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HappyHunting♡  作者: 六郎
第12章 グッドモーニング (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
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陽が昇って大分経ってからセーラとラーンも起きて来た。

疲れていたのだろう。

僕等もだが。

しかし貴族というのは兎角鈍かった。

起きるのにも準備が必要、食べるのにも準備が必要。

侍女は主人が食べている間は自分は食べないから余計時間が掛かる。

野営中でしかも追われている身で勘弁してもらいたい。

宿に居る間はまだ我慢出来たが、自覚有るのだろうか。

いや、無いだろうな。

それを当然とした生活の中に居たんだ、誰かが指摘しなきゃ分かるまい。

しかしその指摘出来る人間が居ない。


「優雅ですなぁ」

「公女であらせられるのだからな」

「皮肉を言ってるのですよ」

「「・・・」」

「追っ手に追い付かれなきゃ良いけど」

「護衛が仕事だろう」

「えぇ。セーラ様だけね。他は見捨てますよ」

「「・・・」」

「ナメクジンの時の様に助けませんからね」

「構わん!頼んでもいない!」

「セーラ様に頼まれたから助けたのですが、それであれば以後必要なさそうですな」

「ラーン」

「僕達が荷馬車を盗んで消えるって事は考えなかったんですか?」

「「「!?」」」

「でもしなかったのでしょう」

「まぁね」

「神の思し召しです」

「!?ふっ」

「何だ」

「昨夜のも神の思し召しとやらですか」

「「!?」」

「いや違うな。試練?」

「何故村人は私達を殺そうと・・・」

「恐らく無届の村だったんでしょう」

「無届・・・そうか。貴族であるセーラ様が他の街に行けば村の存在が知られる恐れが有った」

「ついでに金品も奪えますしね」

「・・・」

「ナメクジンを討伐したらお払い箱って事ですかね」

「・・・」

「早くして下さい。先ずは村か街へ向かわないと」

「貴様!セーラ様に対して!」

「・・・えぇ。そうしましょう」

「セーラ様・・・」




とっとと朝食を済ませてもらって移動を始めた。

例によって俺と菊池君とマヌイは早歩きだ。

真夜中に火に当たりながら戦ったので日中は疲れもあり非常に眠かった。

まだ20代の身体で助かった。

しかし精神が40代だと疲労も違って来るのか?

そうこうしている内に感知範囲に人間の反応が現れた。

これは恐らく街道を通ってるものだろう。

ラーンに知らせてその反応の方に向かって果たして通常ルートの街道に出られた。

このまま西進して街を目指す。

そして夕方。

日が暮れる前に街に辿り着く事が出来た。

ラーンは貴族なので街に入る行列に並ばなくてもチェックを受けられる。

ラーンが門衛に対応している時門衛は仲間に目配せを送っていた。

目配せを受けた門衛は急いでその場を離れて行く。

簡単なチェックで入街を果たした。

久しぶりの街だ。

街の上空でカラスが回っていた。

歩を進めて宿を探す。

辺境の街1番の高級宿に入りフロントで部屋を借りようとするが、


「最上階が満室!?」

「も、申し訳ありません」

「うーむ。それなら仕方が無いな」

「お待ちを、ラーン様」

「何だマコル」

「普通辺境の街で貴族のフロア全て埋まるものですか?」

「特別な催しや祭りでもない限り滅多にはないだろうが」

「すいません。では空いているのは?」

「も、申し訳ありません。1階になります」

『1階!?』

「貴族に1階に泊まれと言うのか!?」

「も、申し訳・・・」

「結構、この宿には泊まりません」

「えっ!?」

「ラーン様、出ましょう」

「しかし街で1番の宿だぞ」

「ラーン様!」

「むっ。わ、分かった」

「お、お待ちを!責任者に聞いて参ります!」

「急いでくださいよ。遅かったら出て行きます」

「は、はい!」


フロントマンは奥に引っ込んだ。


「強引ではありませんか?」

「殿下が宿泊されるのです。当然で御座います」

「・・・」

「マコルは何か?」

「・・・いえ」


フロントマンが帰って来た。


「う、上から2番目の階なら空いております」

「結構!ラーン様、出て行きますよ」

「えっ」

「お、お待ちを!」

「お早く」

「他の宿は当宿と比べると質が格段に落ちますよ!」

「構いませんよ」

「しかしマコル」

「いざとなったら街を出て野営すれば良いのです」

「む」

「お待ち下さい!再度!再度聞いて参ります!」


そう言ってフロントマンは消えた。


「何故そこまで拘るのです?私なら今の部屋でも良かったのに」

「護衛の仕事です。口を挟まないでください」

「マコル!無礼だぞ!」

「昨夜の件をもうお忘れか」

「む!」

「1階では駄目なのですか」

「1階だと正面の戸、窓、注意する箇所が多過ぎます」

「しかし最上階でも以前窓から襲って来たが」

「1階なら落ちる心配なく襲って来ます」

「なるほど」

「最上階に拘るのは?」

「上の階の人間全員を監視出来ますか?」

「なるほど」

「あの時もそうでしたが最上階の部屋に泊まってる時、上で物音がしたら敵以外あり得ないのです」

「・・・そうですね」


フロントマンが帰って来た。

変な汗を掻いている。


「お、御待たせ致しました!最上階の部屋で結構だそうです」

「直ぐ用意出来ますか?」

「はい!直ちに!」

「直ぐに用意出来るという事は部屋は元々空いていたんじゃないですか?」

「くっ!」

「マコル!良いだろう!疲れているのだ。泊るぞ」

「・・・畏まりー」

「何だその返事は!」

「ラーン・・・」

「むぅ・・・では部屋の案内を頼む」

「か、畏まりました」


部屋に案内されて部屋をクリアリングして安全を確認する。

部屋で荷を解き一息つく。


「さてと、僕は寝る。あとは頼んだよ」

「分かったわ」

「夕飯の1時間前くらいに起こしてくれ」

「?分かったわ」

「またか」


俺はさっさと装備を脱いでベッドに潜り込んだ。


「無理もありません。昨夜は戦闘だったのですから」

「・・・そうですな」

「・・・ラーン」

「は」

「村人を殺す必要は有ったと思いますか」

「・・・」

「正直に」

「・・・は。貴族と分かっていて襲って来ました。返り討ちは当然かと」

「・・・そう」

「魔物の討伐を頼んでおきながら終わったら用済みとばかりに寝込みを襲って火を点ける。極刑は当然として拷問も有り得たでしょう」

「・・・」

「村に火をかける必要はあって?」

「それは・・・」

「有りました」

「マリア」

「火を点けられて村人は分散しました。セーラ様への危険が減り脱出が容易になりました」

「・・・そう」

「姫様はお優しい方だと思います」

「マヤ」

「でも敵にまで優しいとつけあがります。舐められたままだと簡単にちょっかいを出してきます。敵は調子に乗って攻撃してきます。そして大事な人を殺されます」

「・・・」

「大事な人を殺されて後悔するよりも敵を殺して後悔する方がマシです。マコ兄ぃはあたし達に敵を殺せと命令してきます。あたし達が殺す前に、殺さなきゃいけない前に命令してきます。そうやって命令で殺したんだってあたし達に思わせる為に。殺した責任は自分に有るんだって。マコ兄ぃがリーダーだから」

「・・・リーダー」


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