⑪-01-294
⑪-01-294
ドドドドドドドドドド
騎兵の一団がとある打ち捨てられた村に入った。
「補給物資を探せ!」
『はっ!』
兵士が家々に入る。
しばらくして兵士が上官であろう兵士に報告をする。
「何も有りません」
「うーむ。壊滅したのは報告通りなのは良いが補給出来ないのが辛いな」
「左様ですな」
上官が石の前で佇んで喋っている。
石には花が添えられていた。
「全く、旨みも何も無いわ!」
ドガッ
憂さでも晴らすかのように石を蹴りつけた。
その拍子に花が散らばってゆく。
「行くぞ!もうこんな所に用は無い!次だ!」
『はっ!』
翌日の午前中は菊池君とケセラは修行へ出かけ、マヌイとサーヤ君にある物を作るよう頼んで俺は鍛冶をして過ごした。
ジュゼッペは言っていた。
『これまで戦うのが好きだと思った事は無かったが』
『お前とだけは違った』
俺が感じていた事をあいつも感じたのか。
俺も同じだ。
戦いなんて楽しいなんて思った事なんて無い。
・・・無かった。
戦いが楽しいって言う奴の気が知れない。
馬鹿じゃねーの?
それは今も同じ思いだ。
じゃぁあの時の思いは・・・
ゾーンは以前にも体験した事が有る。
あれはスポーツの時だった。
戦いがスポーツ?馬鹿な。
恐らく極限の集中状態でゾーンに入ったんだろう。
1対1で良かった。
これが戦場や5対多なら周囲の状況によっては危険な状態だった。
ジュゼッペとは奇襲が出来なかったから正面から戦うしかなかった。
これからはもっと奇襲に拘ろう。
菊池君も言っていたな、
余計な敵を作るな、と。
その通りだ。
ジュゼッペ戦も、
それまで上手くいき過ぎて調子に乗ってた部分も無きにしも非ず。
幸い《偽装》でステータスを偽装出来る。
《覗き見》られても大丈夫だ。
それで絡んで来る奴は処分すれば良い、菊池君も仕方ないって言ってたしな。
しかし、戦いが楽しい・・・か。
違う。
あれは戦いが楽しかったんじゃない。
ゾーンが楽しかったんだ。
きっとそうだ。
戦いが楽しいなんて、ただの頭がオカシイ奴だ。
・・・俺は異常なのだろうか。
俺は異常なのかもしれない。
しかし菊池君達は異常ではないだろう。
異常ではない菊池君達を守ることで俺は異常ではなくなる。
彼女達の異常じゃない状態を普段の状態にすることで俺は異常じゃないことになる。
戦いなんて楽しくない・・・狩り以外は。
ドドドドドド
ガラガラガラ
午後は馬車で北西の村に向かっていた。
「舟を取りに行くって?」
「あぁ」
「そう言えばそんな事も言ってたねぇ」
「あぁ」
「川とかだと便利ですしね」
「あぁ」
「しかし川にも魔物が居たらどうするんだ?」
「そん時はそん時さ」
「・・・そうだな」
「マヌイが作ったタイアも良い調子だ」
「たいあ?」
「あぁ」
「あぁ、タイヤね」
「あの車輪に巻かれてる皮の事ですか?」
「あぁ。マヌイの《皮革》で作ってもらったやつだ」
「確かにクッション性が増したわね」
「ゴムの代用にね。ゴムほどじゃないが」
「でも皮だと耐久性が無いでしょ?」
「あぁ。でも僕達は頻繁に乗る訳じゃないし、魔犬やゴブリンの皮なんて安いだろう?消耗品として割り切れば良いんじゃないかな」
「まぁ、そうね」
「振動が小さくなった気がします」
「空気が入ってるから衝撃も緩和されてると思う」
「空気がねぇ」
「《皮革》と《縫製》様様、マヌイサーヤ様様だよ」
「えへへ」
「うふふ。ホントに揺れが小さくなりましたわ」
「・・・いや、すっごい揺れてるよ」
「胸を見ながら言うんじゃない!おらぁ!」
薄暮にその村に着いた。
「全く人気が無いな」
「そりゃぁね」
村人ほぼ全員が捕縛され、子供は施設に送られた村だ。
なまじ人の居た頃を知ってるだけに人気の無い村は酷く不気味だった。
「多少の罪悪感と言うか・・・後味の悪さは有るな」
「でもしょうがないよ」
「・・・だよな」
「うん」
「マヌイも悪さしちゃ駄目だぞ」
「しないよ」
「したらお尻ペンペンだからな」
「ブヒー!子供じゃないってば!」
厩舎にラドニウスを繋ぐ。
「お前もケセラの《馬術》で速くなったな」
「ブオオォォ!」
「疲れも軽減されて、走るのが気持ち良かったんじゃないか?」
「ブオォ!」
「はっはっは。そうかそうか」
「カズヒコ。今日はもう作業はしないんだろう?」
「あぁ。適当な家で過ごそう」
「そうだな」
その夜は5人が泊れる元村長の家に泊まり、
明くる朝、作業を始める。
「やっぱり舟は幅が有って収納袋に入りませんわ」
「ぶった切ろう」
「・・・縦よね?」
「当然だろう。横に切っても意味が無い」
「思ったより大きくないねぇ」
「沼に浮かべる物だからだろうね」
「ノコギリも作ったんですね」
「あぁ。舟は2つほど持って帰るか」
「舟を持って帰るという表現も凄いが、2つも要るか?」
「1つは研究用にバラそう。1つは仕組みを観察用にかな。菊池君、どうだ?」
「えぇ、そうね。2つ有った方が失敗出来るし良いと思うわ」
「よーし。じゃぁみんなで取り掛かるぞぉ」
みんなで作業をしている。
「そういえば土魔法はどうなの?」
「あの悪魔がやってた《タイタンフィンガー》や盾は出来るよ」
俺は実演して見せる。
『へー』
「でも土に潜って移動するやつ、あれは無理だった」
「そりゃぁそうよね」
「出来たら怖いよ」
「悪魔の固有魔法でしょう」
「出来れば脅威になるがな」
「やりたかったなー」
「・・・カズヒコ、あなた」
「うん?」
「地面に潜ってスカートの中とかを覗こうとか思ってない?」
「早く作業終わらせないと今日中にムルキアに帰れないぞー!」
『・・・』




