②-18-35
②-18-35
途中魔犬やゴブリンを殺して練習をしつつ本で調べた辺りまで来た。
「・・・舞って・・・るんですよね」
「・・・舞って・・・るんだと思う」
マヒ・・・マイタケなのであろう。
ただコローの種類とは違うのか若干色味が濃い。
相変わらず舞っていた。奉納舞みたいなのを。
舞もコローのマイタケと違うように感じる。
マイタケの周りをキラキラしたものが舞っている。
「四股を踏んでるようにも見えなくもない」
「ぷっ」
ただ如何せん手足が短くピコピコ動いてるだけだ。
「じゃあ、いつも通り罠を設置して《隠蔽》っと」
「こいつも射程は5mだったよね」
「はい。弓でこっち向かせます?」
「いや、今まで通り僕が直接行くよ」
「分かりました」
マイタケ狩りに慣れたらクロスボウを撃ちこむのは止めて俺がそのままマイタケの元へ行くようになっていた。
ただ一応念の為命綱は毎度付けていた。
マイタケの元へ歩きながらマイタケの挙動を窺う。
マイタケはこちらに気付いたようでゆっくりとこちらを向いた後歩き出した。
相変わらず優雅な動きだ。
動きに合わせ胞子が噴きだしている。
以前までと同様、《魔力検知》《魔力操作》を発動し《魔力感知》で位置を確認しつつ《殺菌》で攻撃する。
《魔力感知》で感じるマイタケの魔力は痙攣しているようだ。
いつも通り効いているのだろう。
魔力が徐々に小さくなっていきやがて消えていった。
「ふぅー」
「お疲れさまでした。変わりありませんでしたね」
「あぁ。ひと安心だな」
菊池君がナイフを入れ魔石を取りだす。
布に包んで背負子で背負う。
「今日は初日って事ですし、このまま帰りますか」
「そうだね。そうしようか」
納品館に入った。
まだ夕方にもなっていないので冒険者は誰もいない。
「「おっちゃん!?」」
「んっ?誰だおめぇらは」
「あっ、すいません。知り合いに似ていたもので」
「あー、知り合いってコローの納品館に居る?」
「そう!そうです!ご存じでしたか」
「あぁ、ありゃ弟だ」
「「えぇ!?兄弟!?」」
「そーだ。昔、兄弟で冒険者やってたんだよ。引退して別々の街の納品館で働いてるって訳よ」
(んだよ、こりゃランクアップも五月蠅そうだな)
(ホントですね。もう最初っからランクアップしていきますか?)
(そうだな。揉める必要も無いだろう)
「どした?」
「いえ、世間は狭いなぁ~と」
「はっはっは。領地は違うが隣街だからな。んで納品か?」
「はい。個室をお願いします」
「分かった」
奥の個室に通された。
「んで?その布か?」
「はい」
布で包まれた塊を台に載せる。
そして布を剥がしていき中身を見せる。
「なんだとっ!?まさかマヒマイタケかっ!」
「はい」
「おめぇらみたいなガキがこれを?どうやって?」
「1番、気合で。2番、闘気で。3番、彼女の魅力で。さぁどれでしょう!」
「・・・すまねぇ。ご法度だったな。いやしかしマヒマイタケたぁ驚いたな」
「やっぱり珍しいですか?」
「あ?あぁ。ネムリマイタケの場合、寝かされても運が良ければ起きられることもあるっちゃーある。直ぐに殺すんじゃなくジワジワ寄生していくから途中でな。しかし麻痺はなー」
「何番でしょうー!」
「分かったーって。解体始めるよ」
シンクに入れ丸洗いを始める。
「しかし傷が1か所のみかよ。しかも魔石を取りだしてる。1発で魔石を取りだしたってことかよ。すげーな「何番でしょうー」分かったーって」
「毒袋は幾らくらいになります?」
「2000だ」
「「2000!?」」
「あぁ。麻痺は薬や武器に使われるが特に薬にな。手術や・・・」
「麻薬ですか」
「あぁ。だからおめぇらが此処に持ってくるのは正解だぜ。そっちには流通しないからな」
「でもギルドから買った商人や調合師が・・・」
「まぁな、言いたいことは分かる。ただギルドから買ったってのが大事なんだよ」
「正規のルートってことですか」
「その通りだ。ギルドまでは担保しますよってことだからな。ちゃんと今こうして丸々マイタケが狩られている訳だからな]
サクサク解体をしていくおっちゃん兄、いや兄おっちゃん、お兄っちゃん?
「毒袋も完全だ。文句の付け所がねぇ。今まで見た中で1番のマイタケだ、ビックリだぜ。よし、おめぇらのカード出しな」
2人のカードを渡す。
「!?2人共20才だとっ!?マジかよ。Gランク!?どういうことだ?」
「今日登録したばかりです」
「あぁ、流れか。それで新規登録とマヒマイタケ。何か裏がある訳だな。まぁ、聞きはしないが問題は起こすなよ?」
「父さんの夢を探してるんです・・・」
「「えっ?」」
「キノコの研究をしてて、『この世にはキノコの里』が在るって、でも皆にバカにされて。そのまま死んじゃった・・・」
「「・・・」」
「父さんの夢を探して!父さんの夢を証明してやりたいんです!」
「「・・・」」
「がんばれよっ!!」
(えっ-!?)
「そうか!この倒し方も親父さんのお陰なんだな!そりゃ言えねぇよな!分かった!がんばれよ!」
「はいっ!」
「よしっ!マヒマイタケの8000と魔石は売るんだよな?うん、それの1000とで9000エナだ!」
皮紙にマイタケの魔石と、魔犬や魔幼虫の魔石も少し入れた数字が記入されていた。
それにサインしカードを返してもらう。
「しばらくこの街にいるのか?」
「はい。しばらくは調査しようと思ってます」
「うんうん。がんばれよ」
「あの1つ質問が?」
「どうした?」
「ここらにはネムリマイタケはいないんですよね?」
「あぁ、いねぇな。おめぇらコローから来たんだったな。あいつらは共生しねぇらしい」
「う~ん、何故でしょう?」
「分かってねぇんだよ。マイタケだけじゃなく他の種族にも言えるらしいんだけどな」
「そう言えば魔幼虫の成虫も見ませんけど・・・」
「成虫は山の方だな」
「いるんですね!」
「あぁ。巨大昆虫だ」
「巨大昆虫ぅ・・・」
「そうだ。気を付けろよ。ボルトやショートソードは殻に弾かれるぞ」
「ど、ど、どうやって倒すんですか」
「安全なのは魔法だな。近接なら関節部を・・・な」
「近接には手強そうですね」
「あぁ。ただ冬には森には降りて来ねぇらしいから今は安心だな」
「何ででしょう。山の方が寒そうですけど」
「森よりエサが多いんじゃないかって話だ」
僕達は納品館を出て街をブラついていた。
「最高稼ぎ更新だねっ!」
「やりましたねっ!9000越えですよ!」
「マイタケの前にゴブリン殺れれば1万越えも夢じゃないな」
「そうですね!いやー夢膨らむわー」
「ただ毎日やるのは不味いかもな」
「どうしてです?ランク上げるのは確定なんでしょ?」
「毎日だと隠し通せるか自信が無いな・・・一応布石は打っておいたが」
「そうですね。コローと同じようにしますか」
「そうしよう」
「ってか布石って・・・」
「・・・菊池君」
「・・・はい」
「・・・実は」
「・・・いや分かりますよ!《隠蔽》のLv上がったんでしょ?」
「なっ、なんで分かった!?」
「分からいでかっ!」