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HappyHunting♡  作者: 六郎
第11章 北部動乱 (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
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死体を纏めて森に捨て、すっかり日が暮れた野営地で野営の準備を終えた。

遅くなった夕食を摂る。


「しかし僕等は運が無いな」

「ん?」

「敵の幹部とかに会わないじゃん」

「さっきのあいつは?」

「あいつは単なる部隊長だろ?アホだったし」

「そうね」

「もっと身分の高そうな奴だよ」

「いや、マコル」

「先日の防街戦でもさっきと同じような装備の奴を倒したけど」

「同じような装備だから大した事無さそうだねぇ」

「そうねぇ」

「いや、みんな」

「部隊のじゃなく、軍の幹部だと報酬も高そうだから良いかと思ってるんだがなぁ」

「いや、だからあいつ等は「でもマコ兄ぃ!」」

「ん?」

「幹部って言ったら強いでしょ?」

「そうだろうなぁ」

「じゃー、危ないじゃん」

「そうよねぇ」

「楽してっていうか、安全にお金稼げた方が良いじゃん」

「まぁ、そうだな」

「じゃぁあいつ位で丁度良かったって事かしら?」

「まぁ、そうだな」

「そうだよ。ハイリスクハイリターンなんてあたし達には向いてないよ」

「そりゃそうだな」

「「「「・・・」」」」

「ローリスクミドルリターンを積み重ねて行きましょ」

「そうですね」

「うん」

「コツコツ行くんだもんな」

「うん」

「「「「・・・」」」」

「セリーナ。教えた方が良いんじゃないか?」

「いや。もうこのままで良いんじゃないかな」


「そういえば一応部隊長を倒したんだから証拠の品は持って帰らなくて良いの?」

「首か?もう無理だな」

「・・・食べられちゃってるか」

「装備で良いんじゃない?」

「防街戦で倒した奴等と同じ様な装備ですし」

「あぁ、それで良いだろう」

「じゃぁ明日帰るのね」

「いや。このまま進もうと思う」

「えっ!?街に行くの?」

「いや。暗殺者や工作員が居るかもしれない所にノコノコ行かないよ」

「じゃぁ何処へ?」

「ベルバキア領の街で補給をしようと思う」

「なるほどね」

「それは良いわ。私も矢がもう無いし」

「食料の確保は必要だしね」

「フリーエさんも言ってたしね」

「そうね」

「僕達の任務はベドルバクラ軍がどう動くかの陽動、囮だからね。任務は達成で良いだろう」

「うん、大丈夫だろう」

「じゃぁ明日は街に行こっか」




翌日。

馬車を飛ばしてベルバキア領に入りそのまま国境近くの街に入ろうとしたが門が閉まっていた。

キルフォヴァが近いので警戒しているのだろう。

その街はスルーしてもっと奥の別の街に向かう。

聴取等で無駄な時間を過ごしたくなかったからだ。

別の街も警戒中ではあったが門が閉まってるほどではない。

入街して物資の補給をする。

街は少し殺気立ってる風だ。

普段この時間に見ない冒険者も居る。

ベドルバクラ軍の侵攻の話が広まってるんだろう。

物資も少し値上がりしていた。

入街したその日の内に街を出る。

閉鎖されたりしたら困るからだ。

途中1泊野営する。

キルフォヴァへの帰り道、一昨日の襲撃の道を通る。

少しゆっくりと馬車を走らせる。


「あ!有ったよ!」

「行って見よう!」


地面には打ち込まれたペグが刺さった手首と大量の血痕だけが残っていた。


「無事に神の御元に旅立ったようだな」

「ペグは回収しておきますね」

「頼むよ」

「ゾンビの気配は?」

「感じられないな」

「魔物が処理してくれてたら良いんだけどね」

「冒険者が魔物に縋るってのも変だな」

「そうね」

「そろそろ行こうよ」

「あぁ。よし!出発しよう!」




その日の夕方、キルフォヴァに帰って来た。

閉まったままの南門に向かい、入れてもらう。

門衛から本部に連絡が行ったのだろう、このまま本部に出頭するよう言われた。

本部に着いて馬車を敷地の厩舎に入れ屋敷に入る。


兵士に案内され付いて行く。


コンコン


「連れて参りました」

「入り給え」

「はっ。失礼します」


ガチャッ


先導した兵士が入る。


「御指示の冒険者を連れて参りました」

「御苦労、下がって良い」

「はっ。失礼します」


兵士が出て行き、僕等は部屋に入った。


「ただいま戻りました」

「うんうん。よぉ~戻った、よぉ~戻ったぁ」


ソファーに座って足をブンブン振っているフリーエさんが居る。

良い笑顔だ。

カラッハさんと・・・レヴィだったか、も居る。


「掛け給え」

『はい』

「実は驚いているのだ。君等は死んだと報告が有ったのでね」

「あの守備隊長ですね」

「うむ」

「順を追って説明しましょうか」

「そうしておくれな」

「出発した夕方にベドルバクラ軍の襲撃部隊に待ち伏せされました」

「うむ。そこは聞いている」

「相手は100人程でした」

「そうか、そんなに居たか・・・」

「はい」

「僕等は馬車を活かして何とか包囲を突破しました」

「うむ」

「護衛は隊長を除いてみんな戦死しました」

「そうか」

「隊長が囮に使ったからです」

「「「何じゃと(だと)!?」」」

「馬は敵味方含めて僕等と隊長しか所持していなかったので、囮に群がってる間に馬を駆って逃げて行きましたね」

「むむむ」

「では君達も逃げ切れたのだな」

「いえ」

「ん?」

「敵を殲滅しました」

「「「・・・」」」

「殲滅?」

「はい」

「100人をかぇ?」

「はい」

「ど、どうやって?」

「あいつ等は馬が居なかったんで、追いつけないよう走りながら弓でチクチクと」

「チクチクで、100人を?」

「はい。そうだ、マーラ君、装備を」

「はい」


サーヤ君がバッグから部隊長の装備を出す。


「前倒した奴と同じ様な装備だったので拾っておきました」

「おぉ、確かに幹部の装備だ!」

「そいつを拷も・・・尋問したら、もう敵の総数は600人位だろうと言ってました」

「・・・うむ。先の3度の防街戦と今回の襲撃とでそうなるだろう。報告が本当であればだが」

「あと、敵の補給は満足に出来てないみたいな事言ってましたね」

「そうか!」

「それに今回の侵攻は軍の隊長の独断だったみたいです」

「独断?」

「隊長が強行したと、言ってましたね」

「そうか、フリーエ様」

「・・・うむ」

「実は今回捕えたスパイも同じような事を言っていたのだ。詳しくは教えられないが・・・」

「構いませんよ」

「それでその幹部はどうしたのかぇ?」

「地面に磔ました」

「「「磔?」」」

「馬車は人数オーバーでして。そのまま僕等はベルバキアの街まで行って補給をして来ました。あっ、後で倉庫で食料やらを渡しますね」

「う、うむ」

「それでベルバキアの街からの帰り道でそいつを確認したら磔た手だけになってましたね」

「「「・・・」」」

「死んでると思います、大量の血痕も有りましたし。ご安心ください」

「・・・う、うむ」

「それじゃぁ今回の依頼は達成ですかね?」

「あ、あぁ。軍が100人も動員したのは予想外だったが、しかし君達の御蔭で数を減らせ、スパイも捕まえる事が出来た。完了という事で良いだろう、フリーエ様?」

「うむ。予想以上の結果じゃ。改めて礼を言う、ありがとなぁ」

「いえいえ。フリーエさんをお助け出来て良かったですよ。あっ、報酬は上乗せしてもらっても構いませんよ」

「うむ。勿論そうさせてもらう」

「では倉庫で食料を渡しましょうか。野菜やら果物も買って来ましたよ」

「それは助かるなぁ。保存食ばっかりじゃとなぁ」

「でしょう。お婆ちゃんも新鮮な物を食べて下さいよ」

「ヒェッヒェッヒェッ。ありがとなぁ」




倉庫からカラッハが帰って来た。


「食料を受け取りました」


そう言ってカラッハは果物をフリーエに手渡す。


「うむうむ」


そう言って受け取った果物を服で拭き拭き齧る。


「しかし・・・100人は本当でしょうか」

「レヴィは疑っておるのかぇ?」モシャモシャ

「小細工が効かぬ平地の戦いでたった8人で・・・」

「言っておったであろう。馬車を使ったと」モシャモシャ

「はい。理屈は分かります。が」

「実際には難しかろうな」

「はい」

「ベルバキアの街で買ったそうな」モシャモシャ

「食料ですか?言っておりましたな」

「往復でも1週間は掛かるじゃろうに」モシャモシャ

「たっ、確かに!」

「馬の速さが!だとすれば納得は出来ますが・・・」

「ラドニウスじゃったなぁ」モシャモシャ

「そうなのですよ」

「《馬術》は確実じゃなぁ」モシャモシャ

「えぇ。他にも?」

「じゃろうなぁ。やっぱり新鮮な果物はえぇのぉ」

「早速兵達に配ろうと思います。勝ち戦の後ですし、士気も上がりましょう」

「うんうん」

「600人まで減れば流石に撤退を考えるのでは?」

「うむ。流石に街攻めは難しいだろう」

「斥候を増やしましょう!」

「賛成です」

「うんうん」

「フリーエ様を恨んでる様子は有りませんでしたが」

「どうかのぉ」

「食料も買って来ましたし、心配なさる必要は無いのでは?」

「あの子らを利用した事には変わりない」

「・・・左様ですな」

「しかし街軍のここまでの凋落を考えますと。やはり計画は考え直しませんと」

「中央も駄目じゃろうしなぁ」

「やはりあの冒険者達を選択肢に入れられますか」

「レヴィは反対かの」

「実力は申し分ないと思います。主だった軍幹部4人の内、3人を倒していますし」

「最後の4人目は軍の司令官自身だからな」

「じゃぁ、信用かの?」

「・・・はい」

「しかし街軍やそれこそ中央も信用ならんだろう。近衛隊にいるお前が1番分かっているだろう」

「・・・はい」

「はぁ~、春はまだまだ遠いのぉ~」モシャモシャ


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