⑪-20-313
⑪-20-313
ん?
なんか上が急に流れが変わったな。
まっ、良いか。
有利になったんなら言う事は無い。
所でコイツ身分が高い奴なのかな?
プレートメイルだし。
討伐の証で何か奪っとくか。
・・・首は無理だろ。
剣で良いか。
「あいつ幹部を引き摺り落としましたよ!」
「う、うむ!」
「確かに階段は今、敵兵と味方がやり合っていますから使えませんし。あぁやって何人も仕留めていますから戦術としては有りですな」
「そ、そうだな」
「あ、あいつ!今度は違う所を狙ってるみたいですよ!」
「何をする気だ!?」
レヴィとその副官は門から少し離れてカズヒコの様子を窺う。
カズヒコは攻防を繰り広げている階段を過ぎ去り八角塔の足元に来た。
カズヒコが鉤を頭上でブンブン回している。
ヒュオッ
鉤が八角塔の縁に引っ掛かった。
縄を伝って登ってゆく。
「八角塔を登って行くな」
「しかし外からは中に入れませんよ」
「うむ。何をする気だ?」
やがて縁に辿り着いて下を睥睨するカズヒコ。
「あれ?カズヒコ?」
「何をしているのだ?」
「カズヒコさん?」
3人の前には敵兵。
その向こうには八角塔。
3人は塔の側面に貼り付いているパーティリーダーを認める。
「とぅっ」
「「「「「飛んだぁ!?」」」」」
ヒュウウゥゥ
ドスッ
敵のど真ん中で兵士の頭を踏ん付けながら降り立ったカズヒコ。
「そい!」
俺は右の敵に体当たりを食らわす。
胸壁の間から悲鳴を上げつつ落ちて行く兵士。
そのまま正面の敵のうなじに解体ナイフをブッ刺す。
密集隊形なのでマチェーテは振れない。
ナイフが1番だろう。
そのままナイフを抜き去り右側の兵士の首にブッ刺す。
真後ろの奴が剣を振り上げる。
ナイフを首に刺したまま左手でその兵士の腰を掴んで引き寄せる。
振り下ろされた剣は引き寄せられて俺の身代わりになった兵士の背中を裂く。
あっ、
と口を開ける兵士に飛び込み目にナイフを突き立てる。
右の奴に蹴りを食らわせ壁下に落とす。
回し蹴りを食らわせもう1人落とす。
その頃には騒ぎに気付いて3人の女の方へ向いていた敵兵もこちらを振り向く。
3人の方へ向かいつつ左手を払う。
正面の敵が目を瞑って手で押さえた。
顎下からナイフを突き立てる。
引き抜いて右の奴に体当たり。
壁外へ落ちて行った。
落ちてゆく拍子に梯子を登っていた兵士を巻き込んでゆく。
前の奴のタマを蹴り上げる。
ぐむぅ
タマを掴みながら前かがみになる兵士の頭を掴んで膝蹴りを首に入れ骨を折る。
コイツ!
と左の奴が剣を振り下ろす。
掴んだ頭で剣を受ける。
バカッ
剣で頭が割れ辺りに血が噴き出る。
またタマを蹴り上げる。
ぐむぅ
そのまま突進して2人程巻き込みながら街内の方へ突き落した。
「何だぁ!?」
「クソが!狭くて剣を振るえねぇ!」
「武器は使うなぁ!」
「同士討ちになるぞぉ!」
「捕まえろぉ!」
「無理だぁ!速過ぎるぅ!」
「クソ!どーすりゃぁぁぁらま!」
「あっ!?」
「矢だ!」
「女まで!」
「挟まれたぁ!」
彼女達と挟んだ敵を殺して合流を果たした。
敵味方入り乱れての乱戦中に固まっている俺達の会話は聞こえないだろう。
「お待たせ!」
「大丈夫!?」
「何とかな!」
「心配させないでくれ!」
「してくれたのか!?」
「当り前だろう!」
「わっ!私も!」
「先ずは現状把握だ!怪我は無いな!?」
「えぇ。みんな無事よ!」
「マヤ達は?」
「《バインド》が効いてるわ!」
「マーラ。弾倉は?」
「無いです!」
「代わる。交換しろ」
「はい!」
サーヤが下がって連射式の弾倉を交換する間、俺がその穴を埋める。
壁下で見ていたレヴィ達、
「「何て奴だ!?」」
「敵の懐に文字通り飛び込んで駆け抜けて行きおった!?」
「壁上の敵は密集しますから武器を振るえません!それを逆手に!」
「分かってても出来るものではない!何て奴だ!」
「むっ!」
「どうしたの!?」
「マーラ!」
「はい!」
「弓だ!」
「はい!」
「マリアも!階段の敵を狙え!」
「分かった!」
「セリーナは守ってろ!」
「了解!」
「流れが変わりつつある!階段を掃討して味方を壁に上げるんだ!」
「「「了解!」」」
街壁内側の地上から街壁上に繋がる階段は一気に上るものではなかった。
途中で曲がって方向を180度変えるタイプの階段だ。
従って折り返した階段は街壁上からでも狙えた。
階段下のルンバキア兵に集中していた階段途中に居るベドルバクラ兵。
そこに矢が飛んで来る。
「ぐあ!」
「ひあ!」
「くそ!」
「おい!何やってんだ!」
「早くそいつ等を制圧しろ!」
「うるせぇ!てめぇでやれ!」
「なんだとぉ!」
レヴィが叫ぶ。
「今だ!敵は連携が取れてないぞ!押せ押せぇ!」
『おおぉぉぉ!』
「マコル!私達も押すか!?」
「いや!まだ敵が壁から登って来ている!このままだ!」
「分かった!」
「八角塔の方は大丈夫!?」
「入り口は1人分の狭さだ!何とかなってる!」
目前の敵兵の数は当初からすると明らかに減っていた。
「《剣術》スキル経験値稼がせてやる!」
「うれしいね!」
敵がケセラに斬りかかった。
盾で受けるケセラ。
そこに目に砂が入って慌てる敵兵。
ケセラは喉に剣を突き刺した。
「良いぞ!」
「ありがたいね!」
「刺すんじゃなく斬り裂け!」
「どうしてだ!?」
「抜けなくなったら次が来た場合対応出来ない!」
「なるほど!」
「突き刺すのは最後の奴にしろ!」
「了解だ!」
「戦が終わったらエストックでも手に入れるか!?」
「選択肢に入れておこう!」
ガイン!
盾で受け止めるケセラ。
途端に目を押さえて慌てる敵兵。
「せい!」
敵の脇腹が斬り裂かれ中の物が溢れだす。
最早ミキとサーヤは正面の敵ではなく階段の敵のみを狙っている。
その階段の敵は前と上の2方向からの攻撃に対処しきれず徐々に数を減らしていっていた。




