⑬-12-382
⑬-12-382
街の中は大混乱・・・という訳ではなかった。
「人がそんなに居ないね」
「反乱と言っていたが・・・」
「カズヒコ、どう思う?」
「街の人達が大挙して逃げる・・・訳でもない。家の中に籠ってる感じだな」
「そうね」
窓からチラチラ窺ってる様子が分かる。
「煙の場所だが或る方角に集中している」
「或る方角?」
「そこに行ってみよう」
「分かった」
道は空いていたので楽に移動出来た。
非常時なので乗車したままだ。
「この方角は王城だ」
「間違いないか、ケセラ」
「あぁ」
「なるほど。反乱は外から攻められたんじゃない、中からか」
「中から?」
「だから戦闘が限定されてるんだろう。街に被害が少ないのもその為だ」
「人々が逃げないのも街中で争ってないって事ね」
「つまり王城が中心地って事?」
「恐らくな」
「もっと近づくか?」
「あぁ、頼む」
王城が見える通りに入り王城の様子を見る。
少し離れていたが煙が上がっているのが分かる。
やはり王城が中心地らしい。
そのまま王城近くに進むと商店に押し入っている者達が居る。
「ルンバキア兵だ!」
「味方の兵が何故略奪してるんだ!?」
「知らん!」
「とりあえず話を聞こう。戦闘用意」
『了解!』
「ケセラはマスクを被れ。これ以後知った奴に出会うかもしれん」
「そうだな、分かった」
「おい!貴様等何をやっている!」
「何だてめぇは!」
「国を守る兵士が何故略奪してるんだ!」
「うるせぇ!おい!見られたぜ!」
店の中から兵士達が出て来る。
「よーし!女攫っておさらばしよーぜ!」
「そうだな!戦いなんてやってらんねーっつーの!」
「やっちまえ!」
「射撃開始」
ヒュヒュヒュン
「おぐわっ!」
「あっつ!」
「ひぐっ!」
「ててててめぇら!」
「「《風刃》!」」
「ぎゃっ!」
「あひぃ!」
「1人は残しとけよ。事情を聞く」
『りょーかーい!』
あっという間に鎮圧されて1人だけになった兵士から事情を聞く。
「たたた助けて!」
マチェーテの峰で鎖骨を折る。
「ぎひぇー!」
「聞かれた事のみに答えろ。それ以外は痛い目を見るだけだぞ。分かったか?」
「あいいぃぃぃ、はいぃぃぃ」
「よーし。じゃぁ何が有った」
「何とぉぉぉ言われますとぉぉぉ」
「何で戦闘が起きてる」
「しょっ将軍達が王城を攻めたんでさぁ」
「将軍、達?」
「あいぃぃぃ。俺等はその将軍の所属でぇぇぇ。王城に攻めるって命令なんか聞けるかってぇぇぇ」
「それで商店を略奪してたのか」
「はいぃぃぃ」
「将軍は誰を攻めてるんだ?」
「そこまでは知りませんんん」
「軍隊によるクーデターか」
「みたいね」
「王城を取ったら勝ちって事?」
「そういう事だな」
「お願いしますぅぅぅ命はぁぁぁあう?」
心臓を貫いた。
「殺さなくて良かったんじゃないの?」
「ミキ姉ぇ、略奪は死刑だよ」
「略奪しに戦争に行くのに?」
「敵地での略奪は相手にダメージですからね」
「国内の、しかも公都を略奪なんぞ兵士ではない!」
「キルフォヴァの街軍みたいだな」
『あー』
「あんまり質が良くなかったあれね」
「専横の影響か」
「元凶が目の前に居るって事か」
「って事は大臣と将軍が組んでクーデターを起こしたのかな」
「それを探りに行くぞ」
「どうする?」
「恐らく城門付近でも小競り合いが起きてる。兵士が少ない所を強行突破しよう」
「強行突破って、カズヒコらしくないじゃん」
「むしろこういう混乱状況だからこそ活きるのさ」
「それは言えるな。軍隊と軍隊の戦いだ。たかが5人程度それほど気にも留めまい」
「そーゆーもん?」
「城に忍び込めればこっちのものだ。《偽装》して情報を集めてレイヴで知らせれば良い」
「レイヴは?」
「屋根の上に留まってるわ」
「ではいつでも呼べますね」
「そうね。じゃぁ弱そうな所に行きましょう」
『はーい』
『うおおおぉぉぉ!』
「押せ押せ押せぇー!」
「入れさせるなー!死守せよー!」
『うおおおぉぉぉ!』
公都オラキアには壁が3つある。
外壁、内壁。この2つは街壁だ。
そして城を囲む城壁。
王城の周りに建てられた壁は内外壁に比べて高くは無い。
しかし城を守る、文字通り最後の壁なので当然門兵が配されていた。
その門兵と戦っている兵団が居た。
東門は開いてしまっていて、その開いた門付近でせめぎ合いが起こっていた。
「どっちが反乱軍なのか分からんな」
「普通攻めてる方じゃない?」
「そうだよねぇ」
「普通はね」
「しかし反乱軍が門を占拠し、奪回をしている最中という事も考えられるぞ」
離れた街角から荷車に乗って望遠鏡を覗き込みながら話し合っていた。
「そーゆー事も考えられるかー」
「カズ兄ぃはどー思う?」
「煙が城から出てるからな。ケセラの考えもアリだな」
『うーん』
「しかし城から煙が出てるのにここでもまだ戦ってるって事は勝負はまだ着いてない。城でまだ現体制派が頑張ってるって事だろうな」
「でもみんな一緒の装備じゃぁ見分けがつかないよぉ」
「ホントね」
「あいつ等の左腕を見てみろ」
『左腕?』
「あっ!何か巻いてるね!」
「色・・・赤色の布を巻いてますわ!」
「守ってる方は巻いてないわね!」
「あれで区別をしているのか!」
「じゃぁ見分けるのはそれで良いとして。巻いてるのがどっちかって事よね」
「普通は巻かないから巻いてる方が反乱軍だとは思うが、確証は無いな」
『うーん』
「反乱軍が!恩を忘れおってぇー!」
「あの公女じゃぁ無理なんだよぉー!」
『おっ!』
「あの公女ってセーラさんよね」
「だよねぇ」
「って事は攻めてる方が反乱軍ですか」
「よし!一応声掛けよう」
「はっ!?」
「あの中を?」
「最初が肝心だ。間違えては駄目だよ。公女派も居るんだし」
「・・・そうだな。ここで間違ったら私達も反乱軍扱いされる」
「・・・そうね。奇襲のアドヴァンテージを失うけど仕方ないわね」
「うん、そうだね」
「そうしましょう」
「よし。側面から近付いて全体に声を掛ける。反応次第で即戦闘開始だ」
『了解!』
「見ろぉー!城はもう直ぐ落ちる!早く降伏しろぉー!」
「喧しいー!一昨日来んかぁー!」
「あー!あー!テスッ、テスッ」
「テストなんて良いから早くしなさいよ!」
俺はメガフォンを持っていた。
木の板で作っただけの簡単な物だ。
ホイッスルを吹く。
ピイイイィィィ
『なっ、何だ!?』
「ちゅうもーく!」
『ん!?』
「将軍から援軍の命令を受けてここに来た!助けが欲しいのはどっちだ!」
「こっちだ!反乱はこの赤い布を巻くって聞いてるだろ!」
「攻撃開始!」
『了解!』
ヒュヒュヒュン
『ぐあああ!』
「なっ、何やってる!俺達は味方だ!」
「そうだ!神の下に送る助けをしに来た!」
「なっ、何だとっ!」
「くそっ!公女派だっ!あの者共を殺せぇー!」
『うおおおぉぉぉ!』
元々20人対20人程で戦っていたのだが横槍を入れた俺達に怒り心頭に達した指揮官が兵力を2分した。
ケセラに馬車を走らせ後退しつつ射撃を継続する。
俺は目立つように御者席の背もたれに立って高い所からメガフォンで語り掛けていた。
「降伏しなさい!戦いからは何も生まれない!武器を捨てるのです!」
「やっかましぃーわ!」
「殺せぇー!」
「公女様に何の罪が有ると言うのでしょう!神はあなた達の所業を天から見ていますよ!」
「聞くな聞くなぁー!世迷言を聞く必要は無ぁーい!」
「あなたのお母さんも心配しています!武器を捨てて投降しなさい!」
「ここには居らぁーん!いい加減な事を言うなぁー!」
「おっかぁー!」
「聞くんじゃなーい!」




