②-19-36
②-19-36
マヒマイタケは高くない頻度で狩ってメインはゴブリンを狩っていた。
マヒマイタケを狩る時は常に、《魔力検知》《魔力操作》《魔力感知》《殺菌》の4つのスキルを発動していた。
その御蔭なのか、
「《魔力検知》《魔力操作》《魔力感知》のLvが上がった!」
丁度マヒマイタケを殺した時に上がった。
「えっ!?3つも上がったんですか?」
「あぁ。マイタケを殺すときはそれに加えて《殺菌》を使ってるんだが、《殺菌》だけじゃなくその3つにも経験値が入ってたってことは、殺すときに使ってることが条件っぽいな」
「使ってるだけでいいなら上げ易いでしょうから、倒す時に影響があったスキルってことではないですかね?」
「なるほど。そうかも知れんな」
「《魔力感知》の有効範囲が増えたか調べましょうよっ!」
「そうだな、そうしよう」
俺はまた目を瞑り菊池君から離れていく。
「あ~、来てます。来てます。感じますよー」
後退りながら菊池君から離れていく。
あれ、前よりも遠くなっていくな。伸びてるんじゃないか。
感じ取れなくなった所で目を開けた。
「おぉっ!4mくらいか。長くなってるな!これはすごい!」
「倍ですねっ!でも4mか・・・」
「何を言ってるんだ伸び率が倍だぞ!倍!これで近接による不意打ちは無理だろう!」
「おぉ!そう考えれば確かにすごいですね!常時展開、パッシブなんですよね?」
「そうだ、パッシブなのだよ!ふふふ。これは凄い」
「《魔力検知》と《魔力操作》の方はどうなんです?」
「いや、全く変化を感じられないんだよね・・・」
「・・・そうですか」
「・・・まぁ、これでマイタケもそんなに近づかなくて良くなったし、より安全に殺せるな」
「そ、そうですよ!それにこのまま倒していけば《殺菌》も同時に上がっていくし。すんごいお得ですね!」
「だよね!経験値も稼げてお金も稼げる。いやーキノコ様様だなー」
それからは4mの距離からマイタケを殺せるとあって精神的な負担が減ったこともあり、マイタケの前にゴブリンを殺ろうということになった。
流石にマイタケ30kgを背負っての戦闘は避けたい。
戦闘時に置けばいいのだが傷がついて値段が下がるのが嫌だった。
そうやってゴブリンを含めることで1万エナ越えを達成していった。
そんなマイタケ休養日の狩りの日。
いつもの様に練習をしながらゴブリンを狩っていた。
「う~む」
「どうしたんです?」
「あっ、いや最近動きが更に見えてきたなぁ~って」
「安定してきてますね」
「菊池君」
「?」
「気付いた事があるんだが」
「またですか。今度は何です?」
「ゴブリンと戦う時、僕達が先に見つけることの方が多いだろう?」
「・・・そう言えばそうですね。魔犬は先に向こうから近づいて来てますし、幼虫はいつの間にか近づいて来て《魔力感知》で見つけるって感じですよね」
「そうだ。犬は・・・恐らく臭いだろう。幼虫は魔力を感じてるんだろう。ゴブリンは?」
「視覚・・・でしょうか。臭いも有るかもしれませんけど、これまでの経験で言うと嗅覚が優れてるとは思えませんね」
「同感だ」
「じゃぁ、どうやって索敵してるんでしょう?」
「恐らく視覚だ」
「えっ?でも・・・」
「次にゴブリンと戦う時、奴の目に注目して見てくれ」
「目・・・ですか?」
「あぁ」
「分かりました」
いつも通り、僕達はゴブリンよりも先に相手を見つけ、罠を張り、攻撃を仕掛け、見切り、受け流して止めを刺した。
「どうだった?」
「特に変わったことは・・・」
「目はどんな目をしてた?」
「ん~。私達人間とは違う目でしたね。そう言えば」
「その通り。似ているとすれば猫の目だろう」
「猫?」
「あぁ。彼らはこうやって森にも居るが、恐らくこれは食料を調達するためだろう」
「そう言えば、巣は洞窟とかが多いとか・・・夜目ですかっ!?」
「あぁ、多分な」
「そう言えば、明るい所では細くなったり・・・瞳孔が閉じてたんですね」
「そうだろうな。洞窟なんかの暗い所では光を多く取り込もうとするため瞳孔が開くはずだ」
「・・・でもそれが先に見つけられないのとどう関係が?」
「猫は近視なのだよ・・・菊池君」
「近視!?じゃぁ遠くはハッキリ見えない!?」
「あぁ、恐らくな。ただ光の反射や影の動きは分かるだろうからその辺に気を付けて動けばこれまで通り先制出来るはずだ」
「なるほどー!」
「・・・・・・」
「どうしたんですか?」
「・・・いや、たった今なんだが・・・」
「えぇ?」
「《見切り》って言うのを習得したみたいだ」
「は?」
「《見切り》って言うのを、習得しました」
「見切りって、先輩が言ってた相手の動きを見切るっていう・・・」
「多分・・・」
「それが今何で・・・?」
「う~ん・・・」
「《魔力感知》を習得した時も同じような感じでしたよね」
「そう・・・だったかな?」
「そのスキルを習得するのに、そのスキルを経験するのは勿論ですけど、理解するのも大事なんじゃないでしょうか」
「でも《見切り》って、理解は・・・相手の動きを見るスキルなんじゃない?」
「でも相手の特徴を見切ったと言えなくもないです」
「なるほど。相手の能力を見切れば動きもある程度見切れるようになると」
「相手というか・・・」
「魔物の能力とか特徴みたいな?」
「そうですね。ゴブリンの目が近視って《見切れ》たからこそ習得したんじゃないでしょうか」
「それはあるよ、菊池君。流石だな」
「いや、習得したのあんただよ」
「って言うか習得して良かったんですよね?9個目ですよ!」
「あっ」
「あっ、じゃねーし!良いんですか?」
「まぁ、良いんじゃないかな。便利そうなスキルだし。受け流しもやり易くなるだろう」
「まぁ、先輩が良いって言うんなら良いんですけど」
「ちょっと慣らしでゴブリン狩ってみよう」
ゴブリンを見つけて、慣らしも兼ねて練習してみる。
「これは凄いぞ菊池君!見える!見えるぞ!私にも見える!」
「そ、そうですか」
「同じ人型だからか全体的な筋肉の流れから次の動きが見える!体重移動や呼吸のリズムでタイミングが測れる。攻撃の軌跡が見えるようになる!」
「対人向けですか」
「いや、4足動物も、4本足だけじゃなく全体の筋肉なんかを観察すれば見える様になるかも知れん。菊池君!解剖してくれ!」
「いーやー!」
それからしばらくは安定した稼ぎにいつもの練習、スキルの検証と忙しい日々を送っていた。
「明日は元日だな。どう過ごすんだ?」
お兄っちゃんが納品終わりに聞いてきた。
「えっ、元日?」
「なんだ、知らなかったのか?」
「もう1年も終わるのか・・・」
「それどころじゃ無かったですもんね」
「まぁ、冒険者やってりゃーな」
「因みにギルドは?」
「勿論通常営業だぜ。魔物は休日なんてねーだろーしな」
「そりゃそーだ」
「2人で考えましょうか」
「そうだな」
「今年はありがとうございました、良いお年を」
「おう、おめぇらもな。あ、あと受付嬢が声を掛けてくれって言ってたぞ」
お兄っちゃんと別れ、年の瀬の街を菊池君と歩く。
年末年始の為の買い物客か、結構な人通りだ。
「転生して来たのが晩春か初夏くらいだったから・・・もう半年くらいか」
「そうですね。短かったような長かったような」
「死んじゃったしね」
「ふふ、そうですね」
「1度死んだから大事に生きたい、とは言え魔法を使えるんだからリスクを取ってみたい」
「今の所良い感じだと思いますよ」
「そうだなー。2人で1日1400エナだった頃と比べれば、7倍以上か。うまくいってるね」
「えぇ。それもこれもキノコ様のお陰ですよ。あっ、キノコ鍋食べに行きます?」
「そういや、狩るばっかりで食べたことなかったな。良し、食べに行こう」
「そうしましょう!」
「今年1年世話になったね、菊池君。来年もよろしく頼むよ」
「りょーかいです!しゃちょー!」