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HappyHunting♡  作者: 六郎
第11章 北部動乱 (マコル、マリア、マーラ、マヤ、セリーナ)
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翌日朝。

菊池君は舟の研究を、

マヌイとサーヤ君は帆の研究を、

ケセラは《薬学》の修行に行っていた。

俺は《鍛冶》の師匠、ンナッ・・・カルトさんの所に赴いた。


「お久しぶりです」

「そうでもねぇだろ。1ヶ月ほどか?」

「実はあれから研鑽を続けてようやく《鍛冶》を習得することが出来まして報告に参りました」

「何だと!?本当かよ、そりゃすげぇな」

「カルトさんの指導のお陰です」

「この短時間でよくもまぁ・・・」

「真似事は今までにもしていたので」

「そうかい、そうかい。俺ん所で仕上がったってぇ訳かな」

「仰る通りです」

「はっはっは。相変わらず口も上手いね」

「いつ冒険者を辞めても食べていけるようにと」

「はっはっは。違ぇねぇ。しかしそうなると商売敵ってぇところだな」

「いえ。まだ当分は資本金を稼ぎませんと。それに自分より上の職人が居る街で店は開きませんよ」

「はっはっは。まぁ冗談だとしても公都は競争が激しいから初めてで始めるにゃ厳しいぜ」

「でしょうねぇ」

「まぁ、ベルバキアかベオグランデか」

「ルンバキアは駄目ですか?」

「・・・あぁ、ルンバキアか。今はあの国はお勧めしねぇな」

「大臣の・・・」

「おめぇの耳にも入ってるって事は相当だな。あぁ、冒険者か。まぁそういうこった」

「ムトゥルグは普通でしたけどね」

「南側はな。悪魔騒動も有ったそうだが、まだマシらしい」

「まだ」

「公都オラキアもあまり良くは無いそうだ」

「なるほど・・・近づかない方が良さそうですね」

「あぁ。危うきに近寄らずってやつさ」




カルトさんと会ってから宿に帰り、パラシュートの試作品を試す。

実際の大きさよりも小さいミニチュア版で試すことにした。

3人でパラシュートを広げるように持って重りを括り、宿の屋上から裏庭に落とす。

まぁ・・・こんなもんだろう。


「これがパラシュート?」

「もっと高い所から落とさないとなぁ」

「つまりあぁいう感じで高い所から落ちても大丈夫って事ですか」

「そういう感じ」

「もっと高い所かぁ・・・山とか?」

「あぁ。しかしここはバルキア平原だろ。山は無いよなぁ」

「山は遠いですね」

「うーん。高くなくても風が強い所が有ればなぁ」

「風が強いとどうなるの?」

「風に乗ってパラグライ・・・ダー・・・」

「どうしたの?」

「大きいパラシュートを作ってくれ!」

「わ、分かったけど」


俺は急いで鍛冶作業に取り掛かった。




昼食後に街外で実験をする。


「これパラシュート?」

「あぁ。幅狭だが」

「バッグ背負ってるけど」

「マヌイとサーヤ君に急造で作ってもらった魔石バッグだ」

「魔石バッグ?確かに結晶魔石が露出してるわね」

「あぁ。これでパラモーターをする」

「パラモーター?パラグライダーにプロペラ背負ったやつ?」

「そうだ。プロペラは無いけどね」

「ふーん」

「とりあえずやってみる」


俺は街道付近の周囲1kmを《魔力探知》し、人が居ないのを確認して用意をする。

パラシュートを後ろの地面に寝かせ、


「離陸!」


結晶魔石に《魔力操作》で魔力を流して後方に風を作り出した。

しかし、


『あら~』


パラシュートは上に上がるもそのまま落ちて来た。

実験の順序としては、

風を与えパラシュートを開かせ上空に上げ、

俺が走ってそのまま飛び立つ、そんな感じだ。

しかし何度やっても同じようになる。

偶に上手く上がっても飛び立つことは出来ずパラシュートを開いたまま走って行くだけという事も有った。

そんな失敗ばかりで1時間程経っただろうか。

みんなも少しがっかりな様子だ。

しかしそんな空気は読まない、敢えて。

そしてパラシュートを寝かせておくのは止めてあらかじめ少し風を与えて展開させることにした。


『おぉ~』


パラシュートは展開出来た。

ここからが肝心だ。

しかしやはりただ走るだけに終わってしまう。

みんなも少しダレて来ている。

風を「作る」んじゃなく「生め」ば飛べそうではある。

少し試してみるか。

パラシュートに当てるように風を「生む」。


ヒュオオオォォォッ


『おぉ~飛んだ!』


10m程飛んでそのまま着地した。

魔力消費が多い。

恐らく風が強くなればなるほど消費も大きくなるんじゃなかろうか。

これはちょっと無理だ。

やはり「作る」方が燃費が良い。


結構な魔力消費もあったのでその日はこれで切り上げ魔石確保に勤しんだ。




翌日。


「またやるの?」

「当り前だ。失敗なんて有って当然だ」

「その失敗が死に直結するんだけど。飛ぶのって」

「先人は偉大なり!」

「はぁ~」


盛大な溜息で背中を後押しされた。


「パラシュートの形が違うわね」

「あぁ。先ず飛ばなきゃいけないんで飛行機の翼を参考にした」

「穴が開いてるけど?」

「飛ぶのには推進力と揚力が必要だ。推進力は結晶魔石で得るとして、揚力をパラシュートで得る為に飛行機の翼の形状にしたんだ」

「それで?」

「翼の形状にするには立体的にしないといけないが重くも出来ない。なので膨らますことにした」

「空気で」

「あぁ」

「穴は空気を取り入れるって訳ね」

「その通りだ。布を半分に折って閉じ、折り目に穴を開けた」

「まぁ、怪我しないようにね」

「うん、頑張るよ」


しかしやはりパラシュートの展開が上手くいかない。

しかし1時間が経過する頃、感触を得て来た。


フワッ


『おぉー!』


パラシュートが飛び上がった。

良し!ここで走りながら結晶魔石で風を増して推進力をアップ!

おぉ、浮いたぞ!


『おぉー!えぇー!?』


良いぞ!

上昇している!

更に速度を増す!

更に上昇!

おおぉっ!

き、気持ち良い!

飛んでるよ!

見える!見えるぞ!

辺りは・・・森ばっかりだな!

ホントこの世界は森ばっかりだ!

ムルキアの街だ!

ムルキアに向かう人達も見える!

・・・あれ、やばくね?

見られたんじゃないか?

不味い!

本来はパラシュートの実験だったはずだ。

よし、そろそろ降りよう。

両手の操縦紐でコントロールだ。

飛行機と同じだろ。

ブレーキが失速だ。

つまりその方へ曲がる。

しかし魔力を切ると墜落の恐れがある。切っては駄目だ。

良し、良いぞ、この調子だ。

円を描きながら彼女達の元に戻って行った。


ズザァー


「カズ兄ぃ!」

「カズヒコさん!」

「カズヒコ!」

「飛んだじゃないのっ!」

「成功だ!」


全員でキャピキャピしていた。


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