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HappyHunting♡  作者: 六郎
第13章 ハッピー・リバースデイ (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
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翌早朝。

タリルコルさんに出発の前に挨拶に訪れた。

物資の補給を済ませる。


「それでは行って来ますね」

「うむ。マヌイをよろしく頼む」

「ヤヌイにも言われてますよ」

「マコ兄ぃ」

「マコル君・・・で良いんだったな」

「はい。公都オラキアではマコルで行くんで」

「分かった。キルケもそのようにな」

「畏まりました」

「バレンダルの事は任せてくれ」

「はい。オラキアからレイヴを送ります」

「グルァ」

「うむ。この子に返信を持たせよう」

「グァ」

「マヌイ、挨拶をおし」

「うん。行って来ますね、タリルコル様」

「気を付けるんだぞ」

「はい」

「キルケ達も達者でな」

「旦那様も、お世話になりました」

「うむ。立派な店に育てなさい」

「はい」

「では、また会いましょう」

「うむ。待っているぞ」




ビグレット商会を辞し、ファーダネさんに会いに行く前に共同墓地に寄った。

全員で献花した後、マヌイを1人残して離れて見守る。

マヌイはバレンダルに戻って来て直ぐに来る事は出来なかった。

ヤヌイには助けられなかった事に、マコル達には我を忘れて突っ走ってしまった事に対する負い目を感じていたからだ。

彼女がどう気持ちを整理していくのか。

僕達には見守る事しか出来ない。

僕達の下に来た時に3人から抱きしめられていた。




キルケ達を連れてセーラ達に会う。


「この方達がマコルの従者ですか」

「はい。ご挨拶を」

「キキ、キルケと申します。セセセルラムディ殿下に御拝謁を賜り恐悦至極に存じ奉ります!」

「うふふ。そう畏まらなくて構いませんよ。マコルと違ってお堅いのですね」

「これが普通なんですよ」

「自分で言うか!?」

「まぁまぁラーン。この方達も私の護衛を?」

「流石に殿下の護衛を冒険者を多くするのも外聞が悪いでしょうから、彼らには輜重隊を護衛してもらおうかと思ってます」

「そうだな、クルト」

「・・・はっ。早速組み込みましょう」

「よろしくお願いします」

『ふぅー』


キルケ達は公女様の護衛をしなくてすんでホッとしているようだ。

キルケとその補佐2人は商人要員なので護衛には勿論向かないし輜重隊に居た方が輜重隊の護衛に守ってもらえるし、こちらの護衛も輜重隊を守れるし、お互い良いだろう。


「よし!では参りましょうか!」

「あれっ!?ファーダネ様も行かれるのですか?」

「勿論だ!何を言ってる」

「バレンダルの統治は?」

「この話が来てから代官を呼んで引き継ぎをしてきた。問題は無い」

「では即位式にも?」

「うむ!ソルスキア王国名代として参加する」

「そうだったんですね」

「・・・マコル」

「はい」

「・・・セルラムディ殿下の護衛に冒険者を配するのが気に入らん者も居る。その辺、気を付けてくれ」

「分かりました。お任せください」

『・・・』

「頼むぞ」

「だーいじょうぶですって。筏に乗った気でいてください」

「た、頼むぞ」




西門を潜ってソルスキア軍1000人はバレンダルを後にした。

名目上、公女の大公即位を祝賀するという理由による参陣だが実戦を想定した軍だ。

公女はソルスキアが用意した箱馬車に乗っている。

僕等は少し離れて自前の馬車に乗っていた。

流石に公女の箱馬車の近くにみすぼらしい馬車は不味いのだろう、離れるよう言われていたからだ。

それに箱馬車の周りは騎乗兵で固められている。

大丈夫だろう。

僕等の馬車の御者はサーヤ君が務めている。

軍隊に守られているのでケセラでなくとも大丈夫だろうというのと、将来の《馬術》習得に向けてだそうだ。張り切っている。

キルケ達にも僕達の改造馬車をあてがった。

道中の疲労も軽減出来るだろう。

5カ月前にもこの門から真冬の最中、北に旅立ったのだ。

少し懐かしいような気がして門を見上げながら通り過ぎて行く。

マヌイも同じような思いなのだろうか、少し名残惜しそうだった。


街道の分かれ道を北に行く。

北に行かずこのまま真っ直ぐ行けばベルバキア領への道に繋がっている。

僕等が今回来た道だ。

北への道は前回向かった道だ。

やはり冬と景色が大分違う。

6月に入った季節は森の青味も濃くなって少し暑く感じられた。

途中街に寄って上層部は統治官や領主の屋敷に泊まり、兵達は練兵場なりにテントを敷設したりして過ごす。

その間に周辺の領兵を少しずつ吸収して国境の山に辿り着いた頃には1500人程にまで増えていた。

ソルスキア側の山腹で野営をしていた。


「あの馬車は凄いですね!揺れが軽減されてます!」


キルケ達と夕食を摂っていた。

収納袋は使えないがこっそりと食材なんかは袋から出していた。


「もっと速度に乗った時が真価を発揮するんですけどね」

「そうなのですか」


セーラはファーダネさんら幹部達と過ごしているので僕等はキルケ達と休憩中だ。


「キルケさんは幾つなんですか」

「32です」

「結婚は」

「妻1人、子2人です。女、男の子です」

「子供まで!?ムルキアに行って大丈夫なんですか!?」

「成功して早く呼び寄せたいですね」

「危険を考えて女性は中継地に行かせるって言ってましたが」

「冒険者が命を張って魔物を狩るように、商人も命を張って商いをするんですよ。それにどんな職業にも危険は付き物ですよ。職人は事故が、農民は自然が」

「家族を危険に晒して?」

「それを言ったらルンバキアに住んでる人達に怒られるでしょうな」

「・・・そうですね」

「確かに怖い気持ちは有ります。しかし私達が商売をする事で北部を弱らせる事が出来るなら、喜んでお手伝いしますよ」

「キルケさん」

「マコルさん。あなた方はあなた方の戦いをして下さい。私達は私達の戦いをします」

「・・・分かりました。一緒に儲けましょう」

「ははは。そうですな。それに成功すれば金持ちになれる。打算も有りますよ」

「人間はみなそうですよ。逆に打算のない奴はちょっと信じられませんね」

「ほぅ」

「捻くれてるんですよ」

「まだ若いのに。若い冒険者は夢見がちなものですが」

「「「「ぶっ」」」」

「命のやり取りを目撃してますとね。経験するんですよ」

「ははは。知りたくはありませんなぁ」

「子供達にも見せたくはないですね」

「・・・同感ですね」

「そういう世の中にしなくてはなりません。綺麗事ではなく、ね」

「いつになるかは分かりませんが。ビグレット商会から始めましょう」

「えぇ」




しかし夜中は僕等はセーラの近くに配された。

セルラムディ殿下の要望らしい。

ファーダネさん以下3人は僕達の索敵力は知っているので問題は無いのだが護衛している兵士達には良く思われていないのだろう、目線がきついものを感じた。

そしてセーラのテントからメロディが流れていた。

そうこうして居心地の悪さを感じつつも無事、山越えを終えルンバキア領内に入った。

幾つかの村を過ぎてアルビジェの街の近くで野営をする。

流石に街の中には入らない。

野営の準備をしている中呼び出された。

幕下で説明を受けている。


「アルビジェの街主から宿泊施設の提供を受けている?」

「そうだ」


この行軍は先触れを走らせて通過する先の街々に知らせるようにしてある。

同盟しているとはいえ他国の軍隊が近くを通るのだ、しない訳にはいかない。


「殿下の旅の途中、裏切った街主も居たという話だが」

「はい。アルビジェの街主もそうだという事ですか」

「可能性としてはな。はっきりとは分からん」

「冒険者ギルドに限った話ですが、少なくともマスターはマスターの器ではありませんでしたね。何でこんな奴が?って」

「何らかの手段でその地位を不当に得た、と?」

「可能性は高いと思います」

「ふーむ。冒険者ギルドマスターが反殿下派であれば街主もその可能性が高まるな」

「セーラ様の護衛旅行でアルビジェは当初のルートで滞在する最後の街の予定でしたからね」

「ふーむ。最後の機会を狙っているのやも・・・」

「もしくは、セルラムディ殿下が大公になられるのがほぼ決まりになって取り入ろうとしてきているとか?」

「可能性は有るな」

「どちらにしろあまり良い事ではありません、寧ろ余計な緊張で兵を草臥れさせるだけです」

「・・・とは言うがレネ。殿下は大公になられれば諸侯と付き合う事になる。無碍には出来まい」

「それは、そうですな」

「食料や水の提供だけしてもらえば宜しいのでは?」

「・・・それが宜しいかと」

「殿下。余計な負担を掛けたくないと断りましょう」

「はい。そうして下さい」


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