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HappyHunting♡  作者: 六郎
第2章 冒険者 (コンテ:カズー、ミキティ)
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「何で呼ばれたか分かってるんだろうな?」


僕達は面談室みたいなとこに押し込められた。

推定Dカップとおっちゃんが対面でソファーに座っている。

僕達もソファーに座っている。


「僕達を栽培マンにして死ぬまで扱き使うつもりなんですよね」

「何?さいばいまん?・・・何を言ってる!ランクアップだ!ランクアップ!」

「あー!ランクアップ!勿論それですよ」

「ぜってーウソだろ!勘違いしてたよな?」

「私もそう思います」

「き、ミキ!君まで!?」


「おめぇらは何でランクアップしないんだ?」

「祖母の遺言で・・・」

「ぜってーウソだよな!」

「祖母は!そぼはぁ・・・ううう」

「まー、何となく理由は察しがつくけどよ・・・」

「ちょっといいですか?」

「どうした?ミキ」

「ちょっとこっちに」


部屋の隅に連れていかれた。


「もう無理なんじゃないですかね」


菊池君は諦めたようだ。

いや、諦めさせてしまったのか・・・俺が。

俺のせいで・・・

好きに生きろと格好良いこと言ったのに・・・

格好悪すぎる・・・

いや、ホントに格好悪いのは行動しないことだ。

俺はまだ全力を出していない!

俺の切り札、「駄々っ子」がある!

駄々っ子は仰向けに寝て手足をばたつかせて相手を呆れさせ、引かせて要求を呑ませるという交渉術だ。

これは使用者に多大な精神的ダメージを負わせるが、された相手も「なんか悪いかも」という感情を抱かせる可能性がある。

固有スキルになってなくてある意味ほっとしているが。

これに賭けるしか、今は無い!


「まだだ。まだ・・・任せろ菊池君。今から本気出す」


俺はズボンを脱ごうとゴソゴソしだした。

裸でやった方がよりインパクト大だろう。

言うことを聞くまでやり続けると言えば、要求を呑む可能性が更に高まる!


「おめぇら何か勘違いしてねーか?」


「ランクアップで危険な任務を任されるんじゃねーかとか」

「「えっ?」」


何か勘違いしていたのか?

何か勘違いしてゴソゴソやってるのを、ナニか勘違いされない内に席に戻った方が良さそうだ。


「違うんですか?」

「まー。ランクアップ渋る奴の理由は大体同じだからな」

「スタンピードなんかで強制参加の時に危険な任務を任されるとか?」

「違うんですか?」

「そりゃ、そーゆー時もある。あっ、今舌打ちしただろ。おい!」

「カズさん、ミキさん。何もギルドとしても死ねって命令はしませんよ。勿論任務を拒否して、まだ安全な任務にすることも出来ます」

「ただそーゆー時はギルドとしても何らかのペナルティはつけさせてもらう。魔物を狩るのが冒険者の義務だからな」

「そしてそれは他の冒険者も同じように感じる事でしょう。それは街の人にも伝播していきます。そうなったら恐らく街で生活出来なくなるでしょう。街を守ろうとせず安全な所で嵐が過ぎるのを待っていたのですから」

「冒険者ってのはある種の特権を持ってる。そしてその特権には義務が生じる」

「冒険者が街を守ってるという意識をお2人には持ってもらいたいんです」


菊池君を見る。

微妙な顔をしている。

当然だな。

結局勘違いでもなかったしな。

彼らの言い分も分かる。

特権と義務はそうだろう。

だが。

特権というものを俺達は甘受していない。

恐らく高ランク者だろう、受けているのは。

魔物の代金や依頼の報奨金が高いのがそうだというのなら、倒せばいいのだ。魔物を。

こなせばいいのだ。依頼を。

それが出来ないから他の職をやってるんだろう。


「俺も魔物倒せたらなー」とか、

「依頼報酬がうまそうだよなー」とか、


宿に居ればそんな声が聞こえる。

殺ればいいじゃない!

俺達は自分の命をベットしてるんだ、リターンが高いのは当然だろう。

それは特権ではない。


しかし今それを言っても彼らは納得しないだろう。

彼らは職員だからだ。

冒険者じゃない。

ここまでかな・・・

しかしランクアップするにしてもタダでさせる訳にはいかん!


「ううぅ、すいません。僕らが間違っていました・・・」

「せ、カズ!?」

「僕らがぁー!間違ってぇー・・・うわぁーん」

「待てっ!分かってくれりゃーいいんだよ」

「そっ、そうですよカズさん。低ランクは危険な任務には就かないですし。それに依頼は採集だけしか受けてないですし、討伐や護衛みたいな腕力を必要とするものじゃありませんから考慮されますよ」

「今Gだろっ!?上がっても大丈夫だって!」

「そうですよね!ほら、カズ!お2人もこう言ってるし」

「うん・・・分かった」

「じゃ、じゃー、このままランクアップしましょうか」

「はい。お願いします。ね、カズ?」

「うん・・・分かった」


推定Dカップは俺達のカードを持って部屋を出ていった。


「それにしてもおめぇらがマイタケを狩るとはなぁ」

「内緒にしといてくださいよ」

「わぁーってるって!」


推定Dカップがカードを持って帰ってきた。

カードにはE~Gが消され、Dランクになっていた。

推定Dカップを見ると目を逸らして明後日の方を見ている。


「ちょっと待てDカップ!」

「なっ?何ですかDカップって?」

「これはどういう事だ!?」

「どっ、どーしたっ!?」

「カズ!Dカップってどういう事よっ!」

「俺Dカップになってるんですけど!」

「「「えっ!?」」」

「あっ、間違えた。俺Dランクになってるんですけど!」

「「えぇ!?」」


「あのー、実は前まではゴブリンがメインだったんですけど、ここ数日のDランクのマイタケが他より結構GP高いんですよねー。それで・・・」


おっちゃんを見るとコイツも目を逸らす。

くそう、仕方がない。

もうなっちまったんだ。

今は貸しを持たせといた方が今後いいだろう。


「はぁー、仕方ありませんね。これからもよろしくお願いしますよ」

「あ、あぁ。勿論だ。いつでも納品館に来いよ!がはははは」

「そ、そうですよ。本館でも依頼をお待ちしていますわ。おほほほほ」





僕達は納品館から出てきた。


「納品館ってデッカイと思ったらあんな部屋もあったんだな」

「交渉とかあそこでするんでしょうね」

「なるほどねー」

「《隠蔽》Lv上がりました?」

「残念ながら」

「それで今後どうします?」

「スタンピードはそうそう起きないだろうし、まぁ大丈夫なんじゃない?」

「他のリスクは・・・」

「あるとしたら戦争か。国家間の戦争ってどうなのかね?あとギルド戦争か」

「国家間のは国軍の仕事でしょ?」

「依頼であるかもよ」

「受けなければいいし」

「指名依頼とか?」

「指名依頼?」

「あるらしいよ」

「せ、戦争になりそうになったら街を出ましょう」

「だな。ギルド戦争も同様に」

「これまで以上に日々の状態を観察しといた方がいいですね」

「だね~」


「まぁ、これからは気兼ねせずキノコ狩れますし。悪い事ばかりでもなかったんじゃないですか?」

「甘いな、菊池君」

「えっ?」

「彼らは彼らの都合だけを言ってただけだ」

「都合?」

「あぁ。街を守るだの特権だの。具体的な特権を言うでもなくこちらの心情に訴えるだけで何の利益も提示しなかった。挙句街に居られなくなるだの、脅迫まがいだ」

「ま、まぁ。でも高額報酬は特権では?」

「対価だ。単なる。欲しいなら魔物を倒せばいいだけなのだから」

「でも高額だから・・・」

「低額にしたら誰も討伐しないだろ。勇者とかがいて『世界を救うんだ!』とかで無償で倒すんならまだしも、そんな奴いねーから高額にしないと誰も受けないんだよ」

「それは、そうですけど・・・」

「例えば全ての報酬を低く設定したらどうなる?恐らく殆どの冒険者は他の街へ移るだろう。じゃぁそうなったら街の連中が魔物を狩るか?狩らないだろう、いや狩れないだろう。報酬を元に戻すしかない。つまり適正価格。特権ではない」

「でも・・・」

「恐らく最大の理由はギルドの戦力誇示だろう」

「誇示?」

「ギルド戦争でもそうだっただろうが、ギルドに高ランカーが居ればギルドの力が増す訳だ」

「ギルド戦争があったのに、ですか?」

「抑止力ってのもあるしな」


「じゃぁこれからどうするんですか?」

「出来たら街を移ろう」

「えっ?この街から?」

「キノコがいる街は他にもあるだろう」

「そ、そうか・・・な?」

「キノコの里で稼ぎつつGランクで街を渡り歩くんだよぅ」

「さ、さすらいのGランカー!」

「ランクダウンした頃に戻ってくる」

「でも再登録料払わないといけませんよ?」

「2000は今の僕等にとって高過ぎる額じゃない」

「げ、下衆い」


「キノコ系って秋だけかね?」

「今だけだと困りますね~」

「他の街のキノコも調べよう。っていうか当初の世界を旅するって目的にも合ってんじゃね?」

「あっ!ホントですね!結果として良かったのか・・・な?」

「旅の支度と装備も新調するか・・・もうしばらくここでやるかな」

「そうですね。装備もランクアップしましょう!」


「菊池君。この世界ってブラジャーないの?」

「ねーよ」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が読者の受けた印象を代弁してくれるからノンストレスで読める
[一言] 主人公がヘタレすぎる
[良い点] とても読みやすく、面白いです。最近読んだ中で一番です。
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