表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HappyHunting♡  作者: 六郎
第12章 グッドモーニング (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
328/706

⑫-02-328

⑫-02-328




「どうしたんだい?」

「なんでも空き巣が入ったって話だよ」

「えぇ!またかい!そりゃ大変だ」

「最近物騒だねぇ!」

「しかしラグリ商会だからなぁ」

「あぁ、元々人が居るのか居ねぇのか分かんねぇ商会だったしな」

「当然っちゃぁ当然かねぇ」


翌朝、僕等はラグリ商会館を野次馬に紛れて遠目から見ていた。

館の戸口に衛兵が立っている。

窓の向こうで衛兵が調査をしている様子が分かる。


「地下室は大丈夫かな」

「恐らくね。彼らは空き巣の検証をしているだけで家探しをしている訳じゃないだろう」

「この後はウリク商会だっけ?」

「あぁ」




ウリク商会の応接室でオランドさんと話をしていた。


「マルコさん。私もあれから考えまして、商会を承継しようと決めました」

「そうですか。それが残った商員のみなさんの為にも良いでしょう。それに」

「それに?」

「仮にエウベルトさんが戻って来ても元に戻せば良いだけでしょう?」

「そ、そうですな。えぇ、今は混乱を収めて事業を続けていく事が重要ですね」

「えぇ、そう思います」

「私はこの後商人ギルドに赴いて承継手続きをしようと思っています」

「そうですか。早い方が良いでしょうし」

「えぇ」

「そうだ」

「はい?」

「終わったら手続きを聞かせてくださいよ。僕等も将来は冒険者を引退して店舗を持とうと考えてるので」

「はっはっは。そうでしたね。みなさん生産スキルの修行をしておいででしたね」

「えぇ」

「分かりました。お話ししますよ」

「お願いします」


その日は街外で魔石収集に勤しんで終わった。




数日後。

ムルキア商人ギルド会館に幌馬車が停まった。

荷台から車椅子が降ろされる。

その作業や御者は全て女性だった。

ややあって荷台から老人が降ろされて車椅子に座る。

ゆったりとした服に身を包んではいるが髭の生えた痩身の老人。

だが背が高く車椅子に座っても結構な座高だ。

馬車をギルドの係りの者に任せ御者の女性も加わる。

老人を中心した5人の一団はギルド会館に入って行った。

その内の1人の女性が受付に近づく。


「いらっしゃいませ。本日はどのような御用件でしょう」

「事業承継について相談に乗ってもらおうと思いまして」

「畏まりました。部屋に御案内致します」

「お願いします」


受付の男に案内され一団は部屋に入った。


「こちらに掛けてお待ち下さい」

「分かりました」


暫くすると事業承継の係りの者だろうか、1人の壮年の男と秘書風の女性が入って来た。


「初めまして。事業承継の事で御相談が有るとか」

「どどどーもぉ。そん通りですじゃぁぁあぁぁ」

「「・・・」」

「こちらはラグリ商会会長です」

「ラグリ商会!?」

「ははは初めましてですじゃぁぁあ」

「会長様ですか!?」

「ワシの名は、モンサンポルキン・ンピョコニョコ・パツキンハライチ・ナッコルシーマ・リリジリオと申します」

「・・・リリジリオ様でいらっしゃいますか」

「えぇえぇ。ワシの名はモンサンポルキン・ンピョコ「会長」ん?」

「会長。長いのでリリジリオでお願いいたします」

「しかし失礼じゃなかろうーかのぉ」

「いえ、大丈夫です。ですよね?」

「「はい!」」

「そーかぃぃぃ。若いモンはせっかちじゃのぉ」

「会長。お忙しい中お時間を取らせるのも失礼ですよ」

「そーじゃったのぉ。これは失礼した」

「いえいえ」

「この子はワシの孫娘でのぉ。しっかりしておろぅ?」

「え、えぇ。そうですな」

「ただ見た目に反してちと年寄り臭い所があって「ドスッ」のおぉぉ!」

「お爺様、余計な事はよろしいですから話を進ませあそばせ」

「ぐふっ・・・お、おぅ」

「「・・・」」


「事業承継の話に入る前に1つ聞いて頂きたい事がぁぁぁっ有ってのぉ」

「は、はい」

「噂に聞くと数日前にここムルキアのラグリ商会に賊が入ったとかぁぁぁ」

「え、えぇ。私達にも聞き及んでいます」

「それでぇぇぇ調べたんじゃがぁぁぁ、ここの会長と番頭が行方不明とかぁぁぁ」

「そ、そうなのですか!?」

「会長の奴はぁぁぁどーでもえぇんじゃが、番頭はぁぁぁワシが目を付けておったんじゃがぁぁぁ、残念な事じゃがぁ賊も入った事じゃしぃこれ以上は待てん」

「なるほど。それで承継を」

「そん通りじゃぁ!さぁっすがムルキア商人ギルドのお人じゃー!鋭いのぉ!」

「い、いえ、それくらいは」

「元々ぉワシが番頭を気に入ってのぉ。出資しようと思ったんじゃがまだ若い。じゃから会長を据えたんじゃが、どーもそいつのせいで活動が沈滞しておったとかぁぁぁ」

「そ、そうですな。あまり活気は無かったと伺っておりました」

「新たにワシが会長になって立て直そうという事になった訳じゃぁぁぁ」

「そ、そうでしたか」

「じゃがぁぁぁ、人が居らんよって、当分は人気が無い事になるぅぅぅ」

「えっ、ではまた賊なりが入るやもしれませんよ」

「そこでじゃぁ。ギルドは口が固いかのぉ」

「勿論で御座います。商人で1番必要ななものです。でなければ商人ギルドの信用が得られません」

「そうかぃそうかぃ。なら、ウリク商会はご存じじゃなぁ」

「えぇ、勿論です。ここ数年で大きくなった注目の商会です」

「そこと提携をしておってなぁ」

「ほぉ」

「そこに会館を任せようと思うとるぅぅぅ」

「そ、そうですか。ではウリク商会にラグリ商会館の管理を?」

「そんとーりじゃぁぁぁ!さぁっすがじゃぁぁぁ!」

「ひぃ」

「のぉ!孫娘よ!流石ぁギルドのお人ぞぉ。あの会長とはエライ違いじゃぁ」

「お爺様、平らかに」

「ごぉっほぉ!ごぉっほぉ!ごぉっほぉ!」

「ほらほら、お爺様」

「そうそう、背中を摩るだけじゃなくて掻いてくれんかのぉ」

ドスッ

「ごぉっほぉ!?」

「お爺様、お戯れを」

「「・・・」」

「ぜー、ぜー。そ、そーゆー訳でのぉ。承継を頼むぅ、頼むぅぅぅ」プルプル

「わ、分かりました。書類の準備は宜しいでしょうか?」

「娘よ」

「はい」


女性が老人から書類を受け取りギルド員に渡す。


「商人ギルドカードに商業許可証、ムルキア商会員証明書、ラグリ商会設立書にウリク商会設立書、土地の権利書に税金前払い証明書、etc、etc、etc・・・」

「ニャ~」

「「ん?」」

「にゃ、にゃんか腹が減ったのぉ」

「お爺様、先程食べたじゃありませんか」

「そーじゃったかのぉ」

「もう、ボケるには早いですわよ」

「にゃっはっは」

「「・・・」」


「結構です、書類は揃っております。では君、あれを」

「はい」


女性秘書は部屋を出て行き水晶が嵌った魔導具を持って帰って来た。


「これで書類のサインの証明を致します、構いませんか?」

「勿論じゃわい」

「では」


ギルド員は書類のサインを水晶に読み取らせていく。

元々水晶に保存していた魔力と、書類の魔力が合致するか調べているのだ。

やがて全ての書類を照らし終えた。


「結構です。全て本物だと証明されました。このまま承継を進めますが宜しいでしょうか」

「あぃあぃ。宜しゅう頼みますわい」

「はい。承継に当たってラグリ商会の会長はリリジリオ様で宜しいでしょうか」

「あぃあぃ」

「番頭はどうされます?」

「差し当たって・・・当分は置かないことにしますわい」

「畏まりました。では書類にサインを頂けますか」

「あぃあぃ」


そう言って魔導ペンを持とうとするが、


「ぐああぁぁぁ!」プルプル

「お、お爺様!」

「ひ、ひぃ!?」

「し、鎮まれぇワシの左手よぉぉぉ!」

「申し訳ありません、お爺様は若い頃に冒険者をやっていたそうで、その頃の傷が今も・・・」

「そ、そうでしたか」

「すまんがぁ、ペンは無理そうじゃぁ。拇印じゃぁ駄目かいのぉ」

「いえいえ、構いませんよ」

「そうかぃそうかぃ。じゃぁそちらのお嬢さんのボインをはいけ「ゴスッ」んっほぉ!」

「「・・・」」

「ごぉっほぉ!ふぉ~。じゃぁお前達よ、支えておくれ」

「「「はい」」」


老人の後ろに控えていた女性3人が老人を支え、書類に拇印を押す手助けをする。

拇印を押す手元は袖に入っていて見えない。


「ニャー」

「「?」」

「にゃ、にゃ~んとか拇印を押せてるのぉ~」

「もう少しですよ、お爺様。頑張って」


やがて全ての書類に拇印を押し終えた。


「結構です。では水晶に新たにラグリ商会会長の魔力を記憶させます。その水晶に手を御触れ下さい」

「こうかの」


袖で手が隠れたまま水晶に触れる。


「はい、そのままで・・・はい。結構です」

「ふぅ~」


車椅子に腰掛ける。


「御疲れで御座いました。これで承継は終了となります」

「そうかぃそうかぃ」

「関連書類は今作業をさせております。商会カードは何枚必要でしょうか」

「手元に1枚、商員用に5枚をくだされ」

「畏まりました。では商会カードに魔力を・・・結構です。商会カードは後日、使用される商員様が御持ちになってギルドに御越し下さいます様、御願い致します。必要な書類も御忘れなき様に」

「分かりましたわぃ」

「では後程、手数料の方を精算させて頂きます」

「あぃあぃ」

「それでは本日は御苦労様で御座いました」

「世話になったのぉ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ