⑪-30-323
⑪-30-323
馬車に飛び込む。
「出せ!」
「了解!」
「うおおおぉぉぉ!」
「待ちゃぁがれぇー!」
「戻せー!」
「ぐあっ!」
「ひぅ!」
馬車に乗ってベドルバクラ兵に向き直るとこちらに走ってくる連中が見える。
次々射掛けられ数を減らしていく。
人質は全員殺されたようだ。
「てめー!殺さねーとか嘘吐きやがって!」
「やかましー!こっちに来い!」
「今行ってやったろ!」
「もう1度だ!」
「残念!チャンスを掴み損ねたな!」
「貴様ー!」
「ほらほらー!行っちゃうよ!僕達行っちゃうよ!」
「待たんかー!」
ティア「もう半分倒れてるわよ」
「弓も無く馬も無いのによくやるな」
ティア「周りが見えて無いんじゃない?」
「彼らの頑張りに応えなきゃいかんな」
「隊長!先の戦の疲労に加え徹夜の行軍で兵は疲弊しています!」
「走ってもあの馬車には追いつけませんぞ!」
「何故ラドニウス如きに追いつけんのだ!」
「分かりません!」
「何としてもあの男を殺さなければ気が済まん!」
「もう半分は兵を失っておりますぞ!」
「!?・・・半分だと!?」
「はい!」
「は、半分も失って手ぶらで帰れるか!追え!追うのだ!」
『うおおぉぉぉ!』
付かず離れずの距離で馬車を進めて敵を釣っている。
敵もいい加減バテて来たようだ。
脱落していく者も居る。
「人間、長時間の全力疾走は無理なんだよ」
ティア「もう動けないようね!」
エマ「矢が無くなりそう!」
「僕等のを使ってくれ!」
エマ「ありがと!」
ベドルバクラ兵は膝に手を付き肩で息をして格好の的となっていた。
「隊長!このままでは!」
「兵はもう走れませんぞ!」
「くそっ!已むを得ん!引き上げだ!」
「ははっ!」
「退却だ!」
『お~・・・』
ミキ「マコル!敵が逃げて行くわ!」
「よ-し!セリーナ!馬首を返せ!」
ミキ「えっ!?追うの!?」
「当然だろう!敵はふらっふらだぞ!」
ティア「向かって来たらどうすんの!?」
「何言ってる!当然返り討ちだ!」
「ぎゃっ!?」
「ぐあっ!?」
「何だ!?」
「あっ!あいつ等!戻って来てるぞ!」
「あの野郎ぉー!」
「ブッ殺せー!」
ベドルバクラ兵がカズヒコ達に向き直るが、
夕陽が視界に入り矢が見え難い。
先程の全力疾走で足はパンパン。
とても全力で走れる状態ではなかった。
フラフラとした足取りは女達に狙い易くさせる。
「よぉーし!出番だぞ!セリーナ!バイヨ!」
「「了解!」」
「後3割くらいだ!締まっていくぞ!」
『おー!』
俺とセリーナ、バイヨが馬車を降り敵に向かう。
敵も矢を受けつつ向かって来る。
『うおおおぉぉぉ!』
「ティア!」
「《バインド》!」
「「「「ぐあっ!」」」」
敵の先頭に居た4人がその場に固まる。
固まった4人に後続がぶつかり倒れていく。
「《マイティ・ストライク》!」
バイヨが大剣を薙ぎ払う。
4人の体が上下に分かれた。
「ひいいぃぃ!」
「うああぁぁ!」
その凄惨さに後続が慄く。
「セリーナ!」
「おぉ!」
ケセラがシールドバッシュで突進しながら敵に突っ込む。
体力的に限界を迎えているベドルバクラ兵には耐えられず吹っ飛んだ。
ケセラとバイヨが各々の武器で敵を屠って行く。
俺は連射式クロスボウで2人のサポートをしていた。
《弓術》を持っていないので精密射撃に自信が無い。
足や腕を狙ってトドメは任せる。
人数では圧倒的に有利だったベドルバクラ軍だったが体力が圧倒的に不利、
更に先程までの遠距離攻撃を受けて無力感が漂っていた所に近距離戦での圧倒的なパワー。
体力的にも精神力的にも限界を迎えたベドルバクラ軍は直ぐに崩れた。
「逃げるなぁー!留まれー!」
「隊長!もう無理です!」
「止められません!」
「むぅ!」
「早く退却なされませ!」
「くそっ!撤退だ!」
「よーし!馬車に戻るぞ!」
「追うのか!」
「当然!」
俺達は馬車に戻って逃げる敵兵士の背中を射続ける。
「セリーナ!死体に乗り上げないようにな!」
「分かってる!」
街道は人間の死体で埋まっていた。
道を外れ死体の無い所を進む。
そんなに速度を上げなくても敵兵士は殆ど走れていない。
次々に倒れて行くベドルバクラ兵。
途中、武器を放り投げ両手を挙げた兵士も居たようだったが、
「マーラ、撃て!」
「はい!」
関係無く倒れていく。
とうとう残るは幹部連中だけとなった。
「降伏!降伏する!」
幹部連中は全員両手を挙げる。
「マーラ、マヤ、捕虜は1人で良い」
「「了解」」
2人に射殺されていく幹部達。
男達に近づいて行く。
「ぎゃっ」
「うあつ」
「なっ、何をする!降伏したのに!?」
「お前が言うなよ」
「何だと!」
「降伏したのに人質にして殺した奴が言うなって言ってんだよ」
「こっ、殺したのはワシじゃない!」
「命令したのはお前だろ」
「殺せとは言ってない!」
「盾にしたんだ、同じ事だろ」
「違う!違うぞ!」
「盾にしたら死ぬ可能性が高い、誰でも分かる事だ」
「いーや!違うね!」
「はぁー。言葉は通じるが話は通じない・・・疲れるな」
「お察ししますわ」
「装備を脱げ」
「なっ、何の為に!?」
「マーラ君」
「はい」
ハンマーで腕を殴りつける。
ガアァン
「ぎゃあぁぁ!?」
「装備を脱げ」
「ぐうあぁぁぁ」
「マーラ君」
「はい」
ガアァァン
「ぎゃあぁぁぁ!脱ぎます!脱ぐから!」
片腕が折れたせいで手間取りながらも装備を外していく。
「この装備、どっかで見たな」
「防街戦で倒した2人の幹部達のに似てますね」
「そうか」




