ビグレット商会とウリク商会の商品が来るのを想定して受け入れの準備を始めます」
「忙しくなりますねー」
「はっはっは!忙しいのが嬉しいですな!今まで手持無沙汰だったので!」
そうこうしてる間に目当ての商館に着いた。




