⑬-15-385
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「階段を確保、維持せよ、か」
「大した情報を持ってなかったわね」
トドメを刺した兵士を床に捨て階段の踊り場を上がって2階に到着した。
城は攻め込まれた時の防御上、上階への階段は別の場所に設置している。
一気に3階まで上って来れないようにだ。
即ち3階への階段を目指さなければならない。
そしてその道には強い魔力が存在していた。
「はぁー。一筋縄ではいかなそうだな」
「軍が相手だしね」
「みんな体力大丈夫か?」
「まだまだ大丈夫だよ」
「人数が少なかったですし」
「キルフォヴァみたいに休めない訳でもないしな」
ドフォオオォォォ
ドフォオオォォォ
グラグラグラ
建物が振動する。
「激しいな!」
「上かしら!」
「ヤバそうだね!」
「急ぐか!」
ドドドドドドドドド
「なっ、何だ!?あの軍は!?」
騎兵の一団が南門に殺到しようとしている。
「グリフォン!ソルスキアの軍旗を確認!」
「ソルスキア!?姫殿下か!?」
ドドドドドドドドド
「ドゥラグレ家の紋章旗を確認!」
「セルラムディ殿下だ!」
ドドドドドドドドド
レネが南門に着いた。
「我々はセルラムディ殿下を擁して参ったソルスキア軍であーる!責任者と話したい!」
壁から離れた位置からレネが開かれた門に向かって馬上から叫んだ。
外壁上から男が声を上げる。
「どうぞ!御使者に聞いております!中へどうぞ!」
「かたじけない!それ!」
『おぉ!』
外壁と内壁の間で両者情報を交換する。
「では殿下は御無事で!?」
「うむ!安心なされよ」
「ふぅー」
「それで状況はどうなっている!?」
「それは私から!」
「貴殿は!?」
「王城東門の門兵です!」
「城の!」
「はい!反乱軍に攻められていた所を御使者が参られて助けて頂きました!」
「そうか!あいつが!」
「東門は守れましたが他の門と連絡が付きません!落ちているものと思われます!」
「ぬぬぅ!」
「とりあえず東門に御援助頂きたく、御使者からも助言を頂いて参った次第です!」
「相分かった!援助仕る!」
「ウルマン様!ファーダネ様の御指示を受けなくとも宜しいので!?」
「門全て落とされれば奪回は難しくなる!そうなれば城は程なく落ちる!ファーダネ様も同じ決断を為されよう!」
「畏まりました!」
「それでその使者はそれからどうした!?」
「城に潜り込むと!」
「城に!?」
「はい!自分達の本分を尽くすと仰せになり!」
「そうか・・・よし!部隊を半分に分ける!其方は半分でこの南門を死守せよ!」
「承って候!」
「残りは私に続けー!」
『おおぉ!』
騎兵隊が門を潜りオラキア市街へ突入していった。
曲がり角から顔を出さず壁を透過してチラ視する。
「魔法使いは居ない」
「20人位かな」
「どうするの?」
「1番強そうなのは奥に居るわね」
「さっきと同じだ。俺が密集に突っ込む、そのフォローを頼む」
『了解』
「それ!」
俺は角を曲がって走り出す。
戦闘が終わったばかりなのか、兵士の死体が倒れている。
「何だぁ!?」
「生き残りか!?」
「新手か!?」
そのまま壁に向かい跳躍して壁を走って行く。
『おおおぉぉぉ!?』
反乱兵達の視線を一身に浴びる。
限界が来た所で壁を蹴り空中を側転しながらマチェーテを振る。
首が1つ空中を舞った。
着地と同時に兵士の首元にマチェーテを刺し込む。
直ぐに山刀を放してナイフを抜いて辺りの兵士に斬り付ける。
「ぐおっ!?」
「くそっ!ちょこまかと!」
「何やってるしっかりっふぉ!?」
背中に衝撃が走った兵士が2人崩れ去る。
崩れた後ろには盾とハンマーを持った女が2人。
更にその脇を矢が通り過ぎ別の兵士の後頭部に刺さる。
「くっそー!新手だ!」
「1小隊程だ!押せ押せ!」
「正規軍じゃねー!冒険者だ!」
「ブッ殺せ!」
右足を軸に後ろ回し蹴り、吹っ飛ばされて壁に激突する兵士。
そのまま回転しながら隣の兵士に今度は左足を軸に右ハイキック。
側頭部に命中する寸前、靴に仕込んだ《爆鎖》持ちの鎖から作ったナイフが飛び出す。
サクッ
側頭部に挿入されるナイフ。
そのまま足を振り抜いて兵士は隣の兵士にぶつかる。
俺は駆け出してさっきの回し蹴りで壁に激突して体勢を崩した兵士に飛び膝蹴り。
2つの膝が目指すのは1つは鳩尾に、1つは心臓に。
「ごぶっ」
鳩尾と心臓を強打され呼吸困難に陥る。
そのまま肩を押さえて真上に跳躍、壁を蹴って空中で体を捻り飛んだ先の兵士に肘を入れる。
倒れた兵士に靴の仕込みナイフを首に刺す。
「ぐぶっ」
「何だ!こいつぁー!?」
「たっ、対応出来ん!?」
「何とかしろー!」
「何とかって!後ろからも来てんだよー!」
「だらしないぞ!それでもルンバキア兵士か!」
「かっ、閣下!」
「むん!《身体強化》!そしてー!」
「なっ!あっあれは!?」
「どうしたのケセラ!?」
「まっ、不味い!カズヒコ!あいつは!」
「武技!《猪突猛進》!」
ドゥオオオォォォ
2mを余裕で超す筋肉ムキムキの大男がフルプレートアーマーに身を包み、槍を手に突進して来る。
「な、何だぁ!?」
「おりゃああぁぁぁ!」
「うあっ」
「ぐあっ」
進路上の兵士を吹っ飛ばしながら俺に向かって一直線に直進して来る。
「やれー!やっちまえー!」
「挽肉にしろー!」
「カ、カズヒコ!避けろー!そいつは!」
「死ね賊めがぁー!」
眼前に槍が迫る。
サッ、と顎が床に付くぐらい身を屈めると真横に足を出した。
今にも槍で突くぐらい肉薄していた大男は武技を使った勢いもあったのだろう、俺の動きに咄嗟には対応出来ない。
俺の足に引っ掛かり盛大に転倒した。
ドガシャアァァァ
俺は直ぐに身を捻って飛び掛かりナイフを膝裏に刺し込む。
「ぎゃあぁ!」
「そいつは・・・」
アーマーに守られていない膝裏は簡単にナイフを受け入れた。
「きっ、貴様!卑怯だぞ!」
「そい・・・つ・・・」
大男は重く動き難いフルプレートアーマーに加え自身の重さもあって《身体強化》したとはいえ起き上がるのにもたついていた。
俺は起き上がり大男の尻を踏んずけもう一方の膝裏を刺す。
「にぎゃあぁぁあ!」
「賊はおめーらだっつーの。反乱する方が卑怯だっつーの」
「はっ、反乱ではない!聖なる戦いだ!ルンバキアの為の戦いだ!」
「ルンバキアの為って言いながらルンバキア人を殺してんじゃねーよ」
倒れたままの大男の鎧の隙間にナイフを刺し込んでいく。
サクサクサク
「ぎゃあぁぁぁ!止めろー!止めてくれー!」
『・・・』
「君達何やってる?後ろの連中ブッ殺したまえ」
「「「「・・・はっ!」」」」
『・・・あっ!』
後ろの兵士達も放心していた。
「みんな!撃ちなさーい!」
「「りょうかーい!」」
「お、おう!」
ケセラが前に出て俺を追い越しみんなの盾になる。
「ひゃあぁー!」
「やられちまった!」
「逃げろー!」
兵士はとんずらをかました。




