②-21-38
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その後数日もお兄っちゃんに何か言われながらも稼ぎに出ていた。
「おっ、この《罠》って凄いぞ!菊池君!」
「何が凄いんです?」
「罠は仕掛けが難しいんだが、この《罠》は仕掛けを魔力で作れるみたいだ」
「仕掛け?」
「例えばだね・・・籠の中に餌を置いて、獲物が餌を食べると餌に付いていた糸が引かれ駕籠が獲物に覆いかぶさるって言う罠があったとする」
「典型的なザ・罠ですね」
「その糸の代わりに魔力を使うことが出来るみたいだ」
「えっ、すごくない?魔力の糸って見えないんでしょ?」
「あぁ、見えないな。ただ《罠》にしか使えない、普段使えるわけではないみたいだ」
「ふ~ん。まぁ、でも設置にかかる時間も短縮できるし凄いじゃないですか」
「あぁ、ちょっと色んなトラップを考えてみるよ」
「《隠蔽》も使えばかなりの物作れますね」
「ホントだな。冒険者辞めても狩人で食っていけそうだ」
「そこら中に罠設置しといたら良いんじゃないですか?経験値的にも」
「こらこら。他の冒険者や猟師が危ないだろ」
「そっかー。でもそう考えると凶悪ですね、罠って」
「あぁ、無差別だからね。ある意味テロだな」
「テロで死んだ身としては・・・」
「そうだね。だから罠はちゃんとコントロールして分別を持って扱わないといけないね」
「気を付けましょうー」
「あとなんでランクアップしないんです?この街ではする方向で話してたじゃないですか」
「いや、なんとなく・・・ね」
「そう言えばあの受付のお姉さん胸大きかったですね」
「ドキッ」
「・・・今日はランクアップしましょうね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
「そんなに!?」
結構GP貯まってたみたいでEランクになった。
このまましばらく狩り続けよう。
俺のスキルは《頑健》さんと《病気耐性》の2つ以外全部を使って狩りをするのでスキルLv上げにも都合が良い。
もしかして《頑健》さんも知らずに働いてくれてるかもしれないな、それを言えば《病気耐性》もか。
無駄なスキルが無いのは喜ばしいが、怪我で冒険者を続けられなくなったら無駄になりそうだ。怪我だと猟師も無理だしな。
益々冒険出来なくなった。
怪我を承知で高ランクの依頼やるより、今の狩りのルーティーンが丁度いいのだろう。
今のペースでしばらく狩りを続けていた。
納品館に寄って狩りの成果を納品しお兄っちゃんと駄弁る。
「いやぁ~、おめぇらがEランクかぁ~」
「お世話になってます。Eランクになったのは少し前ですけど」
「まだ若ぇーのになー」
「今冬なので採集依頼が無いのが残念ですねー」
「まだ稼げるってか?いやはや・・・おめぇらならコロリタケも殺れるかもな」
「「コロリタケ?」」
「あぁ、コロリマイタケ。毒持ちだ、強力なな」
「あぁ、それでコロリ」
「高いんです?」
「あぁ、今なら・・・えーと、2万だな」
「「ブッ!?2万!?」」
「あぁ。身はネムリタケやマヒタケなんかよりも美味く、毒も強力で薬にもなる」
「こ、こ、ここら辺に居るんですか?」
「いや、おめぇらコローから来たんだろ?コローの領の領都ヴィヴィエントだよ」
「「領都!?」」
「知らねえのか?こっからだと・・・馬車で南へ5日だな」
「遠いですね」
「迂回しなけりゃいけねぇかなら。コローからならもう少し早いが。でもここから経由して行くよりかは早いぜ」
「この辺は森が大きいですもんね」
「あぁ、大きければ魔物もそれだけ居るしな。山がねぇのが救いだよ」
「菊池君」
「はい」
「我々の今後の目標が決まったな」
「そうですね。ヴィヴィエントでコロリマイタケを狩る。これですね」
「あぁ。今から向かってもいいんだが・・・」
「馬車で5日ですか。長いですね」
「あぁ、しかも初めての土地で土地勘もない所を5日も歩くのは危険だろう。それに前言った護衛依頼の事もあるし、移動には護衛依頼を受けて行くというのはどうだろう」
「そうですね。そう考えると丁度良かったですね」
「となればギルドランクを上げるか。流石にEじゃ無理だろう。依頼主が不安で雇ってくれないだろう」
「じゃぁ、しばらくこのまま狩り続けましょうか。お金も貯まるし、あっ、装備また買います?」
「そうだね、武器防具屋を覗いてみるか」
武器や防具に関してはコローの街と大差ない品揃えだったのでこのままでいくことにした。
それからしばらくはギルドランクを上げる為とお金の為に狩り続けた。
そのお陰か、スキルのLvも上がっていた。
レベルアップしたスキルは、
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殺菌Lv3、魔力感知Lv3、隠蔽Lv3、魔力検知Lv4、魔力操作Lv3、
見切りLv2、罠Lv2、雷魔法Lv2
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更に菊池君もまた上がっていた。
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掃除好きLv2、解体Lv2、風魔法Lv3
弓術Lv1←New
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「って言うか上がり過ぎでしょう」
「僕の場合ほぼ全部使ってマイタケ殺すからスキル上げ効率が良いんだろうな。それより雷はやっとって感じだよ」
「そう言われると私のスキルは確かに単独で使ってるものばかりですね」
「《掃除好き》は魔物を倒せないから上がるのも時間掛かるんだろう」
「そうですねー。そう言えば《魔力感知》の射程は伸びました?」
「よくぞ聞いてくれた!実は8mになりました!」
「えっ!?8m?6mじゃなく?」
「はい。8mです!」
「すごくない!?ひょっとして2の階乗で伸びるんじゃ?」
「だと思います!」
「ちょっと!私も欲しい!」
「魔幼虫は今の季節ー、難しいですねー」
「くっそ!」
「ま、まぁまぁ。マイタケ鍋でも食べに行こうよ」
「・・・《殺菌》と《雷魔法》の射程は?」
「それは全然伸びてないんだなこれが。それぞれ5mと1mと変わらず」
「良かったー」
「なんでだよっ!」
「風魔法はどうなの?」
「射程と威力が上がりましたね」
「凄いじゃないかっ!完全な中距離タイプだね」
「クロスボウ持ちですから中~遠距離ですかね」
「《弓術》はどうなの?」
「撃った後微妙に軌道をずらせるみたいです」
「凄いじゃないかっ!」
「でもずらせるのは自分の魔力の影響範囲内だけみたいで、そんなに広くないんですよね」
「いやっ!それでも凄いよっ!動いてる的に当て易くなるんだろう?それは良いなー」
「そうですね。魔犬とか狩り易くなってました」
僕達はスキルLvも上がりギルドランクもDになったのでそろそろ領都ヴィヴィエントに向かう準備をしていた。
なんだかんだでこのコンテの街に2か月くらい滞在していた。
ギルド本館に入ってヴィヴィエントまでの護衛依頼を探すと何件か有った。
受付嬢に聞いてみる。
「あのー、ヴィヴィエントまでの護衛依頼を探してるんですけど何件か有りますよね?どう違うんでしょう?」
「はい。大きく分けて街からの依頼と、商会からの依頼とに分かれます」
「なるほど。どう違うんでしょう?」
「街からのは定期便なのでいつもと同じ馬車の台数や同じくらいの荷物となりますので冒険者としても護衛の見積もりがし易いかと思います。商会のはその時々で内容が違いますので依頼者と確認し合わなければいけません」
「なるほど。ではこのリオンヌ商会の依頼を受けたいと思います」
「はい。ではこの依頼票を持ってリオンヌ商会の店に行ってください」
僕達はギルドを出たその足で教えてもらったリオンヌ商会を訪ねた。
商会館は周りよりも幾分大きな店で、雑貨や食料など色々なものを扱ってるらしかった。
店員に取り次いでもらい、2階の応接室に案内された。
案内されたソファーに座り室内を見回す。
絵画などが有りなかなかな調度品だ。
普通の店とは違う。
ヴィヴィエントまでということはヴィヴィエントにも店を持ってるのだろうか。
室内の装飾からは派手なイメージは受けない。
下品な感じもしないし落ち着いた印象を受ける。
ノックの音がする。
「お待たせいたしました」
40代くらいの男が入ってきた。
「リオンヌ商会の主、ミシェル・リオンヌと申します。どうぞお掛け下さい」