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HappyHunting♡  作者: 六郎
第13章 ハッピー・リバースデイ (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
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会議は大きな議題を小休止させ、一旦小さな物を捌く事に移っていた。

その中で1つ気になる事案を耳にする。


「~という訳で反乱騒動中の市中の混乱もそれ程無く、火事も1件有っただけであります」


衛兵が答弁する。


「火事?」

「どうした、マコル」

「いえ、ちょっと気になりまして」

「火事がか」

「えぇ」

「珍しくは無かろう。こういった騒動では起きるものだ」

「えぇ。しかし1件だけというのも少々・・・」

「ふむ。少し詳しく聞かせてくれるかね」

「はぁ・・・」


衛兵も僕みたいな冒険者を良くは思っていないのだろう、その態度から十分窺われる。


「答えなさい」

「殿下、は、はい!貴族ではない一般人居住区での放火とみられております。火事で死んだと思われるヒトが1人出ております」

「死人が出ているのですか!」

「は、はい!」

「一般人居住区。放火殺人」

「・・・物取りを取り押さえようとして返り討ちに会い気絶したか動けなくなったか」

「物取りついでに火を点けるのはよくある事だが」

「えぇ。僕等も昨日オラキア市街に入った時に商店を襲っていた兵士を殺しましたからそれは分かるんですが。狙うならやはり商店でしょう、何故一般人の家を」

「・・・恨みでも有ったのではないか」

「なるほど・・・それはアリますね」

「気になるのか」

「えぇ。少し調べてみてもよろしいでしょうか」

「殿下」

「良いでしょう。マコルが調べたいと言うのなら。マコル達の情報収集能力は信用出来ます。それで調べて何も無かったら何も問題無い、有ればそれで問題が見付かったという事でデメリットはありません」

「そうですな。しかし護衛の問題が有ります」

「マリア君、セリーナを護衛に残します。特にマリア君は索敵に優れています、ご安心ください」

「分かりました。衛兵と協力して調査をして下さい。昨日返してもらった指輪を持って行きますか?」

「いえ、それ程の事かまだ分かりませんので結構です」

「そうですか。ではよろしくお願いしますね」

「畏まりました」




その後嫌々付いて来たであろう衛兵と共に4人で現場に向かった。

複数階のアパートの一室が黒焦げだ。

周囲は衛兵が立って野次馬を中に入れないようにしていた。

階段を上がって該当の部屋の前に立った。

まだ熱を感じる。


「これが火事の現場か」

「丸焼けじゃないね」

「火事に気付いた付近の住民達が消火したらしい」


付いて来た衛兵が答える。

部屋の周囲を一通り見て回り部屋の中に入った。


「とはいえ、中が酷い。火元は中だな」

「そうだねぇ」

「死体はどちらに?」

「この部屋のそこに寝ていた」

「ふーむ。火元はこの部屋じゃぁないな」

「燃え方が別の部屋より激しくないもんね」

「あぁ。家の外じゃなく中で火を点けたようだがこの部屋じゃぁない」

「家も特にお金を持っている風には見えませんけど」

「金目の物は?」

「捜索したが見つかっておらん。物色したんだろう、引き出しなどは開いたままだった」

「ふーむ」

「死体を見に行かない?」

「そうだな。死体は何処に?」

「衛兵の死体置き場に保管してある」

「行きましょう」


僕等は階段を降りて死体置き場に向かおうとしたが、ふと顔を上げると野次馬の中の女性と目が合った。

女性の方も俺と目が合ったのに気付いたのだろう、慌てて去って行った。

俺はその場に佇む。


「どうした!何をしている!死体を見に行くんじゃないのか!」

「ちょっと待ってください」

「全く!これだから素人は!」

(どうしたの?)

(気になる女を見付けた)

((気になる女!?))

(カズヒコさん!こんな時に!どんな女なんです!胸が大きいんですか!)

(いや、そこそこだが火事現場から出て来た僕達を見て逃げて行った)

(そーゆー気になる女ね)

(は、早く言ってください!)

(何の事だ)

(何でも有りません!)

「まだか!」

「えぇ、もうちょっと。すいませんね」

「ふん!」

(どう?)

(あぁ、今建物に入った。《EMP》発動)


フウウゥゥゥン


「「お」」

(後で《EOM》で砂に投影する)

(分かりました)

「お待たせしました」

「全く!早くしろ!」




死体保管所に移動して男の死体を検分する。


「「「うぇ~」」」

「焼死体って慣れないね。臭いが・・・」

「そうねぇ」

「見てみろ。髪はチリチリだが皮膚は火傷の痕も殆ど無い」

「ホントだね。どういう事?」

「炎に巻かれて死んだんじゃなく、煙を吸って窒息して死んだんだ」

「あっ!ナメクジン村の!」

「そうだ。だから煙には気を付けるんだぞ」

「うん!」

「マコルさん。でも窒息で死んだんなら顔色が変わっているはずでは?」

「その通りだなマーラ君。という事は恐らく窒息でも死んでいないんだろう」

「「えっ」」

「じゃぁどうやって死んだの?」


衛兵に確かめる。


「遺体の喉を裂きたい」

「な、何の為に!?」

「どうやって死んだか調べる為だ」

「死因は焼死だ。それで片付いている!」

「殿下から調べるよう申し付かっている」

「クソッ!好きな様にしろ!」

「どーも」


喉を斬り裂いて気道の中を露わにする。


「煙も付いていないし当然火傷の痕も無い」

「煙を吸って無いって事?」

「そーだ。つまり火事の前に死んでいたという事だ」

「ではやっぱりどうやって死んだんでしょう」

「それを調べる。服を脱がせ、外傷を調べる」


先ずは上半身の服を脱がして調べていた。

衛兵は苦い顔だ。


「むっ」

「「何か有った!?」」

「背骨に刺し傷。錐みたいな細い物で一刺しだ。背骨を貫通、心臓にまで達していたら致命傷になっただろう」

「あっ、マコ兄ぃ!」

「どうした」

「何か握ってるよ」

「ほぅ」


パキパキパキ


無理矢理手を開けさせるとチェーン(※)だった。

(※:チェインメイルのチェインだが、分かり易い様にチェーンとする)


「ネックレス用のチェーンの様ですね」

「犯人のかな」

「うーん。今の段階では分からんな。これは持って帰ろう」




その後は特に発見も無く死体保管所を出て城に戻った。

セーラ達に報告をする。


「そう。特に何も無かったのですか」

「えぇ。殺されていたという事くらいしか分かりませんでした」

「その程度なら時間の無駄だったではないか!殿下の警護をしていた方がマシだ!」


近衛騎士が煩い。


「引き続き調べようと思っています」

「えぇ。宜しく御願いしますね」

「ははっ」

「ちっ!」




しかし翌日は即位式の準備に忙しく、僕達も駆り出されて調査どころでは無かった。

そして即位式の当日になる。

セーラ、セルラムディ・ドゥラグレは即位してルンバキア公国大公ヴォーレ8世を称する事になる。


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