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HappyHunting♡  作者: 六郎
第13章 ハッピー・リバースデイ (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
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僕等3人は女性と共にテーブルを囲っていた。


「それで!何の用よ!」

「少し話をね、したいと思って」

「だから何の話よ!」

「名前を教えてくれないかな」

「ダリアよ!」

「ダリア!」

「何よ!?」

「良い名前だ」

「はぁ!?」

「ここには1人で?」

「そうよ」

「両親は?」

「死んだわ」

「お2人共?」

「えぇ」

「仕事は?」

「給仕よ」

「文字は読み書き出来る?」

「えぇ」

「ふーん」

「何よ!」

「そうだ!ここに来るまでに屋台で買った料理が有るんだ。夕食はまだだろう。一緒に食べよう」

「はっ!?」

「マーラ君」

「は、はい」


テーブルに料理を出してゆく。


「いや、ちょっと!」

「冷めない内に食べよう」


夕食中は彼女の事では無く、日常的な当たり障りのない事を聞いていった。

そして1時間ばかりが過ぎた。

外は完全に夜。

早い者ならもう寝る頃だ。


「さてと」


口の周りを拭きながら席を立つ。


「随分長い食事ね」

「ゆっくりよく噛んで食べる。健康の秘訣だよ」

「まだ若いのに」

「「ぶっ」」

「ま、まぁね。今から気を付けるのさ」

「あっそ」

「明かりを消してもらおうか」

「ななな何!」

「マヤ」

「うん、良いけど何で?」

「後で分かる」


蝋燭を消した。


「静かに聞いて欲しい」

「何」

「この家の周りに男達が居る」

「「「!?」」」

「恐らくターゲットは君だ」

「ななな何で!」

「教えてる暇は無い。寝室で俺が待ち構える。2人はダリアを護衛だ」

「「了解」」

「えっ、ちょっ、どういう事!?」

「寝込みを襲う賊を捕まえる、分かった?」

「えぇ!?」




そしてしばらくすると、


キイィ


玄関ドアが秘かに開く気配がする。


・・・ ・・・ ・・・


流石足音をさせずに移動しているようだ。

入って来た賊は2人。


キイィ


寝室にも入って来た。

《偽装》した布団を窺っているようだ。

賊の1人が布団を捲ろうとしたその時、


ドガッ


「!」


ドサッ


「何!?」

「待ちくたびれたよー」

「くそっ!罠か!」

「あぁ《罠》だよ」

「ちぃ!」


残りの賊は開いていた窓から出ようと飛び出したが、


「があっ!?」


細い紐に搦め取られてしまった。


「だから《罠》だって言ったろ」


グライダー用の軽くて丈夫な紐だ。

易々と抜け出せるはずもない。


「おらっ!」

「ぐっ」


2人共ふん縛って転がしておいた。

灯りを点けてダリアと話をする。


「何なのよぉ!あいつ等何なのよぉ!」

「知ってるんじゃないのかい?」

「・・・あの人の・・・敵?」

「まぁ、そんな所だ」

「・・・教えてくれる?」

「君次第だ」

「・・・」

「先ずは君からだ」

「・・・分かったわ。あの人とは・・・」


それから諜報員との出会いや生活、将来を誓い合っていた事を話してくれた。


「でもある時から様子がおかしくなってきて」

「ふむふむ」

「同じくらいからそれまで付き合いの無かった人達と付き合うようになって」

「そうか。彼氏が何者なのか、知ってるのかい?」

「普通の人じゃないって事は分かったけど・・・ギャング?」

「・・・知らない方が良い事もある」

「・・・でも。あの人・・・一緒になろうって」

「本心だよ。多分だけど」

「何で分かるの」

「君に本気だったから殺されたんだ」

「・・・そう。やっぱり殺されたんだね」

「あぁ」

「あなた達も衛兵っていうのは嘘よね」

「分かる?」

「分かるわよ。らしくないもん」

「はっはっは。今は素だからね」

「・・・そうね。最初とは印象が全然違う。何してるの」

「今は国の仕事をしている」

「国・・・じゃぁやっぱりギャングだったんだね」

「君は知る事も出来るし、忘れる事も出来るよ」

「愛した人を忘れられるの?」

「・・・無理だね」

「・・・でしょう」


2人で茶を飲む。


「でもやり直す事は出来る。忘れたと自分に言い聞かせながらね」

「後悔しない?」

「かもね」

「まだ若いのに」

「人を愛するのに年齢は関係無いだろう」

「あなたに言われてもね」

「これ以上傷付かない為さ」

「これ以上傷付いても同じよ」

「底はまだ深いかもよ」

「行ってみて考えるわ」

「もう一度言うが、彼氏は君を愛していた。だから殺されたんだ」

「殺された理由も教えてくれる?」

「良いだろう。君の彼氏はベドルバクラ王国の諜報員だったんだ」

「!?・・・・・・・・・・そう」

「彼氏は祖国を裏切りこの国に本気で根付こうとして殺された」

「・・・・・・・・・・うぅ」


しばらく茶を飲む時間が出来た。


「あの人は・・・一緒に南に行こうって・・・言ってくれたの」

「そうだったのか。連中は彼氏が持っていた箱を狙って殺した。しかし彼氏は持っていなかった。それで・・・」

「付き合ってた私を狙ったって訳ね」

「あぁ」

「あなた達もその箱が目当てで?」

「そういう事」

「・・・分かったわ」


ダリアは席を立って部屋を出て行った。

帰って来た時にはアタッシュケースのような鞄を抱えて戻って来た。


「これよ。あの人から預かってくれって」

「鍵は?」

「私は持ってないわ。あの人のネックレスに鍵が付いていたの。それで火事場に行ったんだけど・・・」

「僕等が居たと」

「えぇ」

「鍵は連中に殺された時に奪われてしまったみたいでね」

「・・・そう」

「ただ千切れたネックレスを固く、固く握ってたよ」

「・・・そう。私がプレゼントしたの。あのネックレス」


ネックレスをテーブルに置いた。


「!?・・・良いの?」

「事件は解決だ。君の彼氏の仇は捕まえて鍵は取り戻した。ただし、鍵とこのケースは渡せないがね」

「そうよね。ううん、このネックレスで十分よ」

「さてと」


僕等は席を立った。


「行くの?」

「仕事が残ってるんでね」

「大変ね」

「全くだよ。人の平和を土足で踏みにじる奴等だ」

「・・・仇。ありがと」

「仕事だからね、礼は必要無いよ」

「それでもよ」


僕達は玄関に向かった。

が、振り向いて、


「あぁ、それと。この件は口外しないでくれ」

「えぇ、分かったわ」


玄関に2,3歩歩みつつもう1度振り向く。


「あぁ、それと。今夜少し賑やかになるかもしれないから家から出ない様に」

「賑やか?」


玄関のドアに手を掛けつつ最後にもう一回、


「あぁそれと」

「ふふっ、何よ」

「これからどうするのかな?」

「さぁ。しばらく考えてみるわ」

「良い夢を」

「今夜は何も見たくないわね」


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