②-23-40
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「「ホントにもう!」」
女性2人に怒られる。
1人は分かるが、何故だ菊池君。
ギルド本館の応接室に通された僕達は並んで菊池君と、向かいに推定Eカップとお兄っちゃんが座っていた。どっかで見た光景だな。
しばらくすると男が2人入ってきた。
「どうもお待たせしまして」
「いえ!リオンヌさん、こちらこそご足労をお掛けして」
「この男は執事のシモンです」
「シモンです。お見知りおきを」
「こちらこそ、まぁお掛け下さい」
ギルド職員の2人は僕達のサイドに回って座った。出入り口に近いサイドだ、くそ。
執事のシモンは主と同じソファーには座れないのだろう、職員とは違うサイドに僕達とは少し離れて立っている。
シモンは気付かなかったろうが、入ってきた時に顔をしかめたのを見逃していない。
「さて、カズーさん、ミキティさんお手間を取らせて申し訳ありません」
「全くですな、どういう事です」
「ちょっ!?カズーさん?」
シモンがしかめているのが間接視野でも分かる。
「まぁまぁ。我々の方に用が有ったのですから出向くことは当然です」
「では最初からそうするべきでは」
「カズーさん!」「おいおい」
「ははは、手厳しいですな。先ずは話をお聞き頂けませんかな、カズーさん、ミキティさん」
僕はワザとらしく菊池君に小声で話しかける。
(ギルドとリオンヌはグルだな)
(えっ?)
(少なくとも利益を共有してるな)
(どうします?)
(任せてくれるかい?)
(勿論です)
「分かりました、お聞きしましょう」
「ありがとうございます。先日、当家のヴィヴィエントまでの護衛依頼をお断りさせて頂いたのですが、それを撤回し改めてお受けして頂きたいのです」
「お断りいたします」
「ちょっ!」「おい、カズー」
シモンがピクついてるな。
「ははは、即答ですか、参りましたな」
「ではこれで失礼する」
「えっ」
「待ってー!カズーさん待ってー!」
席を立った俺に抱きついて行かせまいとする推定Eカップ。
「お待ち頂けませんか。もう少しお話を」
考えるフリをして時間を稼ぎ席に戻る。これが夏であれば服も薄いし感触も・・・
「お茶でも飲んで落ち着きましょう!」
「綺麗なEカップ・・・いやティーカップですね」
何故か菊池君がジットリ見てくる。
茶に手を付けることなく話の続きを聞く。
「どうでしょう。お引き受け下さるのでしたらこの度の迷惑料と合わせまして、当初の報酬の1.2倍をお支払い致します。当初は5000エナでしたから6000エナです。いかがですか?」
「先ず撤回の理由をお聞きしたい」
「分かりました。最初採集の依頼しか受けていないと思っていたのですが、ランクを上げた対象の魔物がかなりの物だと分かった次第で」
職員2人を見つめるが目を逸らす2人。
マヒマイタケか。
「馬車の台数は?」
「4台です。荷台が3台、あとは人員です」
「僕達の他に護衛が?」
「はい。当家のお抱えが4名。この街で4名募集して内2名は既に」
「馬車1台に2名は一般的なのですか?」
「2~4名ですな。うちは量より質でして」
「行程をお聞かせ願えますか」
「1日目は村に泊まり2、3日目は野宿、4日目は村です。道中の飲食と宿代は当家持ちです」
「リオンヌ商会の本店はコンテですか?」
「いえ、ヴィヴィエントです」
「カズーさん。リオンヌ商会はヴィヴィエントで1,2を争う豪商ですよ」
「ははは、豪商とはまた・・・」
「人員は何人です?」
「12名です」
「護衛対象ですか?」
「馬車使用時は乗っている馬車を護衛。休憩や野宿では人員を優先で」
「僕達の馬車のみになった場合でも依頼は成功ですか?」
「はい。そうなりたくはないですがね。ははは」
「村での護衛はどうなるのです?」
「どうとは?」
「もし盗賊や村人が襲って来たとしたら。人か荷物か」
「なるほど。う~ん・・・人でお願いします。金目の物は手元に置いておきましょう」
「分かりました。しかしやはりお断りしましょう」
「なっ、何故?」
「どうしてですカズーさん!1.2倍ですよ!良い条件じゃないですか!」
「そうだぞ!しかもリオンヌ商会の護衛依頼だ!箔がつくぜ」
「僕達は既に別の護衛依頼を受けているのです。先のを断って今更条件の良い方を選ぶというのは不義理です。申し訳ありませんが」
「それは私たちの方で断っておきますよ!」
「それでは僕達がギルドを通じて断ったとして更に外聞が悪くなります」
「いえいえ!乗合馬車は半ば公的な機関でもありギルドとも繋がりが有るんです。リオンヌ商会からの指名が入ったとギルドが言えば大丈夫です」
「でも指名依頼ではないですし・・・」
「分かりました。指名依頼で出しましょう。報酬は2倍の1万エナ。いかがでしょう」
「「1万エナ!?」」
(ここら辺かな?)
(いいと思いますよ)
「分かりました。お引き受けいたします」
「そうですか、良かった」
「ありがとうございます!カズーさん、ミキティさん!」
「よーしよし」
相変わらずシモンは苦い顔だ。
ギルドでその後の手続きをしてリオンヌ達とは別れた。
定期便は急遽2名の欠員を補充するために1日遅れることになった。
こういった護衛のゴタゴタはままある事らしい、僕達の場合不義理にはならないそうだ。
「あれで宜しかったのですか?旦那様」
「ん?シモンは嫌そうだね」
「はい。まだ若いですし、採集しかしていない。信用出来ませんな」
「向こうもシモンを警戒していたようだね。元軍人ってのはバレてたんだろう」
「なっ!?」
「顔に出過ぎだよ」
「も、申し訳ありません」
「先日の当家でもそうだったが、今日のギルドでも出ていた茶を飲んでいなかった。警戒心が強いのだろう。護衛向きだよ」
「そ、そうですか。気付きませんで」
「それに護衛よりも価値のある使い道があるからね」