②-14-31
②-14-31
毎日マイタケを狩っていると倒し方を聞かれるかも知れないので程ほどにして、普段はゴブリンをメインに活動していた。
対人戦闘の練習だ。
罠も設置し《隠蔽》を掛けている。Lvアップを期待してだ。
近頃は大分動きが分かるようになってきた。
やはり同じ人型だけあって筋肉の付き方なんかも我々と同じようなのだろう、動きからその後の動作もある程度分かる。
「大分見えるようになってきたから、今度は受け流しを試してみるよ」
「受け流し?」
「相手の武器を受けて逸らす」
「大丈夫なんですか!?」
「大丈夫にするんだ」
「魔法があるのに・・・」
「僕のは射程1mだ。受け流した後に叩きこむ。必殺コンボになるだろう」
ゴブリンの棍棒を受けなが・・・重っ。
だが剣筋は見える。
棍棒の先ではなく手元を見れば大体どこを狙っているか分かるな。
見切れているからか受け流しもそれほど苦にならず出来るようだ。
「《雷撃》!」
しばらくマイタケでガッポリ稼いで、ゴブリンで訓練のルーティーンでいこう。
「ただね」
「?どうしたんですか?」
2人でゴブリンを解体しながら零した。
「ゴブリンとは言え人型を殺して報酬を得るってのがね、抵抗が・・・」
「あぁ・・・」
「無いんだけどね」
「無いんかい!」
異常だからか?
菊池君は分かった風な返事をしてくれたけど、やっぱり抵抗はあるんだろう。
彼女ではいざという時躊躇してしまうだろう。
やはり俺がやらねばなるまい。
早く強くならなければ。
「バックパックも欲しいんだけど、どうもこの世界無いっぽいんだよな」
「あ~、欲しいですね。オーダーメイド出来ませんかね?」
「おぉ!なるほど。聞いてみるか」
「テントは・・・要ります?」
「この街から西へ3日って言ってたっけ。徒歩?馬車?」
「馬車って言ってましたよ。馬車なら要らないか」
「まぁ用心の為にも有った方が良いんだろうが、晩秋だしな。野宿はしたくないな」
「3日掛かるってことは何処かに泊まるんでは?」
「村とかじゃないの?」
「馬車っていつ出発するんですかね?」
「早朝だろう。高速バスみたいな?」
「深夜には流石に出ないか」
「水袋はデカいのがいるな」
「背負子は・・・」
「今の持ってるのは売ろう。あっちでまた買おう」
「笛作りましたけど、一応音は出ますけど遠くに届くにはまだまだですね」
「改良が必要だね。恐らく吹く穴の奥にある穴の調節が大事なんじゃないかな」
「大きさとか?」
「角度とか?」
「まぁ色々試してみましょう」
「そうだね」
「装備はどうします?」
「僕はこのまま革の軽鎧でいくよ」
「じゃぁ私も」
「革の軽鎧でこの街1番高いのでいいんじゃね?」
「いやぁ~ぜいたくやわ~」
「ぬぁっはっはっは」
「武器は?」
「僕はこのままかな。これ以上重いのは駄目だね」
「私もこのクロスボウでいいかな」
「君は予備で短剣差しとけば?」
「解体ナイフ有りますよ?」
「あっ、それでいいか」
「他には~・・・」
「帽子を買おう。冬用の」
「どんなの?」
「温かそうなの。人間の体温が失われる半分は頭部からなんだよ」
「へー。そーなんだー」
「明日馬車乗り場行って色々調べてみよう」
「そうですね。武器防具屋で装備も見て」
翌日狩りも終わって納品館でお兄さんに聞いてみた。
「コンテにはマヒマイタケがいますよ」
「「マヒマイタケ?」」
「えぇ。その名の通り、寝るんじゃなく麻痺するんです」
「買取価格は幾らくらいですか?」
「え~と、ちょっと待っててくださいね。7000から8000ですね。コンテで」
「「えっ?」」
「ここらにいないんで割高になります。何で値段が分かるのかって?馬車で定期便をやり取りしてるんですよ。情報とか勿論物資とか、この国の周辺の魔物とかのね。たまたまはぐれた魔物が別の所から流れてきた時にいい加減な値段で買い取ったら問題になりますからね」
「菊池君、鼻の穴が膨らんでるぞ」
「ムフーッ。8000。ムフーッ」
「早めに移動するか」
「ムフーッ」
「荷物になるから買い物よりも先に馬車を見に行こう」
「ムフーッ」
「馬車は3、4日に1度出とるでの」
「途中は村で泊まるのですか?」
「そうじゃ。村が襲われてなきゃそうなりますの」
「1人幾らになります?」
「コンテまでじゃろ、1200エナになりますの」
「ん~、ちと高いな」
「護衛も付いとるけ~の。高うなりますわい」
「護衛。冒険者ですか」
「さいですわ。Eランクじゃったかの」
「護衛報酬ってご存じですか」
「ん~1200エナじゃったかの」
(3日でか、やっとれんな)
「1台に2人付きますわ」
「1台・・・ってことは何台かで行くので?」
「2台で行くんですわ。人と物資を分けましてな」
「1台何人乗れるんですか?」
「10人は乗れますわい」
(12,000エナに物資の運び賃。護衛代4800。馬の餌代に宿代に厩舎の維持費等諸々か、差っ引くと)
「利益はあんまり無いんじゃ?」
「領主様から補助が出るんよ。なんとかやっとりますわい」
(そうかインフラ整備か。ある意味公共事業だな)
「お爺さんが御者ですか?」
「んにゃ。御者はもっと若いのがやりますわい。年取ると辛ぅての」
「馬は速いんですか?」
「はっはっは」
「?」
「ほれ。あれ見てみぃ」
お爺さんに促され厩舎らしき方を向くと象ほどもある犀みたいな動物が草を食んでいた。
「あっ、あれは?」
「お前さん達ぁ、乗り合い馬車初めてかいの。馬車の馬ったぁ2種類おるの。あっちの馬と」
(俺達が知ってる馬だな)
「あのデカい馬じゃ」
「あれ、馬?」
「正確にはラドニウスっちゅーんじゃ。馬より遅いが力が強く丈夫でちっこい魔物なら踏み潰すわい」
「なるほど」
「じゃもんで1匹で10人引けるんよ」
「初めて見ました。デカいですなー」
「ほっほっほ。そうじゃろ。あれでも草食じゃ、襲うたりせんから安心せぇ。因みに魔物じゃないぞぃ」
ブフーっ。
いなないてるようだ。
「地図って売ってます?」
「ここじゃなく道具屋か商人・冒険者ギルドじゃのー」
「地図売ってもらえるんですね?」
「うん?」
「他国の人間かも知れない人に自国の地図とかを売っても良いのかなと」
「そういったことはわしらにゃ分からんけんど。魔物の討伐が優先されるーゆうのは聞いたことあるの」
「なるほど。ありがとうございました、勉強になりました」
「ほいほい、いつでも乗りに来なんせぇ」
その後道具屋に行ったがバッグのオーダーメイドはやっていないとのこと。
旅用の大きなバッグを2つ買ったが使いづらい。
「縫製技術を覚えて自分達で作るのもありかもしれんな」
「スキルでですか?」
「いや、そこまでしなくても作れるんじゃないか?」
「まぁ、そうか。それにちょっとした衣類の破れとか直せますしね」
「あぁ。流石に革の装備は無理だろうが」
「でも先輩。馬車乗ります?」
「ん?」
「野宿しないんなら2人で行ってもいいのでは?」
「そうだなー。道中の魔物も、護衛がEランクだと僕等でも対処できるか」
「しかし馬車の方が楽なんじゃないか?」
「先輩!お金を稼ぐにはこういう所からですよ。楽しちゃ駄目です」
「そ、そうか。ならテントとまでは言わずとも毛布を買っていこう。村のは心配だ」
「そうですね。一応ランタンも買っていきますか。ダンジョン産の」
「そうだな。夕方とかもしかして夜になったら悲惨だからな」
「そうなると火口も買いますか」
「あれ、ランタンじゃ駄目なの?」
「ダンジョン産のは光らしいですよ、火じゃなく」
「そうなの!?」
道具屋の後に防具屋に行ったが1番高いのは買えるがその後の生活資金が乏しくなるため、買うには買って慣らしつつお金が貯まるまでこの街で稼ぐことにした。




