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HappyHunting♡  作者: 六郎
第13章 ハッピー・リバースデイ (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
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⑬-28-398

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朝に即位式となった。

もう城内はてんやわんやだ。

反乱の直後とあって準備の時間は勿論足りず物資も用意出来ていない物もチラホラ。

そんな事よりも大事なのが空位にしない事だという事でこの忙しさ。

城内では速足をしていない者の方が少ないくらいだ。

セーラも御着替えの最中、菊池君達4人が護衛をして俺は会場の下調べをしていた。

後から聞くとセーラは緊張をほぐす為か、ずっとオルゴールを聞いていたという。

護衛の僕等は騎士ではなく衛兵に扮してセーラの側に居た。

騎士は逆に自由に動き回れない。

騎士は公族の護衛がメインで城内の見回りは衛兵が主な仕事だからだ。

なので城内をフラフラ出来るのは衛兵の方が都合が良かった。

俺を怪しむ者は少数だ。今はそれだけ余裕が無いのだ。

会場のチェックも終わりしばらくして即位の儀が始まった。

緊張した護衛の中・・・という訳でもなかった。

会場内に居る者、殆どが事前に顔を合わせていたからだ。

ファーダネさんを始めソルスキア関係者。

ルンバキアの文官、武官。

国外からの客は勿論居ない。時間的に間に合わない。

騎士達が見守るやや物々しい中、セーラが跪いて家宝を受け取る。

渡すのは宗教関係者ではなく公族のそういう関係の人らしい。

大公継承権は無い代わりにこういった式で主役張る人らしい。

セーラが家宝を持って振り返りみんなに見せ継承を終える。

本来なら参賀した人達1人1人が声を掛けるらしいのだがパス。

そして本来なら王城門を開けて一般人を入れ、城の正面バルコニーから姿を見せるらしいのだがそれもパス。

そして本来なら即位の儀から日を改めて行われる各宗教からの祝いの儀もこの日の午後に行う事となった。

そして事件はその宗教関係者を集めた場で起こる。


即位の儀とは別の会場。

建国王の頃より宗教の自由が認められる南部連合。

各国王家は特定の宗教に帰依するものの、特定の宗教のみを優遇する政策を取っておらず、それが多様性を生んで多様な種族が表面上とはいえ上手く纏まっているのだろう。

各宗教の代表者が即位の祝辞を述べていた。

そしてエリス教の番となる。

壮年の男が宗教の代表の集団から離れて前に出て壇上のセーラ、ヴォーレ8世に向かって祝辞を述べる。


「この度、この即位祝賀に御招き頂き有難く思っています。しかしながら私共はセルラムディ殿下を大公とは認められません」


ざわざわざわ


「私共は私共の団体を私共の神の名を冠した名前で呼ぶ者達を認める訳にはいかない。殿下は神の名を冠した団体名で私共をお呼びになる。であれば私共も殿下を大公殿下と認める訳にはいかないのです!」


おぉー!ざわざわざわ


セーラも困った顔だ。

宰相バグレスクが助け舟を出す。


「しからば何と呼ぶのだ」

「いえ!この世に神は1人のみ。他の宗教は邪教!従ってここに呼ばれるべきは私ただ1人のみ。したがって団体名を名乗る必要は無いのです!」


おぉー!ざわざわざわ


「誰です?あのメンド臭いのは」


近くに居るラーンに聞いた。


「公都にあるエリス教の責任者、教会長だ」

「エリス教は毎回こんな感じなんですか」

「いや、今回が初めてだな。どうしたのだろう」

「前回の時も同じ人ですか?」

「いや。前回といっても10年以上も前だからな、流石に変わっている」

「普段からあんな尖がってるんですか?」

「いや。熱心だと言う噂は聞いていたがこれ程とは・・・」


「先ず邪教徒を追い出し、私共の教えを国教に認定し、邪教の教会を破壊して私共の教会を御建て下さい。そうすれば我々も殿下の即位を認める素地が出来るというものです!」


「人となりは調べなかったんですか?」

「うーん。特に問題は聞かなかったんだが」

「猫被ってたんでしょうか。この日の為に」

「うーん・・・」

「少し怪しいですね。持ち場を離れます。許可をください」

「どうした」

「背後関係を調べたいです。もしかしたらベドルバクラの諜報員と会っているのかも」

「むっ。それは有るな。しかし暗殺は大丈夫か?」

「暗殺するんならこんな大袈裟で目立つ事しないですよ」

「そうか、そうだな。分かった許可する」

「畏まりました」

「頼んだぞ」

「はい。マーラを連れて行きます」

「分かった。護衛は任せろ」

「はい。マーラ君、行くぞ」

「畏まりました」




サーヤ君と2人、会場を抜け出す。

城の外に出て衛兵装備を収納していつもの装備に着替える。

サーヤ君が縫い合わせている冒険者上着は街中で着てても違和感ない物なので紛れるには格好の物だった。

街中も衛兵が警備巡回し物々しい。

反乱後の即位式の最中だ。

事が有れば大問題になる恐れがあるからだ。


「どこに行きます?」

「城中で聞いたエリス教の教会に行く。あいつが務めている所だ」

「分かりました」


その場所に急ぐ。

着いてみると結構立派な建物だ。


「どうです?」

「中に数人いるが明らかに周囲と比べて強すぎる魔力反応が2人」

「怪しいですね」

「あぁ。裏から潜入する」

「分かりました」




《偽装》しつつ裏から潜入する。

視ながら人を避けつつ目的の2人が居る部屋まで階段を上がり移動する。

道中何人か視たが特に怪しい所は見当たらない。

冒険者ですらなく純粋に教会関係者なのだろう。

目的の2人が居る部屋の隣の部屋に入った。

壁に耳を当て会話を拾う。


「奴が捕まって意味の無い問答をしている間に決行する」

「あぁ。合図は俺が挙げる。それを見てからだぞ」

「分かっている。折角ここまで漕ぎ着けたんだ、今更段取り無視は出来ん」

「あぁ。まさかあんなに早く公女が帰って来るとはな」

「それを言うなら生きてた方が驚きだろう」

「確かに。『フォー・キングス』を遣ったのにな」

「隊長の行方も分からんし」

「あぁ。伝書烏が来ないという事は『フォー・キングス』は望み薄だろう」

「隊長も死んだか」

「あぁ。反乱の失敗で副隊長も殺られた。残るは俺達2人だけだ」

「くそっ!あいつが裏切らなければ3人でもっと成功確率が上がっただろうに!」

「国を裏切ってルンバキアで暮らすなんてな」

「女に誑かされたんだ。遊びだと思ってたら本気だったとはな」

「商売女じゃなく堅気の女だから情報収集にはうってつけだと思ってたが・・・木乃伊取りが木乃伊になっちまうとは」

(サーヤ君ミイラって)

(しーっ)

「始末は?」

「背中をぶすりとな。火も点けた。分かりゃぁしねーよ」

「しかし鍵を奪ったのは良いが保管庫が見付からなかったのは痛いな」

「あの部屋には無かった。どこに隠してたんだか」

「見付からなければ永遠に見付からないで良いんだが」

「まぁ今はそれに関しては良いだろう。今夜の事についてだ」

「そうだな」


2人は打ち合わせを続けていた。

俺はサーヤ君にクロスボウを出させ2人で狙撃の準備をする。

矢にネムリマイタケの毒を塗る。

矢に塗る場合、薬品系の毒は即効性は有るが時間が経つと揮発して効果が薄れるのが難点だ。戦争等で使い辛い。

手軽に手に入る糞尿なんかを塗るのは即効性は無く遅効性。

どちらも一長一短だ。

急いでドアに回る。

ハンドサインでサーヤ君に伝える。

俺、右。

サーヤ、左。

サーヤ君が頷く。

伝わったようだ。

指を出してカウントダウンをする。


3、2、1、バンッ


「「!?」」


ヒュヒュン


「うあ!」

「なん!」


肩と腰に命中した。


「なっ!何だ貴様等は!」

「先にお前等の素性を聞いても良いかな?」

「ふ、ふざけるな!」

「そうか、じゃぁお先に。ルンバキアの情報部の者だ」

「「!?」」

「じゃぁそっちの番だぞ」

「くそっ!」

「おっと、逃げるなよ。ぶっすりといくぞ」

「「くっ」」

「衛兵装備を上から着るぞ、君からだ」

「はい」

「誰か来そうだ」

「誰か!助けてくれ!」

「おいおい、困るな。神の導きでここまで来たんだぞ」

「てめぇの神なんぞ知るか!」

「野蛮な奴等だ」

「それは貴様等の方だ!幾つもの神を祭るなぞ正気の沙汰かよ!」

「着替え終わりました」

「よし。じゃぁ僕も着る。妙な真似をしたら遠慮せずハチの巣にしろ」

「分かりました」

「おい!聞いてんのか!」

「あ、あぁ。神は1人、だっけ?」

「そうだ!」

「太陽も1つだと」

「そうだ!」

「月はなんで2つなんだ?」

「知るか!」

「これだ。事象に自分の都合を合わせるならまだしも、自分の都合に事象を合わせる。合わない物は排除する。議論にもならんな」

「話になりませんね」

「あぁ」

「何だと!」

「お前等との会話は全くの無駄でしかないって言ってんだよ」

「・・・そん・・・な」スヤァ

「なん・・・で寝・・・」スヤァ

「どうしまし!?な、何です!あなた方は!?」

「見ての通り衛兵だ、文句あるのか?」

「え、衛兵が何故ここに!?」

「見ての通り怪しい者を捕らえた」

「怪しい者?・・・きゃっ!?」

「殺してはいない。眠らせた。あなたはここの人間か?」

「え、えぇ!」

「城の衛兵を呼んで来てくれ。僕達は公家直属だ」

「こっ、公家直属!?」

「しーっ。声が大きいぞ」

「も、申し訳ありません!」

「ある任務でこの者達を追っていた。知っているか?」

「はははい。しばらく前から出入りして教会長と何やら話してました」

「教会長は今どこに」

「王城で大公即位の祝辞に参加しているはずです」

「そうか。では衛兵を呼びに行ってくれ」

「わ、分かりました!」


女性教徒は走って行った。


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