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HappyHunting♡  作者: 六郎
第11章 北部動乱 (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
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戦端が開かれてしばらく経った。

周りの兵士の緊張も無くなりかけたところ、


「おっ?」

「現れたな」

《来たぞー!ベドルバクラ軍だー!》


街道が有る地平線に黒い蟻が現れた。

平原とはいえ真っ平という訳ではない。

当然波打っている所も有る。

波を越えてそいつらは現れた。


ジャーンジャーンジャーン


「・・・多くない?」

「・・・多いね」

「どうやらこっちが本命らしいな」

「「「「はぁ~」」」」


ジャーンジャーンジャーン


銅鑼を響かせ歩兵を先頭に現れた軍団は先頭が左右に分かれその穴を後続が埋め、後続が進軍した後更に左右に分かれてを繰り返し前線が横に長く展開をした。

歩兵の後方に弓兵が見える。

その後方にこの部隊の指揮官だろう、馬に乗ったプレートアーマーの兵士が見えた。

軍団は隊列を乱さず街に近づいて来る。


「隊長殿!」

「何だ!」

「弓の射程に入ったら勝手に撃ってよろしいか!?」

「構わん!あの距離で届くのならな!」

《はっはっは!》


ジャーン!


軍団が停まった。

騎士だろうか、騎兵が動き回っている。


「伝令か?」

「だろうな」


周りの兵士の笑い声が聞こえる。


「あいつ震えてるぜ」

「くくっ。流石ハーレムパーティだけある」

「夜はおっぱいに抱かれて震えを癒して貰うんだろうな」

「猫撫で声でか?」

「にゃーにゃー」

「今夜は無理そうだがな」

「ははは」


あぁいう奴等は自分が怖いのを他人のそれを見て誤魔化しているんだ。


「マコル」

「あぁ。大丈夫だ。震えは戦い始まれば治まる」

「いやそれは分かってる」

「え?」

「正直あの数は本軍だ。ここが主戦場だ」

「良かったじゃないか」

「「「えっ!?」」」

「名誉と報酬を得られるチャンスだぞ」

「死んでは元も子もないよ」

「任せろ。小隊は誰1人死なさん」

「・・・マコル」

「何だ、信じないのか?傷付くなぁ、魔虫やブラックドッグを一緒に狩った仲じゃないか」

「・・・ふっ」

「信じてるわよ」

「頼むわね」

「報酬で何買うかなんて今考えるんじゃないぞ」

「勿論だ」

「マーラ君」

「はい」

「石を並べて置いてくれ。後火炎瓶も」

「分かりました」

「攻城兵器は無いな。破城槌も無い」

「うん。無い」

「飛び道具は弓だけか。魔法使いが1人居るな」

「だから何で分かるのよ!」

「秘密だ」

「うぅ」

「左右の味方兵士は頼れん、俺達だけでやる。ただしヤバくなったら逃げる。良いな」

『了解!』

「左にエマ、その盾でバイヨ。ティアは登って来た奴を《バインド》だ」

「「「分かった」」」

「中央にマヤ、盾にセリーナ」

「「了解」」

「右にマリア、マーラ。盾は俺がする」

「「了解」」

「ハーフマスクとゴーグル装着。セリーナもマスクを付けろ」

「「「「了解」」」」

「マコルさん、弓ですか?クロスボウですか?」

「弓だ。勿論ロングボウだ」

「はい」

「殺さなくて良い、傷付けろ。手を撃てば武器が使えない、足を撃てば走れない。殺す必要は無い、戦闘不能にすれば良い」

「「「「了解」」」」




『神に選ばれた我等に正義は有る!』

『おー!』

ドンッ


ベドルバクラ軍兵士達が靴底を踏み鳴らす。


『神を恐れぬ愚か者共に天罰を!』

『おー!』

ドンッ

『神の尖兵に神の御加護を!』

『おー!』

ドンッ

『神からの恩寵を自身の手で掴むのだ!』

『うおー!』

ドンドンドンッ

『攻撃開始っ!』

『うおおおおぉぉぉぉ』


歩兵が突っ込んでくる。


〈来たぞー!〉

〈迎え撃てー!〉

《うおおおぉぉぉ!》


「射程に入ったら撃って良いのよね!?」

「あぁ!だが待て!」

「えっ!?」

「どうしたの!?」

「あれ!大将も来てないか!?」

「ホントだ!」

「でも流石に近くまで来ないでしょう!?」

「でも来たらどうするの!?狙うの!?」

「いや!プレートアーマーだ!この距離では隙間には当たらんだろう!」

「じゃぁどうするのよ!」

「その前の弓兵を狙う!」

「歩兵は狙わないの!?」

「大将の前!つまり最後列の弓兵を狙う!合図を待て!」

「「「了解!」」」

「マリア!射程に入ったら教えろ!」

「分かったわ!」


ドドドドドドドドドド


軍団全体が向かって来る。


「もう直ぐよ!」

「狙え!」


ぐっ


ミキ、サーヤ、マヌイが弓を構える。

エマは残念ながら射程外だ。


「アイ!」

「撃て!」


ヒュヒュヒュッ


戦場の大音量、兵士の叫び声や大地を踏み鳴らす音で風切り音は聞こえないが、

矢は周りの味方兵士の矢の射程を通り越し、

敵弓兵の後列に向かって行く。


『・・・』

『・・・』

『・・・』


3人の兵士が無言で倒れる。

いや周りの大音響で聞こえないのだ。


「各自!敵弓兵を撃て!」




「なっ、何だ!?矢が此処まで届いただと!?」


目の前の弓兵3人が倒れたのを目の当たりにしたベドルバクラ軍指揮官。

更に矢が飛んで来て弓兵に当たってゆく。

死なないまでも弓を射る事はもう出来ない者も出ている。


「閣下!ここまで届きますぞ!」

「おさがり下され!」

「う、うむ!」


指揮官と取り巻きが馬を返し下がってゆく。

その様子に周辺の兵士達に多少の動揺が広がった。

突撃せずに最初の位置で留まって指揮だけしていれば下がる必要は無かった。

兵士達は矢に晒されながら攻撃をする。

しかし自分だけ安全な場所に退いた指揮官。

今まで1度2度の攻撃で落とせなかった街。

簡単な攻略になると言われていたが話が違う。

街に来るまでの兵士達は戦闘後の略奪を思い浮かべながら高揚した気分でいた。

しかし戦争が始まっても村には何もなく街も落とせず、ここまで何の旨みも無い。

徴兵で多少の報酬は出るが本当に多少だ。

命を張るには安過ぎる金額だ。

これなら村に残って働いていた方がマシだった。

更に、


「もっと前に行けぇ!」

「矢が届かないだろうがぁ!」


下がった奴等から指示が飛んで来る。

確かにこの場所からだと狙われるだけで俺達の矢は届かない。

でも逃げた奴が偉そうに言うなよ。

胸の中に不満を溜め込む。

指揮官が下がった事で開戦早々兵士に心情の変化をもたらした。


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