②-15-32
②-15-32
「流石高いだけあって良い感じだ」
「そうですね」
装備を新調して慣らし中である。
古いのは売れた。
オーダーメイドじゃなかったのでまぁまぁの値段で売れた。
新調した中で特に良いのが靴であった。
「靴底も魔物の素材を使ってるんだろうけど、こっちの世界を舐めてたな」
「滑ったりせずグリップ力有りますね。ハイカットだから重いですけど」
「《頑健》さんが頑張ってくれるだろう」
「でも古いのは売らなくてよかったんですか?」
「念のため予備としてな。旅の途中靴が壊れたら歩けないから」
「今は宿に置いてますからね。衣類関係は先輩の《殺菌》と私の《クリーンアップ》で汚れ知らず、臭い知らずですし!」
「驚きの白さ!」
「靴が臭わないのはいいですわ~」
「足と靴、両方に《殺菌》してるからね、完璧だろう。水虫にもならんだろうし」
「あっ、雨具とかも買わないと!」
「そうか!そうだな。結構な荷物になるなやっぱり」
「収納袋でしたっけ?欲しいですね」
「何百万って言ってたから・・・無理じゃね?」
「コンテのマヒマイタケが8000エナでしょ?他にがんばってゴブリンとかで1万エナ稼ぐんですよ!そうしたらそれを何百回か繰り返したら・・・買えますよ!」
「う~む。そう考えると不可能な値段じゃないな」
「将来的には収納袋で行商しつつ世界を周れば元も取れますよ!」
「そうだな。何かいけそうな気がしてきた。よしっ!がんばるぞ!」
「おー!」
ゴブリンを解体しつつ将来設計を練る2人。
装備を新調して手持ちが寂しくなったこともあり新たな稼ぎを夢見てテンションを上げていくのであった。
旅に出るということで同僚たちと送別会を開いた。
男A「もう1度考え直したらどうだ?危険すぎるだろう」
男B「そうだぞ、魔物が徘徊してるんだから」
男C「軍隊に入って鍛えるのはどうだろう?」
男D「戦争になったら嫌だろ」
女A「2人旅ってのがさぁ。大丈夫ぅ?」
女B「加藤さんも男なわけだしぃ」
女C「何人かパーティ?に入れたら?」
女D「隣街って3日も掛かるんだ」
ミキ「大丈夫よ!今まで半年も一緒にやってきたんだし。ねぇ先輩」
カズ「あぁ。守るって決めたからな」
女A~D「きゃー!!」
男A「金は大丈夫なのか?」
カズ「あぁ。当てはある」
男B「冒険者って稼げるのか?」
カズ「スキルに依るんじゃねーかな。僕達は魔法が使えるから他人よりは楽だと思う」
ミキ「そうですね。魔法は大きいですね」
男D「俺もやってみようかなー」
カズ「1人は止めた方が良いぞ。絶対」
男C「だよなー。動物を殺すってのもなー」
カズ「将来的に何かすんの?このまま街壁工事って訳じゃねーんだろ?」
男A「ん?あぁ。商売を考えてるが・・・」
男B「この世界の事分からねえからな」
カズ「商人ギルドがあるって話だから、そこで話を通すんだろうけど」
男D「商人ギルドか」
カズ「何にせよ身分証を作らないと始まらないと思うぞ」
男C「身分証ねぇ・・・」
男A「商人ギルドでも身分証は発行されるのか?」
ミキ「されますよ。商人カードが。あと職人ギルドで職人カードが」
男B「色々あるんだねぇ~」
女A「値段は一緒なの?」
ミキ「商人ギルドは何万って保証金必要って聞いたことある」
女B「何万!?」
男D「保証金ってことは預り金ってことか。まぁ怪しい行商人に怪しいモン掴まされちゃ堪らねえしな」
カズ・ミキ「ぶっ」
女C「今どのくらい稼いでんの?」
ミキ「ん~と。危険を冒さず余裕を持って3000くらい・・・かな」
『3000!?』
女D「危険冒すと?」
ミキ「7000くらい」
『7000!?』
男D「えっ!マジなの加藤」
カズ「あぁ、マジだ」
男A「そんなに稼いでるんならこの街出なくても良いんじゃないか?」
カズ「当てがあるって言ったろ」
男B「まだ稼げるのかよ!?」
女C「え~私も連れてってもらおうかな~」
ミキ「死ぬ覚悟があるならね」
女D「ミキこわ~い」
カズ「額が上がればリスクも上がる。当然だな。魔物相手だし」
男C「ま~、そうだよな。魔物だもんなー。まだ見たこと無いけど」
男A「魔物だけじゃないだろう?魔物を倒すのが冒険者なら、1番怖いのは冒険者なんじゃないか?」
カズ「その通りだが今までは大丈夫だったな。相手も喧嘩で怪我でもしたら稼ぎに出られないわけだし」
男B「そりゃそうか」
カズ「でも昔は結構あったらしいけどな。それこそ戦争になるほど」
女A「戦争?」
ミキ「えぇ。ギルド戦争って言って、ギルド支部同士の対立で冒険者同士が戦ったんですって」
女D「こわ~い」
男D「マジかよ。冒険者こえーな。ギルドもな」
カズ「まーな。それだけ力も権力も有るって事じゃね?」
女B「そうだねー。まー嫌なら参加しなけりゃいいんじゃない?」
カズ「冒険者やるんなら男がやって、女は商人とかでいいんじゃないか?」
女C「あっ、それいいかもー」
女D「家ほしー」
男A「もう戻ってこないって訳じゃないんだろう?」
カズ「あぁ。世界を見て回るってだけでな。多面体も言ってたろ、安定してるとこに転移させるって。ここは安定してるみたいだから将来的な拠点候補の1つと考えてる」
男B「じゃぁ、ここにいればまた会える訳だな」
カズ「あぁ。そん時はこの世界の話をしてやるよ」
男D「そん時は一緒に商売やるってのもありだぜ」
ミキ「その時は私達お金持ちだから主人と従業員ですよ」
女D「ミキこわ~い」
やっすい酒で悪酔いしたのか調子が良くないので翌日は休みにした。
これからは酒は止めるかな。
今までもほとんど飲んでないし、飲まなくても苦痛ではない。
皆と再会した時と昨日と・・・2回だけか。
止めよう。
明けて翌日、出発の日だ。
生活費も貯まったので両替所に来ていた。
「え~と5万ちょいか・・・結構貯まってたんだね」
「そうなんですよ。でも装備の修繕費とか消費材やら直ぐ無くなるんですよね、冒険者って」
「そうなんだよなー。激しい戦闘は損耗も激しいし。その点マイタケはうまいよなー」
「ホントですねー。でも将来的にはキノコ系だけだと不安ですしね」
「だね」
「それで両替手数料が2%ですか」
この世界の通貨は1桁毎に硬貨が変わっていく。
銅貨、中銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、金小判、金大判。
僕達は大きいのは大銀貨4枚にして、普段使いように細かいのも持つことにした。
「よし、じゃぁガルトさんに最後に挨拶して行こう」
「挨拶するんですか?」
「あぁ。世話になったからな。色々と」
「確かにそうですね」
「そうか、コンテに行くのか」
「はい。それからその辺を周って世界を見てみようと思ってます」
「そうか。若いから色々体験すべきだと思うが、気を付けろよ」
「はい、ありがとうございます」
「ガルトさんも元気でね」
「あぁ、ありがとよ。また帰ってくるのか」
「はい。その予定です。同郷の者がいるので」
「そうか、そうだな。いつでも帰って来い」
「「はい、ありがとうございました」」
ガルトさんと別れて西門から出ていく。
「転生して半年、長かったような短かったような」
「まぁ、色々有りましたしね」
「悪い人もそんなにいないし食っていけるし。いい街だったよ。これが普通のレベルなのかはこれから分かるが」
「普通であって欲しいですねー。切実に」
「多面体は安定してるって言ってたから、良い方なのかも」
「えぇー、やだぁー」
「さっ、行くか」
西門で衛兵に冒険者カ-ドを見せて外に出た。
鐘が2つ鳴っていた。